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    kisaragi_hotaru

    ガンマトとポプ受けの文章があります。

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    POIPOI 24

    kisaragi_hotaru

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    ガンマトとハドポプが混在している世界線のお話の続きです。マトポプは師弟愛です。ひたすらしゃべってるだけです。
    ダイ大原作と獄炎のネタバレを含んでおりますので、閲覧の際には十分にご注意くださいませ。
    捏造と妄想がかなり激しいです。いわゆる、何でも許せる人向け、となっております。
    このシリーズは一旦ここで完結という形を取らせていただこうと思います。続きを待ってくれておりましたなら申し訳ないです……。

    #ガンマト
    cyprinid
    #ハドポプ
    #腐向け
    Rot

    大魔道士のカミングアウト 5 「――ハドラー様は10年前の大戦にて亡くなられたと聞き及んでいたのだが」

     本日二度目のガラスの割れる音を聞いた後、ガンガディアから至って冷静に尋ねられたポップは一瞬逡巡して、ゆっくりと頷いた。

     「ああ、死んだよ。跡形もなく消えちまった」

     さすがにこのまま放置しておくのは危ないからと、二人が割ってしまったコップの残骸を箒で一箇所に掻き集めたポップは片方の指先にメラを、もう片方の指先にヒャドを作り出し、ちょんと両方を突き合わせた。途端にスパークしたそれは眩い閃光を放ち、ガラスの残骸は一瞬で消滅した。

     「そうか……ハドラー様は君のメドローアで……」

     なんともいえない顔でガンガディアはそう言ったが、ポップは「は?」と怪訝な顔をして振り返った。

     「いや、おれのメドローアで消したわけじゃねえよ」
     「紛らわしい」

     ガンガディアの青い頭部にピキリと筋が浮かんだが、ひとつ深呼吸をすることで落ち着いた。マトリフから指南を受けたわけではないが、常にクールであろうとするその姿勢は、魔法使いとして確かな在り方だった。
     ポップは立ち上がって膝についた埃を手で払い落とすとガンガディアへと身体ごと向き直った。

     「……超魔生物って知ってっか?」
     「……いや」

     マトリフから聞いていたなら話は早かったのだが、しばし思考して、知らない、という結論に至ったガンガディアにポップはぽつりぽつりと話し出した。
     自分自身の中でも整理したいという気持ちがあったのだろう。ハドラーの最期、親衛騎団という仲間たちのこと、超魔生物となって現れた時のこと、テラン王国で闇討ちしてきた時のこと、バジル島で総力戦を仕掛けてきた時のこと、デルムリン島で初めて出会った時のこと――気付けば随分と語ってしまっていた。
     ガンガディアは気を失ったマトリフを器用に着替えさせてベッドに寝かせて、その傍らに腰掛けて、ポップの声に静かに耳を傾けていた。
     魔王として地上征服を企てていた頃のハドラーしか知り得ないガンガディアにとって、ポップの語るハドラーはまるで別人のようであった。超魔生物となってからのハドラーはまさに武人と呼ぶに相違ない。親衛騎団に対する思いも、かつての自分たち幹部に対してには決してありえなかったものだ。
     魔王ハドラーが勇者アバンに倒されるその瞬間を待たずして魔界に落ち延びたガンガディアには到底与えられるはずのないものではあるが、それでもそのような主君の下で命を賭して戦えたのならば、自分の未来は変わっていたのかもしれないと、そう思ってガンガディアは、否、と自嘲した。マトリフと出会った時点で、自分の運命は決まっていたのだ。それが結果であり、全てだったのだ。
     ガンガディアはマトリフの額に手を当て、汗で張り付いた白い髪をさらりと横に払った。

     「ハドラーは確かにあの時、死んだんだ」
     「だが、生きていた。いや、話を聞く限り、生き返ったという方が正しいのだろうな」
     「やっぱそうなるのか」

     破邪の洞窟内でハドラーを拾ってからポップは原因を追求し続けたが、明確な原因は掴めないままだ。灰になった肉体がなんらかの環境下により漂い続けていたのかもしれないが、魂はヒムに宿っているのだと思っていたポップはハドラーを発見した際には彼とヒムを交互に何度も見比べては混乱の極みに陥っていた。もちろんヒムもポップと同様にパニックになっていたのだが。唯一冷静だったラーハルトには何度も落ち着けと諭されたものだ。無理言うな、とポップとヒムの声が被ったりもした。

