「ふわふわするなぁ」
「陛下……。ですから私の飲むペースに合わせる必要はないと申しましたのに」
「ん〜?ふふふ……」
昔の、島で暮らしていた時のような喋り方で、頭をこちらの肩に預けながら腕を絡ませころころと笑うアレインを横目に、倒して溢されでもしたら敵わんと、ジョセフは彼が手に持っているグラスをそっと取り上げて机に置いた。
アレインが成人を迎えて以降、仕事が早めに片付いた夜はこうして二人で同じ長椅子に座り、他愛のない話でもしながら酒を嗜むのが習慣となっていた。しかし解放軍の最前線で敵をなぎ倒し勝利に導いた覇王も酒には滅法弱いらしく、弱めの物でも二、三杯で顔が茹ってしまう。そのため普段はちびちびと口につけるのだが、最近は互いに忙しく約ひと月振りの一献であったからか、ジョセフに合わせてやたらと景気よく飲んでいた。一応ジョセフもアレインに合わせ、普段よりもペースをかなり緩めて飲んでいたのだが、それでも彼にとっては相当のものだったらしい。火照った頬に何気なく触れてみれば、ぴくりと肩が跳ねた。
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