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    uncimorimori12

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    忍太刀
    2024/1/7インテ無配です。フォロワーの自カプを書きました。エアプ過ぎる。

    #忍太刀
    shinobuTaisen

    ジェーン・ドゥの渇望について キスをした。子供みたいに触れ合うだけの、戯れのようなキスをした。
     理由はない。ただ、目の前の唇に触れたら、一体どんな反応をするか気になっただけだ。酒を覚えたばかりの子供が、じゃれつくように頬にキスを落としてくるから。それなら唇を奪ったら、どんな反応が返ってくるか、爪先程の好奇心が湧いただけ。驚くだろうか。怒るだろうか。アルコールにハンドルを奪われた思考の隅で描いた絵空図は、しかしそのどれも当てはまらなかった。
    「……ははっ、可愛いな」
     理性のタガが外れた口から、素直でむき身の感想が零れ落ちる。
     そうだ。髭が生えて、身長も出会った頃よりうんと伸びて、顔から丸みは消えていったけど。忍田にとって、太刀川はいつまで経っても可愛いままだ。いくら強くなろうとも、周りが顔を顰めようとも、太刀川が可愛いのは純然たる事実だ。
     忍田にとってあまりに常識で、当然で、飽きるほど確認した現実を再度指差し確認し、目を閉じる。まどろみの狭間で、目を見開いた太刀川の表情が何度もリフレインした。

    ここにタイトル入れて!!!!!俺の名前も!!!!!!!!!!!!!!!

    「あの日はすまなかった」
     太刀川に会えたのはあれから四日後のことだった。
     大学にもろくに行かず、ボーダーに入り浸っている太刀川は、探さずとも本部を歩いていれば遭遇するのは容易い。そうでなくとも、忍田を見かければ向こうから声をかけてきて、犬よろしく走って近寄ってくるのだ。なので意識せずともほぼ毎日のように、忍田と太刀川は顔を合わせていたのだが、ここ数日は珍しく顔を合わせる機会が無かった。
     開口一番、本部の廊下で頭を下げて謝罪をする忍田に、太刀川はデフォルト装備の笑みを湛えたまま、首を傾げた。
    「え、いきなりどうしたの?」
    「この間の、私の家で飲んだ時……」
    「あー、あれか。いいよ、俺もすげー飲んでたし。てか律儀だね、忍田さん」
     明日の天気でも聞くような軽さで、太刀川は気まずそうに眉間にしわを寄せる忍田を笑った。
     太刀川が酒を覚えてから、初めて忍田の家に上がらせた。それまでも太刀川を家に招いたことはあったが、どれも互いにシラフで、アルコールを一切入れていない状態であった。しかし、手塩にかけて育てた弟子も成人したことだし、たまには師弟水入らずで酒でも飲むかと家に誘ったのだ。せっかく太刀川を誘ったということもあり、棚の奥にしまっていたそこそこ良い日本酒の瓶を出した。上等な辛口の日本酒を前に、太刀川は
    「俺さ、普段飲む時飲み放題の安いお酒ばっかでさ、日本酒ってあんま好きじゃなかったんだけど。でも、高いやつって美味しいんだね」
     と言って目尻を下げた。そうやって飲み慣れない日本酒をどんどん呷る太刀川に、忍田も上機嫌で酌をした。しかし、そんなことをしていれば当然と言えば当然なのだが、あっという間に太刀川は出来上がった。といっても、最初から太刀川に『自分のアルコールの上限』を教える気で誘ったので、ここまでは問題ない。太刀川がいくら顔を真っ赤にさせながら忍田に抱きつこうと、頬ずりしようと、想定の範囲内であった。けれども、予想外だったのが、忍田もつられて酔っ払ってしまったことだ。忍田自身も酒は決して強くはない。なので普段は自制しているのだが、自分の家ということもあり気が緩んでしまったのだ。そんなことは全く言い訳にならないのだが、だからというか。気がついたら、酒の席の延長で太刀川にキスなんてことをしてしまったのだ。
     太刀川にキスをするだけして、そこで忍田の意識は途切れてしまったのだが、翌朝他に誰も居ない自室と、ゴミ袋に入れられた空き缶を見つけて顔を青くした。太刀川にお酒のコントロールの仕方を教えるはずが、自分が呑まれた挙げ句、酔って襲ってしまったのだ。仮に法定に引っ張り出され訴えられても、文句を言えないレベルである。なので忍田はこの数日間気が気じゃ無かったのだが、蓋を開けてみれば襲われた本人はケロリとした反応であった。太刀川の年齢を考えれば、ファーストキスが未経験でも珍しくない年齢であるので、頬に一発や二発くらう覚悟すらあったのだが、数日ぶりに顔を合わせた太刀川はあまりに普通であった。それどころか、「そんなことより忍田さん暇? ブース入れる?」と、既に興味を失っている様子である。
    「……分かった。これから会議だから、終わったら付き合おう。それまで待てるか?」
     分かんないな。最近の若い子って。
     喉まで出かかった言葉を呑み込んで、太刀川の誘いに応じる。太刀川は「そうこなくちゃ」と言ってはにかむと、軽い足取りで去っていった。

