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    chunyang_3

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    chunyang_3

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    “君”がいない世界の藍忘機。
    藍忘機の元に思追くんがいてくれて良かったのではないかという部分にどうしても夢を見てしまう。
    CQLはラストで一旦手を離してしまうのは、前世時代の魏無羨をもし連れ帰っていたとしても、それが良いことだったのかという点に悩んだことがあったりするのかなぁと思ったりしながら書いた、秋の話です。

    #CQL
    #藍忘機
    blueForgottenMachine
    #藍思追
    lamSiChou
    #藍曦臣
    lanXichen

    君待ち/藍忘機「問う音に声は返らず君何処 時は黄昏色を失い」

     優雅でありながら切実な響きをもった琴の音が谷にこだまする。「問霊」の琴の音が消えると、辺りはしんと静まり返った。藍忘機は座して答えの返ってくるのを黙って待っていたが、一向に返答の琴の音が鳴ることは無かった。
     藍忘機が張り詰めていた息を吐くと、聞こえなくなっていた川の水の流れる音と、風が森を抜けてゆく音が耳に入ってくる。琴を仕舞い立ち上がった時にはいつしか辺りは茜色に染まり、太陽が西へと沈んでゆく時辰となっていた。今日もまた、日が暮れる。
     彼の仕業らしいと噂を聞けば向かい、せめて誓った言葉を守り抜こうとしているうちに、「逢乱必出」と言われるようになったらしい。
     西の空から登り始めた月は明るく、満月が近いようだった。薄くかかった雲の向こうで明るく輝く月にも琴の音が届くことがあったなら、彼は答えてくれるのだろうか。そんな、荒唐無稽なことすら考えてしまう。

