扇子の行方「また妙な物を欲しがるものだ」
扇子が欲しいと洛冰河が言い出した。
少し意外だったが、得心がいかないでもない。
では、揃いで誂えようかと沈清秋が提案すると、それも嬉しいのですが・・・と冰河は少し言い淀んでから、できれば使い古しがよいのです と言う。
「師尊が新しいものを誂える折に、今使われているものをいただければ」などと。
「それでは[[rb:襤褸 > ボロ]]ではないか、遠慮はいらぬよ」
師に出費させるのを良しとせずに辞しているのか、と沈清秋は思ったのだが。
「新しいものではなく、師尊が愛用されていたものをご下賜いただきたいのです」と冰河が更に言うので、なるほど形見のようなものかと納得はした。形見とは会えぬ者を偲ぶ物。魔界の統治に絡み遠征を余儀なくされることもあるゆえ、何か師の物を持っておきたいということだろうか・・・・と。
19538