     「しかし解せぬことがある。ハドラー様が復活なされたというわりには、その影響をまったく感じられないのは、いったいどういうことなのだ……?」

     ハドラーの強大な邪気にあてられて地上の魔物たちは邪悪な存在に成り果ててしまうはずが、そのような兆候はまったく見受けられなかった。

     「それなんだけど、どうやら今のハドラーは……なんというか……悪じゃないっぽいんだよな。だから今のハドラーには周囲に与える影響力は無いに等しい」
     「それは……どういうことかね?」
     「破邪の洞窟の最深部が魔界に繋がっていることを確認した5年前から、魔界から凶悪な魔族や魔物が地上に出てくるのをいち早く察知して阻止するために、洞窟の入口には常に交代制で見張りを立たせるようにしたんだ。その見張りに常備させてんのが、不死鳥のかがり火っていう、邪悪な魔力に反応して変化する火の粉だ。さらには年に一度、魔界へのゲートに変化は無いか確認しに行くチームにもそれを持たせることになってる。1年前におれと、ラーハルトとヒムっていう仲間とパーティ組んで最深部まで行った。そこでハドラーを見つけた時、不死鳥のかがり火はなんの反応もしていなかったんだ」
     「……成程」
     「単に弱ってるからだと最初は思ったけど、あれから少しずつ回復していっても無反応なんだから、まあ、間違いはないと思うんだ」
     「ハドラー様は人間に転生でもなされたのか?」
     「いや、それが調べたら分類的には魔族なんだよなぁ」
     「超魔生物となった際に魔族ではなくなったのでは?」
     「そうなんだよな。半魔ってわけでもないし。本人の協力のもといろいろ調べたけど、なんかもういっそ新種でいいんじゃないかと思い始めてきたところなんだわ」
     「なげやりか」
     「おれだってそんなに暇じゃないの。ただでさえ忙しいのにハドラーに付きっきりで最近は師匠のところに来られなかったくらいなんだからな。そんで久しぶりに来てみたら、なんかタイミング悪すぎてこんなことになっちまったし」

     げんなりとしたポップにガンガディアは「それは災難だったな」と他人事のようにのたまった。

     「それでハドラー様は今何処に?」
     「それは、言えねえ。つーか、師匠から聞いてんじゃねえのか?」
     「先程マトリフの話に出ていた研究施設とやらかね? なんとなくそのようなものがあるのだろうなと私が勝手に察していただけで、マトリフから聞いていたわけではない。尤も、私が気付いていることをマトリフは知っているのだろう」
     「……止めないのか?」
     「何故?」

     問いを問いで返されて、ポップは押し黙った。

     「よもや、神への冒涜だと、詰め寄られでもすると思ったのかね? 人間はどうだか知らないが、少なくとも魔物である私からすれば長生きすることのなにが悪いのかと、そう思うがね」
     「……」
     「それこそ神に祈りを捧げ死者を蘇生させるなど昔ならばよくある話だったものだ。冒涜になどなるはずがない。大切な者が生きていてくれることの、なにが悪い」

     ガンガディアの目はマトリフを一心に見つめている。穏やかな眼差しだ。頬に触れる手は大きくて無骨なのに、どこまでも優しい――。

     「君たちのしていることを、私は否定しない」
     「……そっか」

     ホッ、とポップは胸を撫で下ろした。一度は停止してしまったこの鼓動を再び動き出させるためにかつてこの身に授かった竜の血により緩やかになった肉体の成長速度。禁呪法紛いの危険な呪文を酷使し続けたことにより縮まった寿命。相反する変化がポップの身に襲いかかった。自覚したのは今から2年前。周囲にいる者たちの中にはポップ本人よりも早くに気付いていた者もいたかもしれない。ハドラーと再会したのは、いい切っ掛けになった。潮時だと思い始めていた矢先のことだった。パプニカ王国宮廷魔導師の地位を返上して、ラーハルトにも一芝居付き合ってもらって国を離れた。それでも、絆までは断ち切ることなどできるはずもなく。ダイやレオナ、仲間たちに危機が迫ったならば、必ず駆けつける。力になるのだと。約束した。