     
     強い西日に片手で庇をつくり急ぎ足で山の向こうへと消えてゆく太陽を見送りながら川辺に視線を落とすと、道端に燃えるように赤い色がまとまって咲いているのが目に入った。彼岸花の血のような赤が、茜色の西日に照らされて輝いて見える。いつまでも見ていたいと思う美しさに誘われるように、藍忘機は近付いた。花の近くにやってくるとしゃがみ、赤い花弁を包むように手を伸ばした。手折って持ち帰ってしまおうか。どうしようかと悩んでいるうちに、鮮やかな夕日の色は急激にくすみ、長く伸びた影すらも段々と見分けがつかなくなっていく。
     不夜天で藍忘機が伸ばした手を離すことがなければ、今頃も彼はこの世にいたのだろうか。手を伸ばした時にはもう、遅すぎたのだろうか。崖下に消えて行く姿を夜の闇に飲み込まれてしまいそうな赤い花弁に重ね見てしまったせいだろうか、思わず力を入れてしまい茎が折れてしまった。反射的に手を離すと、彼岸花は折れたところから倒れ、赤い花は地に倒れた。折れてしまえばもう、元に戻ることはない。戻ることは無いとしても、彼を連れて帰って隠せてしまえていればと思わずにはいられない。
     藍忘機は倒れてしまった彼岸花を軽く持ち上げ折れたところから切ると懐に仕舞った。彼岸花の赤を胸に差したまま、藍忘機は足早に川沿いの道を歩く。雲深不知処は夜間に出入りすることは禁じられている。滑り込むように雲深不知処の門を抜けて幾分も歩かないうちに、前方から兄の姿と、そしてもう一人小さな人影がやってきているのが見えた。
    「忘機、おかえり」
     出迎えた兄に、藍忘機は拱手で答えた。
    「兄上、戻りました」
     兄と言葉を交わすと、兄の後ろについて来ていた小さな藍家の子弟が顔を出した。
    「含光君、おかえりなさいませ」
     見ればその子弟は思追――藍愿だった。幼いながら藍家の子弟らしく礼節を弁えた礼で藍忘機を迎えた彼が顔を上げると、その額には藍家の直系の弟子の証である雲紋が刻まれた抹額が目に入る。少し見ない間にまた大きくなっただろうか。
     それにしても、その様子を眺めている兄が何故か普段以上ににこやかな顔をしているのが気になった。
    「何かあったのですか?」
     藍忘機が問えば、兄は横の思追に視線を落とし、促すように彼の背中に手を置いた。
    「思追、ほら」
     兄が言うと、思追は決意を固めるようにコクリと頷いて藍忘機に向き直った。
    「含光君、この思追に「問霊」の手ほどきをしていただきたく、お願いを申し上げにきました」
    「「問霊」を?」
     思わぬ申し出に、藍忘機は聞き返してしまった。思追の琴の腕は同じ年頃の子弟達の中ではなかなかのものだが、それでもまだこれから随分と修練を要する。
    「はい」
    「習得するにはかなり時間と労力を要するが」
    「努力します!」
     思追の真剣な申し出に、これはきっと首を縦に振るまで事あるごとに頼み込まれるものだろうと理解した。こんなところばかり、魏無羨に似ているような気がしてしまうのは勝手な感傷なのかもしれない。
     顔を上げようとしない思追に近づき、肩に手を乗せた。
    「教えるのは構わない」
    「ありがとうございます!」
     顔を上げた思追の顔は喜びに輝いていた。藍忘機の勝手な思いだったとしても、微かでも彼への思いを胸に刻ませてくれる思追には――せめてこの子には笑っていて欲しかった。
     嬉しそうな思追に兄も満足そうな顔をしている理由が藍忘機にはよく分からなかったが、どうやら二人とも藍忘機の答えに満足しているらしい。
     思追には明日から特別な修練の時間を取るようにすると伝え先に戻ってもらうと、既に雲深不知処の方々の建物には灯りが灯る時間となっていた。
     雲深不知処の自室への道すがら、藍曦臣と並んで歩きながら藍忘機はまだ兄の態度の不可解さに理解が及ばなかった。
    「兄上、どうして思追に「問霊」を学ばせようとするのですか」
    「私は相談を受けただけで、彼が自分で言い出したことだ。お前が雲深不知処にいないことが多いから私に言ったのだろうが、彼には私よりも忘機が教える方が良いだろう?」
     思追は藍忘機が探している相手のことを覚えていない。覚えていないなら、思い出さないままの方が良いこともあるだろう。ただ、このまま何も知らないままで良いのかと問われれば、答えに詰まる。己が正しいと思うことを為すことは難しくないが、これが正しい道なのかどうかを見極めることは難しい。
     それにしても思追はどうしてそんなことを言い出したのか。何か、昔のことを思い出したのだろうか。
    「兄上、思追は何故「問霊」を学ぶと言い出したのですか」
    「それは自分で明日聞いてみると良い。ただ、もし「問霊」を習得できたら、含光君と一緒に夜狩に行けるのではないかと言っていた」
     藍曦臣がゆっくりと足を止めると、つられるように藍忘機も足を止めた。
    「忘機も彼なら一緒に連れていってくれるかな?」
     少しばかり首を傾げて問う兄の姿に、藍忘機は目を瞬かせた。
     今まで藍忘機が一人で遊歴していることを兄に咎められたことは無かった。けれど、どうやらそれは今まで口を出して来なかっただけということらしい。
    「「問霊」ができずとも、力がつけば夜狩には自ずと行くことになります」
    「それもそうだな」
     兄が軽く微笑むと、藍忘機の胸元へと視線を向ける。
    「先ほどから気になっていたのだが、その懐の花は彼岸花か?」
    「はい」
     懐から取りだした黄昏の時に赤く咲いていた赤い花は、夜の微かな灯りの下ではその鮮やかな赤い色は色褪せたように見える。川辺で美しく咲いていた花も、手折ってしまったからもう部屋に飾ることくらいしかできない。根から切り離された花は、どんな花であれ枯れてしまえばそれきりだ。
    「兄上……私は連れ帰れば良かったのかどうか、今も分からないのです」
     兄は何も答えなかった。答えられないという方が正確だったかもしれないが、藍忘機も答えが欲しい訳ではなかった。
     藍忘機にとってあの時から世界はずっと黄昏の色をしている。夜が来てもう一度朝日が昇る時、赤い花が咲いていてくれるものなのか。
     藍忘機は兄と別れ部屋に戻ると、彼岸花を水差しに挿した。その日は慈しむように花弁に触れてから眠りについた。
     翌朝、藍忘機が目を覚ますと彼岸花の赤が目に入った。しかしその色からは黄昏色の光の中で見た鮮やかさは失われている。触れればすぐに崩れそうな、そんな危うさを覚えながらも触れたいと思わずにはいられない。そっと花弁に触れると、昨晩触れたしっかりとした思追の肩を思い出す。どう触れて良いのかも分からないまま抱き抱えた幼な子は、気が付けば今にも巣立ちそうなほどの少年へと成長していた。
     思追へ「問霊」を指導するのなら、あの琴の譜があった方が良いだろうか。朝のうちに蔵書閣へ寄って行こう。そんなことを考えながら、久しぶりに雲深不知処での一日の始まりを迎えた藍忘機は、またすぐに夜狩りへと出るつもりではあった。
     藍忘機が後ろ髪を引かれながらも部屋を出て扉を閉めると、彼岸花から一欠片、花弁がはらりと落ちていった。
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    chunyang_3

