――スマートフォンのアラーム音が鳴る。
軽く唸りながら暁人がスマホに手を伸ばし、画面も見ずにアラーム解除をタップした。
再び眠りにつこうとすると突然金縛りにあったように体が動かなくなり、目がバチッと開かれ閉じることが出来ない。ずしりと体の上に何かの重さを感じ、恐る恐るソレを確認…することはなく
「KKぇ……金縛りで起こすのやめてくれる…?」
寝起きの少し掠れた声で暁人が困った顔をした。
『こうでもしないと起きないだろ、オマエ』
「大丈夫だよ…二度寝したって間に合うようにアラームセットしてるんだから……」
すっかり眠気も飛んでしまい、仕方なく暁人はベッドから体を起こし部屋のカーテンを開けた。今日は快晴のようだ。
いつもより早く身支度や朝御飯を用意し、ゆっくりとした朝の時間を過ごす。
『おい暁人、今日は傘持っていけよ』
天気予報を見ていると当然KKが忠告するように言った。
「え?だって、天気予報も一日晴れだし、降水確率だって低いよ?」
『いいから、ちゃんと持っていけ』
折り畳み傘だって荷物になるのに…と渋々暁人は通勤用のカバンに折り畳み傘を突っ込んだ。
*
普段、残業はほとんど無い会社だが今日ばかりはトラブル続きに見舞われ、ようやく帰宅する頃にはもう夜九時を過ぎていた。
自宅の最寄駅まで電車に乗り、今日は駅前の弁当屋で夕飯を買おうと駅から出ようとしたその時。
ついさっきまで雲ひとつない夜空だったというのに急に土砂降りになっていた。ゲリラ豪雨だ。傘を持っていない人は仕方なく雨宿りをしたり、待てない人は雨の中ずぶ濡れになりながら走っていったりと突然の雨に困り果てる人たちが大半であった。
『な?持ってきて良かっただろ』
相棒が得意げに笑いながら言うと、はいはいと軽く返しながら暁人が傘をさす。
今日はビールとタバコも供えてあげようと、嬉しそうな笑みを浮かべて弁当屋に向かう暁人なのであった。