    「慶、集中しなさい」
     五本先取の勝負で、五本ストレート勝ちすることも最近は無かったはずなのだが。近頃の太刀川はあからさまに集中力が落ちていた。ここは基地内の仮想ブースだからまだ良いが、戦場では一瞬の気の緩みが命取りになる。手合わせ後、調子が悪そうな太刀川に説教半分、心配半分で声をかければ、太刀川も重々自覚はあるのだろう、バツが悪そうに頬をかいた。
    「ごめんなさい」
    「何か理由でもあるのか? 変だぞ、最近」
     ランク戦で成績を落としている様子はない。任務だって、個人ランク一位の称号に恥じぬ活躍を見せている。なのでこれは、忍田にしか見抜けないほど些細なズレなのだが、その些細なズレは見落とせばいつか太刀川の命を奪う綻びとなる。これは腰を据えて話す必要があると、緊急脱出用の仮説ベッドに寝転がる太刀川の横に腰掛けると、太刀川は何故か傷ついたように目を細めた。
    「あーあ、忍田さん以外にはバレなかったのに」
    「他の人間の目は誤魔化せても、私の目を誤魔化すことが出来るわけ無いだろう」
    「分かってるよ。はあ……。でもさ、俺頑張ってたでしょ?」
    「何がだ?」
    「いつも通り、『忍田さんの可愛い弟子』でいられたでしょ?」
    「……それは、」
     妙に引っかかる言い方に、記憶を掘り起こす。そういえば、太刀川の調子が悪くなり始めたのはいつからだったろうか。そうだ、あの日。謝って、それなのに平然とした態度でいつも通り手合わせを頼んできて、けれどもその日はあまり調子が良くなさそうで……。
    「お前、やっぱ家に来た日のこと気にしてたのか」
     少し声を張り上げる忍田に、正解だとでも言うように太刀川は瞬きを返した。
     つまり、太刀川はあの日、酔った忍田に唇を奪われたことをずっと気にして今日まで来たのだ。己の罪の大きさに思わず頭を抱える。
    「……ごめんなさい」
    「いや、お前が謝ることではない。全て私の責任だ」
    「……でも、ちゃんと忍田さんの自慢の弟子じゃなかった」
    「……は?」
     思ってもみなかった言葉に顔をあげると、太刀川は落ち込んだ様子で、目元を腕で覆っていた。
    「どういう意味だ?」
    「……俺は、忍田さんの自慢の、唯一の弟子だから。何があっても、どんな時でも、『忍田さんの弟子』で在り続けなきゃいけないのに、ちゃんと全うできて無かった。せっかく忍田さんが可愛いって言ってくれてるのに、いつも通り振る舞えなかった」
    「……」
    「ごめん、ごめんなさい。でもちゃんと忘れるから。明日からちゃんと、いつもの『忍田さんの自慢の弟子』に戻るから。だから、見捨てないで。まだ忍田さんの可愛い弟子でいさせて……」
     最後の方は、語尾に涙声が混ざっていた。溶けて、グズグズで、忍田は犯した過ちの罪深さに、胃の縁が焼かれていく。
     弱いままでいいと言えたなら、どれだけ簡単だったろう。だけどそんな無責任なことは言えない。その言葉は多くの無辜の民を、ひいては太刀川自身の命を奪うことへと繋がる。
     ごめんなさいと言って謝る子供に、手慰めに口づけを施せたらどれだけ楽だったろう。しかし、忍田とてそこまで残酷にはなれなかった。
    「……慶は悪くない。全て私のせいにして、忘れてしまいなさい」
     今はただ、この言葉を吐くだけで精一杯だった。
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    Replies from the creator