    MEMO観音廟の後、藍忘機と別れ一人で旅をしている魏無羨が蓮花塢に立ち寄って金凌と出会う話。CQLを見終わった時に全て終わった後の金凌と魏無羨が再会するのを見たいなと思っていたのですが、魏無羨から両親の話を聞く話になりました。※原作の番外編の再会とは異なります。
    話を聞かせて 目の前に広がる蓮の花の咲く景色を瞳に映し、魏無羨は大きく深呼吸をした。早朝の水辺の空気そのものを吸い込んだような清々しさに、自然と顔が綻んでしまう。朝食を売る屋台の呼び声が聞こえ、波止場の街には既に活気がある。
     この世から消えてしまってからの十六年。決して短くない時の流れの間に変わってしまったことも変わっていないこともある。蓮花塢には少しばかり前にも来たけれど、その時はこんな風に優しく吹く風を感じる余裕は無かった。慌ただしく走り抜けるばかりだった景色が、今は目の前に悠然と広がっている。
     今になって思えば、魏無羨が帰る場所というのは元々この世には無かったのかもしれない。ここ蓮花塢は幼い頃から育った場所でとても大事でかけがえのない存在であることは今も昔も変わらないけれど、魏無羨が帰る場所では無くなってしまった。それは、江澄に江家を破門される前から頭では理解していたことだったが、こうして訪れてみると改めて実感する。
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    chunyang_3

    MEMO景儀と思追の出会いの妄想です。思追が温寧と温家の弔いを済ませ雲深不知処に戻った頃に、魏無羨も雲深不知処に留まる様になったという時間軸の設定です。うさぎと一緒に人参を食べていた頃の思追くんと景儀の出会いの話を書いてみたくなって書きました。
    君と兎と しんと静まり返った蘭室を前にして、藍景儀は柄にもなくとても緊張していた。今日は景儀にとって初めての座学だ。随分前に蘭室には遊びで入って良い場所ではないと叱られてからは一度も近寄っていないので、この建物に来ること自体、ちょっと尻込みしてしまう。
     同じ年頃の藍家の子弟が中に入って行くのに続けて景儀もその静かな空間に足を踏み入れた。周囲を見回してみると、どうやら空いている席に座って良さそうだ。
     こっそり息を吐いて、周囲を見回す。近くに誰か景儀が知っている友達がいると安心できるのだけれど来ているだろうか。そう思って既に座っていた隣の席の少年へと視線を向けた景儀は、視界に入ってきた横顔に思わず息を呑んだ。まるでお手本のように姿勢良く座っていた景儀と同じ白い藍氏の校服を身に纏った少年も、隣に誰かが座ったことに気付いたらしい。軽く横へ顔を向けたことで、景儀と顔を互いに合わせることになった。その顔を見て、景儀は思わず叫ばずにはいられなかった。
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    chunyang_3

    MEMOCQL話数ワンドロワンライアンコール開催分。2周目に見る1話の魏無羨が過ごす夜の話です。2周目ということにすれば、これまでのことを思い出しているんだろうなぁということがネタバレ有りで書けるのでは!?と思い立って書いた話です。草笛で奏でる旋律は全てを失った魏無羨に残された魂に刻まれたものなのだろうなと思えてとても好きです。
    ※画像で上げたものと基本的に同じですが、表現を手直ししています
    残されたもの 魏無羨はこれでも一応途方に暮れていた。
     今の状況で途方に暮れない人はほとんどいないだろう。一度死ぬ前の魏無羨なら、もう少しは不遜な態度でもしてみせたかもしれない。とはいえ、一度魏無羨はこの世から消え、死んでいる間に十六年も時が経っていたらしい。そんな事態なのだから、魏無羨だって多少は途方に暮れても許されるのではないだろうか。
     せめて魏無羨をこの世に蘇らせた莫玄羽が詳細を書き残してくれていれば良かったのだが、どうやらそこまでは考えなしだったのか、それとも詳細を書くことを躊躇っていたのか。
     魏無羨の魂を呼び寄せ、己の魂魄を犠牲にした莫玄羽は魏無羨に負けず劣らず周囲に敵しかいない状況ということは否応なく理解した。一体何をして金家から追い出されたのか詳しくは分からないが、金家にも莫家にも居場所がなかったことだけは確かだ。そんな莫玄羽と一度話をしてみたかったなと思う。もし話が聞けたなら、怨んでいる相手くらい分かるようにしておいてくれとか、陣の描き方のちょっとした間違いなんかを説教してしまうかもしれないけれど。
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    chunyang_3

