未定思わず、力一杯手で耳を塞いだ。圧迫された耳からはごうごうと風が吹いているかのような音が響いている。目を閉じる間際、高槻と佐々倉が何かを言っているのが見えたけれど、その声も風の音に邪魔されて今の自分には聞こえない。
もはや掴むようにして押さえている手に触れる耳が心底疎ましい。この耳は自分を育ててくれた家族でさえ壊した呪いの産物だ。尚哉から多くのものを奪ったこの耳は、たった今やっと得られた居場所ですらも壊そうとしている。
(聞きたくて聞いてるんじゃ無い!)
いつだって、この耳が聞き分けた嘘は誰かを傷つけてしまう。
(こんな耳聞こえなければ良いのに…!!)
急に強い力で腕を掴まれて、ハッと目を開ける。
もう何も聞きたくなくて、必死で耳を押さえていたのに、高槻がひどく焦った表情で腕を外してくる。抵抗しようにも、鍛えている高槻と非力な自分の腕力ではどうしようもできない。
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