    uncimorimori12

    PASTみずいこ
    Webオンリーで唯一ちょとだけ理性があったとこです(なんかまともの書かなくちゃと思って)
    アルコール・ドリブン「あ、いこさんや」
     開口一番放たれた言葉は、普段の聞き慣れたどこか抑揚のない落ち着いたものと違い、ひどくおぼつかない口ぶりであった。語尾の丸い呼ばれ方に、顔色には一切出ていないとはいえ水上が大変酔っていることを悟る。生駒は座敷に上がると、壁にもたれる水上の肩を叩いた。
    「そう、イコさんがお迎え来たでー。敏志くん帰りましょー」
    「なんで?」
    「ベロベロなってるから、水上」
    「帰ったらいこさんも帰るから、いや」
    「お前回収しに来たのに見捨てんって〜」
    「すみません生駒さん」
     水上の隣に座っていた荒船が申し訳なさそうに軽く頭を下げる。この居酒屋へは荒船に誘われてやって来た。夕飯を食べ終え、風呂にでも入ろうとしたところで荒船から連絡が来たのだ。LINEを開いてみれば、「夜分遅くに失礼します」という畏まった挨拶に始まり、ボーダーの同期メンツ数名と居酒屋で飲んでいたこと。そこで珍しく水上が酔っ払ってしまったこと。出来れば生駒に迎えに来て欲しいこと。そんなことが実に丁寧な文章で居酒屋の位置情報と共に送られて来た。そんなわけで生駒は片道三十分、自分の家から歩いてこの繁華街にある居酒屋へと足を運んだのである。
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    uncimorimori12

    DONEみずいこ
    書きながら敏志の理不尽さに自分でも爆笑してたんで敏志の理不尽さに耐えられる方向けです。
    犬も食わない「イコさん」
     自分を呼び止める声に振り返る。そこには案の定、いや声の主から考えても他の人間がいたら困るのだが、やっぱり街頭に照らされた水上ひとりが憮然とした顔でこちらに向かって左手を差し出していた。はて、たった今「また明日な」と生駒のアパートの目の前で挨拶を交わしたばかりだと言うのにまだ何か用があるのだろうか。生駒は自身のアパートに向かいかけていた足を止めると名前の後に続くはずの水上の言葉を待つ。すっかり冷え込んだ夜道にはどこからか食欲をそそられる香りが漂ってきて、生駒の腹がクルクルと鳴った。今晩は丁度冷蔵庫に人参や玉ねぎが余っていたのでポークシチューにする予定だ。一通り具材を切ってお鍋にぶち込み、煮えるのを待ちながらお風呂に入るという完璧な計画まで企てている。せっかくだしこのまま水上を夕飯にお誘いするのも手かもしれない。うん、ひとまず水上の話を聞いたら誘ってみようかな。そこまで考えて辛抱強く水上の言葉を待ち構えていたのだが、待てども暮らせども水上は口を開くどころか微動だにすらしない。生駒は訳が分からず水上の白い掌と顔を交互に見比べた。
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