神がいるなら「だめだな、こりゃ」
風信の声に、南風はごくりと小さく喉を上下させた。
目的地の上空まで来て、すでに数十分がたっている。本来ならもう着陸しているはずだった。だが、二人の視線の先では、着陸のための前輪の異常を示す赤いランプが点滅している。風信が何度も操作をやり直してみたが同じだった。おそらく表示の異常ではない。
車輪に異常があれば、着陸の衝撃で破壊され胴体着陸になる可能性も低くはない。南風は胸が冷たくなるのを感じた。
「だが、異常は前だけだ。後ろの二つは異常ないからこのまま着陸する」
まあ何とかなるだろう、と言う風信の声はカラリと楽観的で、だが南風には、それが自分に不安を与えないためのものだとわかっていた。おそらくその頭の中では、あらゆる情報を正確に分析して、素早く計算をしているはずだ。南風も、それを正しくなぞっていることを祈りながら自分も頭を回転させる。
1973