    MEMOCQL話数ワンドロワンライ5回目(41〜50話)。50話の思追と温寧です。番外編も含めて叔父さんって呼んでるの良いなぁと思っています。思い出さない方が良いと思っていた温寧が、二人で一緒に走って追いかけるんだなぁというところが改めて嬉しいなと思いました。
    焔つなぐ 少し前からもしかしたらと思うことは幾度もあった。己が一体どこの家に生まれ、父母亡き後に一体誰と一緒にいたのか。
     思追は幼き日のことを覚えていなかった。けれどそれは忘れていただけだったのだ。もう会うことは叶わないはずだった人に出会ってから、忘れ去られていた記憶は少しずつ断片的に焔が灯るように蘇っていた。真っ暗な夜空に散らばっていた小さな灯りは、輝く星が互いに繋がり星座を描くように、段々とその全容を理解することができるようになっていた。
     観音廟の外に出ると、思追は駆けつけた他の子弟達に囲まれ、無事を喜ばれながらも観音廟での事の顛末を聞かせてくれとせがまれた。温寧を追いかけて辿り着いてからのことだけでも、思追が説明することは難しい。ましてや金光瑶がどのような人物であったのかを語ることもできそうにない。十六年前に起きたことについても同様だ。それでも、この目で見たことや感じたことはしっかりと覚えておきたいと思った。だからこそ、今はまず不確かな己の過去と向き合いたかった。
    1910

    chunyang_3

    MEMOCQL話数ワンドロワンライ4回目(31〜40話)。39話の刀霊に対面する藍曦臣はどんな気持ちだったのだろうかというのが気になって書いた話です。原作読んでから見るとあの再会シーンだよなぁとも思うところ。この時になって初めて兄上は金光瑶に対する疑念の欠片を抱くのかなと思いはするんですけど、水面が初めて揺らいだ時だったのかもなぁと感じます。
    揺らぐ心 藍曦臣が弟からの知らせを受けて宿に辿り着いた時、藍忘機と莫玄羽はまだ宿に着いていなかった。今ここにいるのは知らせにあった義城で遭遇したという各家の子弟達だろう。若者達は徐々に宿の門の前に集合しつつあった。
    「沢蕪君!」
     藍曦臣に気付いた藍氏の子弟達が近付いてくる。揃って礼をした彼らを見回して、皆無事そうなことに胸を撫で下ろした。
    「忘機はどこに?」
     藍曦臣が問うと、手前に居た藍思追と藍景儀がそれぞれに口を開く。
    「含光君と莫先輩は街を見てくると言っていました」
    「集合の時間を過ぎたのに、まだ戻ってないんですよ」
     景儀が少々不満そうなので、どうやら二人は随分とゆっくり街を見ているらしい。仲良くしているのなら良いことだ。弟がそんなに仲良く連れ立って歩きたいと思う相手などいるのか……と、そこまで考えて頭を振る。これはあくまで仮定の話でしかないし、確証はない。
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    chunyang_3

    MEMOCQL話数ワンドロワンライ3回目(21~30話)。28話の夷陵で再会した忘羨と阿苑の話です。剣と刀で2本買ってもらったんだなぁなんてことを思いながら書きました。
    ※画像で上げたものと基本的に同じですが、表現を手直ししています
    夷陵での再会 子どもがずっと乱葬崗にいるのは良くないかもしれないし、阿苑なら温氏だと誰かに気付かれることもないだろうと、魏無羨は街の様子を見せるためにも阿苑を夷陵の街に連れてきていた。目を離したほんの一瞬でいなくなった阿苑に肝が冷えたのは一瞬で、阿苑はなんとあの雨の中で別れたきりの藍忘機の足元でわんわんと声を上げて泣いていた。
     久しぶりに遭遇した見知った顔が、阿苑を泣かせているなんて思いもしなかった。あんな別れ方をしたのに、再会がこんな笑える場面だなんてことも思いもしなかったけれど。お陰で声を掛けることに悩まずに済んだし、冗談を言って揶揄って、まるで何もなかったかのように話をすることができた。
     屋台の玩具屋の前で足を止め、阿苑に玩具を見せてひやかした。乱葬崗には玩具などないし見せてやるくらいしてもいいだろう。しかし、阿苑に玩具を見せて喜ぶ姿を見た藍忘機は、なぜ買ってやらないと不満気に疑問をぶつけてくる。そりゃあ、お金があったらいくらでも買ってやりたいが、今の魏無羨にはなかなかそうもいかない。
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