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    majikolove

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    majikolove

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    前半終わったのでちょいあげ。
    後半終わったら支部になげます。あんまり長くならないかもだけど楽しい。
    読み直ししてません!勢いです!

    #尾月
    tailMoon
    #キス
    kiss

    【尾月】二十分間キスしないと出られない部屋 目覚めた時、俺は見知らぬ高い天井を眺めていた。
     しばらく無言で見上げながら夢が覚めるのを待っていたが、漸く夢ではない事に気づき、ゆっくりと体を上げる。

     何だここは。
     辺り一面は直方体の真っ白な壁。自らが収まるのは部屋の真ん中に置かれた白いベッド。かけられた毛布やシーツだけでなく、床や天井、壁に至るまでが真っ白だった。
     奥に見えるのは、透明のガラスで囲われたシャワールーム。まさか、ラブホテルか? 身に覚えがない、どういう事だと、慌てながら部屋を目を泳がせると、唯一壁の上部に掲げられている黒パネルに書かれたピンク色の文字が光っていた。

    『二十分間キスしないと出られない部屋』

    「なんだこれは……」
    「おはようございます」
    「うわっ!」
     もぞり、と隣でシーツに包まっていた白い塊が動く。男だ。ただの男じゃない、尾形だった。
    「なんで……お前が?!」
     自分でも驚くほど大きな声で叫んでいた。
     尾形百之助。同じ団地に住む二歳年下の幼馴染だ。小中高とずっと同じ学校の後輩のくせに、いつの間にか背はするする伸びてその差なんと十六センチ、顔面偏差値は最早追いつける気がしない程に色良く育ってしまった、無口なタイプのモテ男である。
     俺と同じく寝起きのようで、定まらない顔をしたままぼんやりとパネルの方を眺めている。そのしまらない横顔すら色っぽくてなんだか腹が立つほどだった。
     その顔から下にある上半身は俺と同様裸のようで、余計に今の状況を不安に思ってしまう。ここは俺の部屋じゃない。ならばもしかすると。
    「尾形……昨日、お前んち泊まったか?」
    「はあ? ここ、俺んちに見えるんですか」
    「あ。いや、でも最近お前んち行ってないから、壁とか内装とか知らなくて」
    「ああ……そうですね」
     尾形とは幼馴染だから昔はよく互いの家を泊まり合っていたが、中学も後半になるとぱったり止み、やがていろんな噂を聞くようになった。来る者拒まずの尾形くん。いつも違う女子と付き合っている。いや、実際は複数の女の子と関係を持っていると聞くのでセフレというやつが正しいのかもしれない。割り切りが多いからか、女性関係で彼が言い争っているのはあまり見た事がない。尾形くんは本を沢山持っている、ベッドがいつも清潔だ、手がとても器用だなんて聞きたくもないような噂話ばかりが聞こえていた。意外と立ち回りが上手いんだな、なんて感想を思っていた。
     その彼と、見知らぬベッドで二人きりである。
    「俺んちじゃありません。引っ越ししてませんから」
    「そうか。お前んちじゃないなら、なんなんだ」
    「あっち、シャワーか。……ふうん」
     尾形はさっきの透明のバスルームを眺めている。こいつもきっと同じことを考えている。昨晩、俺たちは何をした。この状況に心臓が破裂するほどに戸惑っているのは、何も彼の裸を久々に見たからでははない。
     つい二日前、横にいるこの彼に、告白をされたばかりだからだ。

     放課後、たまたま帰り際に会った尾形に、そういや大学受かったんだと報告をした。疎遠になったとは言え突然いなくなるのも薄情だろうと思い、来年から東京だ、なんて笑顔で言ってやる。続いてじゃあなと言って去ろうとした矢先に腕を引かれて、俺は前のめりになって転びそうになった。
     尾形は一緒にいた同級生達を押しのけると、俺を連れながら大股でずんずん校舎の裏まで引っ張った。燃えるような夕陽が二人を射す中、混乱する俺を木の陰に隠すと、荒い息を整えながら鋭く睨んできた。突然の事に俺は何だよ、と声を荒げるしか無かった。尾形の勢いが、顔つきが、自分の知っている彼のそれとあまりにも違っていて怖かったからだ。
     すると消え去りそうな声で「好きです」と告げてきた。
    「好きです。前から、好きだった。……もう待ってられるかよ、クソが」

