天気屋「天気~、天気はいかがですか~、梅雨で新鮮な雨が今売出し中ですよ~!」
高らかに声を上げながら、俺は街中を練り歩く。
道行く人々は素知らぬ顔で俺を通り過ぎて行った。今日も売れない、それもそうだ、今日日天気売りなんて、珍しい仕事ではない。むしろ、職にあぶれた奴が就ける、一番やりやすい仕事と言ってもいいだろう。何せ、天からの賜りものの雨等を育て、成った実を売ればいいだけだ。
勿論、ライバルなんてわんさかいる。
俺は荷台に積まれた雨の実を一粒摘まんだ。
充分に熟れていて、ぷにぷにと柔らかく透明、口に放り込めば、瑞々しく丸い甘みが口の中に広がった。うん、美味い。最近取れたばかりの雨の実だ。今が一番美味しい時期なのに、早く食わないと、全部蒸発しちゃうよ。
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