     「アンタならそう言うだろうって師匠は分かってたんだろうな。なんだかんだおれだって結局は、コイツなら怒らねえだろうなって奴だけに事情を話してんだから」
     「それで構わないだろう。必ずしも全員に話さねばならぬ必要などない。リスクが増えるだけだ」
     「シビアだねえ」
     「正論と言い給え。君たちが互いに納得しているのならば、それで良いのだ」
     「……師匠は……おれのために禁呪法を用いて自分自身の肉体を逆行させた。失敗したら即死するって、覚悟の上で……っ、今もこうして師匠がまだ生きててくれることが、すげえ嬉しい。同時に、すげえ申し訳なく思った」
     「……マトリフは君に謝ってほしいとは思ってはいないよ」
     「分かってる……分かってるよ……」
     「――じゃあ……そんな情けねえ面してんじゃねえよ」

     バカ弟子が――。と、か細い声がその場の空気を微かに震わせた。
     ポップはバッといきおいよく顔を上げて、声の主、ベッドで横たわっているマトリフへと視線を向けた。

     「師匠……」
     「オレが勝手にやったことだ。後悔もしてねえ」

     ポップの身体的な変化に真っ先に気付いていたのは、マトリフだった。パプニカ王国で働く弟子を、過去の自分と重ねて常々心配していた。どうやら仲間たちが何人か水面下で動いていてくれたおかげで実害無く勤務し続けていられたようだ。それをポップ本人は知る由もないのだが、マトリフは正しく状況を把握していたのだった。
     人間の生の輪から外れていく愛弟子に、マトリフがこれからしてやれることなど、死期を目前にした老人には皆無といってもよかった。しかし、マトリフは考えた。なんとかしてやりたいと。それがエゴだとしても構わなかった。

     『――呪文でもなんでも使って生きろよ』

     かつてギュータを去るその日、マトリフ自身が師バルゴートへと放った台詞が脳裏に蘇った。
     瞬間、マトリフの覚悟は決まったのだ。
     後にマトリフは独りごちることになった。特大のブーメランになっちまったな、と。

     ポップの調合した薬が効いてきたのだろう、幾分と体調の良くなったマトリフだが、大ダメージを受けたメンタルの方はあまり回復していないようだ。
     悪夢を見ていた気がする、とマトリフは語ったが、無情かな、それは紛うことなく現実であった。
     マトリフは目元を掌で覆って溜息を吐いた。

     「……ハドラーか……よりにもよって」

     再度、深く長い長い溜息を吐き出す。
     先程ガンガディアにも説明したようにポップはマトリフにも事の経緯を話して聞かせた。むしろポップのほうが若干青褪めている様子だ。
     マトリフにとってハドラーとは30年近く前の因縁が強く残っている。最後に対峙したのは10年前にテラン王国で弟子を闇討ちしてきた時だ。オーザムに投下された黒の核晶を氷系呪文で氷漬けにした後、再会したアバンからハドラーの最期を聞かされた。気持ちとしては、複雑であった。アバンは帰ってきた。愛弟子を守ってくれた。今はその愛弟子に想いを寄せているらしい。さらにはその愛弟子もまた満更ではなさそうなのである。実に、複雑であった。
     人の恋路を邪魔するつもりなどないのだが、さすがに物申したくなるというのが本心であり、これでもし万が一にでもハドラーがポップに対して無体を働いていたならばベギラゴンでは生ぬるい、メドローア必至案件である。

     「まあ、オレがハドラーと直接対峙したことなんざ二度か三度かそんくらいだけどよ」
     「そうなんだ?」
     「ああ。アバンと組んでた頃にゃあいっつもコイツがオレを追いかけてきやがるから、その相手ばかりする羽目になってたぜ」

     傍らの巨体を見遣ってマトリフは、へっ、と笑った。

     「君をノーマークになどできるはずがないだろう。かと言って私以外に君の相手が務まるとも思えない」
     「ガンガディアのおっさんって素直なのかそうじゃねえのか分かんねえな」

     熱烈にマトリフに迫ったかと思えば淡々と冷めたことを言い放つ。ガンガディアの言動の温度差にポップは眉を顰めて首を傾げた。

     「コイツの口説き文句は人間の恋愛小説読み漁って身につけた付け刃みたいなもんさ。恋愛初心者なんだよ。ガバガバなんだよ」

     酷い言われようにガンガディアは口を開きかけたが、

     「でもそんなんでも言われた師匠は顔赤くして動揺してたじゃん。実は嬉しかったんだろ」

     ポップの会心の一撃を受けてベッドに沈み込んだマトリフを見て、きゅっと唇を引き結んだ。にやけそうになってしまっていた。

     「あーくそ……オレのこたあもういいんだよ。問題はそっちだろうがよ」
     「うぐっ……」
     「とりあえず、ハドラーが生き返ったことは公に知られちゃいけねえ。これは大前提だ。今はもう巨悪じゃねえのなら、尚更だ」
     「ハドラーはもう地上を征服するつもりも、人間と争うつもりもないって……」
     「そうでなきゃ困る」
     「ただ……おれと一緒にいられたら……それだけで良いって」
     「……」

     ハドラーと愛弟子の間にいったい何があったのか、この一年間について問い詰めたい衝動をグッと堪えてマトリフは目を瞑った。

     「……ハドラーが他言する心配もねえなら隠れ家としてもあの研究施設はうってつけだ。ほとぼりが冷めるまで軟禁しておくしかねえ」
     「軟禁て」
     「保護とでも言やあいいか?」
     「状況としてはどちらでも大差無いだろうな」

     渋顔を作るポップに鼻で笑ったマトリフ。ガンガディアは眼鏡を押し上げた。

     「今のハドラー様の寿命がどうなっているのかは分からないが、魔族であるのならば130年ほどは人前に姿を現さないほうが良いだろう」

     ガンガディアの言わんとしているところを察して師弟は沈黙した。

     「……場合によっては、君たち二人も、そうせざるを得なくなるだろう」
     「ああ、分かってるよ」
     「今更だな。もとよりオレは隠居の身だしな」
     「マトリフ……この際だからまた言わせてもらうが、私と共に暮らさないか?」

     ガンガディアの台詞にマトリフは盛大に苦い顔をした。どくイモムシを噛みしめたかのようだ。
     ポップはきょとんとしてふたりを交互に見遣った。

     「またその話か。何度も断ってんだろ」
     「君が頷いてくれるまで何度でも言うさ」

     ポップは察した。つまり、これは、

     「プロポーズ!?」

     相変わらず自分の関わらない色恋沙汰には鋭いポップである。

     「やめろ!! 言うな!! むず痒くなる!!」

     マトリフはベッドの上で背中を掻きながらのた打ち回った。否定はしないようだ。その顔は耳まで真っ赤に染まっていた。

     「いいじゃん、師匠。ガンガディアのおっさんが師匠の傍にいてくれんなら、おれだって安心できるし。恋人同士なんだから同棲したってなんの問題もねえだろ。あ、プロポーズしたんだから、そうか、結婚……」
     「お前の頭の中はお花畑かっ!!」

     飛躍しすぎる弟子の妄想に全力でブレーキをかけるマトリフ。がばりとベッドから飛び起きると仁王立ちになって弟子に人差し指を突きつける。

     「だいたい同棲してんのはお前の方だろうが!!」
     「おっ、おっ、おれのは同居だもんね!!」
     「狼狽えやがって。なーにが恋愛相談だよ、もう結果の分かりきってることに答える義理はねーーよ!! さっさと戻ってオレも好きだのなんだの返事してこいや!!」
     「〜〜ッ!?」

     クリティカルヒット。図星である。
     プルプルと全身を小刻みに震わせて涙目になったポップはその場でガックリと膝をついて項垂れた。完敗である。
     ポップの双眸からぽろぽろと雫が零れ落ちた。
     ハドラーの言葉を疑ったなんて嘘だ。気持ちを信じられないなんて嘘だ。自分の気持ちが分からないなんて嘘だ。嘘だということに自分で気付かない振りをして、本当の感情に蓋をして逃げてきた。
     ポップは顔をくしゃりと歪めた。自己嫌悪だ。臆病なところは変われずにいる。戦いとなればそんなことはないのに。愛を囁いてくれたハドラーのその大きな背に、自らの両腕を回すことができなかった。

     「……きっと呆れちまってるよ。戻ったって、もうどっか行っちまってるかもしれねぇ……」
     「おめえなぁ」
     「ハドラー様が生き返って、君はどう思ったね?」

     それまで師弟のやりとりを静観していたガンガディアがふと口を挟んだ。そういえば原因はやっぱりまたコイツだった、とマトリフは睨みつけたが、ガンガディアにはもちろんノーダメージである。

     「どうって……」

     ポップはその時のことを思い出す。正直、驚いた。とにかく物凄く驚いた。目の前で死んだと思ってた者が実は死んでなかったり生き返ってたりという事態には何度も遭遇してきた。その度に驚いていたものだ。同時に、確かに感じたものは、

     「嬉しかった……」

     それから、

     「もう失いたくない……」

     瞬間、すとん、とポップの胸の中になにかが落ちる音がした。

     「ハドラー様が本当に行方知れずになってしまったら大変だ。今すぐ戻ったほうがいいのではないかね?」

     フッ、と小さく笑みを浮かべたガンガディアは肩を竦めて言った。マトリフはベッドに胡座をかいて座り込むと腕を組んだ。

     「元魔王が復活したなんて世間に知られたらやべえぞ。お前の責任重大だぜ、同居人さんよ」

     ニヤリと笑うマトリフ。
     同居人、というフレーズをわざと強調されて言われたポップはバツの悪い顔をした。完全に先程の意趣返しである。
     敵わないな、とポップは思う。どんなに魔法力や知力で上回ろうとも、やはりこの師匠には到底敵わないのだと。それが悔しくもあり、嬉しくもあった。
     ポップは涙を乱暴に拭い去って、すくっと立ち上がった。

     「ありがとな、師匠。ガンガディアのおっさんも」

     踵を返して洞窟から走り去っていくポップの背を見送って、ほんの少し間、そうしてルーラの魔力を感じたことで、ようやくふたりは肩の力を抜いた。

     「良かったのかね?」
     「アバンが水に流したことを、オレがいつまでも根に持ってるわけにはいかねえさ」

     ハドラーを憎んでいたわけではない。それでも遣る瀬無い思いをずっと引き摺っているような感覚はあった。それを断ち切る時は、今なのだろう。

     「そう言うお前はどうなんだ?今更ハドラーにどの面下げて会うつもりだ?」
     「……お叱りならば甘んじて受けよう。しかし、殺されるのは遠慮したい」
     「へっ、その心配はいらねえだろうよ」
     「君の弟子の話を聞く限り、それはそうだろうが。……万が一、私が死んだらどうするね?」
     「別に、どうもしねえよ」
     「そうか。それを聞いて安心した」
     「お前もオレが死んだからって早まるなよ」
     「それは出来ない相談だな。君がいない世に未練など無いのでね」
     「おいおい、冗談じゃねえ。後追いなんて止してくれ」
     「フッ……、ならば弟子のためだけではなく、私のためにも長生きしてくれ給えよ、大魔道士マトリフ」
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    kisaragi_hotaru

    DONEガンマト前提で破邪の洞窟内でわちゃわちゃしてるポプとラーとヒムちゃんのお話です。ネタバレ捏造妄想満載なのでご容赦くださいm(_ _)m
     ズドォン、と相当な重量音を轟かせて巨大なモンスターが地に沈んだ。
     完全に動かなくなったモンスターの側でたった今決め手の一撃を食らわせた人型の金属生命体が銀色の拳を振り翳して声を上げた。
     「よっしゃあ!!」
     「ナイスだぜヒム!!」
     少し離れたところからポップが嬉々として声をかければヒムが振り返って鼻を指先で擦りながら「へへっ」と笑う。
     「おめえのサポートのおかげだぜ。ありがとよポップ」
     「確かに。あのままではオレもコイツもこのモンスターに手傷を負わされていたところだった」
     ヒムの側で魔槍を携えて軽く息を吐き出しながらそう言ったのはラーハルトだ。その目線は屍と化したモンスターを見下ろしている。
     ここは破邪の洞窟。その最下層近くまでポップたちは来ていた。大魔王との決戦からすでに20年の年月が経っていた。行方知れずになっていた小さな勇者が魔界から地上に帰還してからしばらくは慌ただしい日々を過ごしていたが、今は至って平穏な日常が繰り返される世界となっている。
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