     激怒するように吐き捨てられた科白と眼光だった。
     だから告白をされたのだと、理解するのに一日かかった。強い感情をぶつけられてショックが強すぎて、次の日に何があったかが全く思い出せない。そもそもあの後、学校でこいつと会ったっけ。さっき二日前だと思ったけどもしかして勘違いか、もしかして昨日だったか?
     頭を抱えながらうんうん唸る俺を横に、尾形は冷静な顔でパネルを見ていた。
    「二十分」
    「は?」
    「あれです。二十分、キスが」
    「……尾形。教えてくれ、何か起こってる」
    「俺に聞かれましても」
    「いや、お前なんか知ってるだろ、落ち着いてるじゃないか」
    「落ち着いてるように見えるんですか。そりゃ良かった」
     尾形は余裕たっぷりに微笑むと、皮肉混じりの溜息を吐いた。そら見たことか。落ち着き払ってるじゃないかと睨んでみると、手を掴まれる。そのまま自分の毛布の上に押し付けるから、何かと思えば、ぎょっとするほどに硬いものに触れてしまった。
    「っ、な、んだこれ」
    「あんたと裸でベッドの中にいるんだぜ。更には目の前のあの文字だ。生理現象だ、仕方ねえだろ」
    「っ、待て! 違う、待て! ちょっと、まず、ここはどこなんだって」
    「そんなの後から考えましょう」
    「おい! お前本当に尾形か?!」
    「俺です。あんたに勝手に何年も片思いしてた、情けなくて気持ち悪い幼馴染の俺です」
    「気持ち悪くない、だろ! そういうのやめろっ、当てつけがましいぞ」
    「……俺が手握ったら逃げたじゃねえか」
     急に声のトーンを落としてシーツを睨む姿。その拗ねて嫌味ぶつけて勝手に自爆する感じ、間違いなく尾形だ。
    「……あー。そんな事より、今の状況を把握する方が先だ。お前ここに入った時の事、覚えてるか?」
    「はぁ。そんなのどうだって良いだろ……」
    「良いわけあるか!」
    「窓もねえし、ドアはノブもねえし。ラブホなんじゃないですか。知らんが」
    「知らんって……」
    「それより目の前のパネルの方が重要だ。キスしないと出られんらしいです」
    「お、まえはなあ! もしかしたらこんな状況、何回もあったかもしれないけどな、俺は初めてなんだぞ! もっと真剣に……」
    「真剣ですよ、ほら」
     手が再び強く握られて、視線が思わずそちらを向く。直ぐに顔を持ち上げると目の前に尾形の顔が広がっていて、一瞬、呆気にとられた様に口を開いた。
     その口の縁を、そっと撫でられる。
     あまりにも近い。指先が温かい。俺はびくっと露出した肩を震え上がらせた。
    「だって、キスできるんですよ、あんたと」
     聞いたことのないような甘い声をかけられて、一気に体が沸騰するように熱くなる。ヤバい。小さい頃は頬を寄せることもあったが、高校になってからこんな距離で互いを見る事は一度も無い。不自然なほどに近い距離。彼は今、俺の顔を堂々と、不躾な程に熱っぽく見つめて囁いてきた。言葉を無くしてしまう。
     こいつ、本気で俺を落としにかかってる。
     うっとりとうるむ瞳。とんでもなく顔が良い。
     目の前の尾形の迫力に、状況に困惑していた気持ちがどんどん麻痺してきた。
    「……確かに、ラブホなんて珍しいもんじゃねえし目が覚めたらなんて何度もありましたが。月島さんとこんなとこいるなんて、信じらんねえ。夢なら覚める前に、させてください、キス。たくさん」
     舌舐めずりをしながら、すりすりと薄い唇を親指の腹で撫でられて、俺はバクバクと鳴る心臓を抑えようと必死になる。顔は真っ赤に染まり上がり、目はうろうろと泳ぎ始める。尾形は嬉しそうに目を細めると、両手で頬を包み込んできた。

    「……やべえな。なんだそれは。すげえ可愛いんですが。ハァ。めちゃくちゃにしてえ」
    「やっ! やめ、ろ……こんなの、違うだろっ」
    「何が違うんです? 俺が嫌だ?」
    「そうじゃ、その、良くわからん紙に言われて、キスしろって……」
    「ははぁ、どうせホテルの企画とかでしょう、もしかしたらどこかに隠しカメラでもあるのかもしれんな」
    「なっ、嫌だ! やめよう、キスなんてやめよう!」
    「はあ、はは、どうしたんですか。たかがキスでしょ、良いじゃないですか、乗ってくださいよ」
    「たかがって」
    「確かにあんたとのキスは特別ですけど、初めてじゃあるまいし……」
    「……………ない」
    「は……?」
    「した……事ない、キス」
    「え」

     キスなんて、した事ない。
     言わせないでくれ。経験者無数の後輩尾形の前で、こんなこと言わなくちゃいけないなんて、恥ずかしさで爆発して、燃えつきて消滅したくなった。
    「マジか」
     その声に目を伏せていると、尾形がそっと身を寄せて顎を摘んできた。目を開く前に唇が重なった。
     ぶわっと尾形の香りが襲いかかってきた。
    「ん……っ」
     キスだ、尾形に、キスされてる。
     先ほどの勢いから噛みつかれるのかと思ったのに、そっと包み込むような優しいキスだった事に、体がビリっと痺れた。熱くしっとりした唇は想像以上に柔らかくて、俺の呼吸を飲み下すようにして重ねてきた。
     下唇をちゅうっと吸い取るように、唇が解かれる。恐る恐る目を開くと尾形の黒い目が真っ直ぐ俺を見ていた。鼻を擦り合わせながら囁いてくる。

    「今のが、月島さんのファーストキス?」
    「……ん」
    「……そう」

     尾形は目をきゅっと弓形にして、溶けるような眼差しで俺を覗き込んだ。その視線に全身がぞくぞくと毛羽立ち感じてしまう。
     やられてしまう。否が応でも分かってしまった。こいつは本気だ。本気で俺の事が好きなんだ。俺の事を本当にずっと……。
     そう思っているうちに、再び尾形の唇が近づいてきた。耳元や首筋に何度もキスを落とされ、顎に、下唇に、ちゅっ、ちゅっと小さな口付けを繰り返されて、熱っぽく見つめられると力がどんどん抜けていき、ついにはベッドに倒された。
     白い天井を背負う尾形が熱っぽく覗いてくる。

    「ハァ、……その顔。最高」
    「んっ、お、おがた、」
    「月島さん、俺にこうされて、気持ち良いですか」
    「う、き、気持ち、良い……」
    「キスは好きな人としないと気持ち良く無いんですよ。つまり、月島さんは俺が好きなんですね」
    「俺は……そうなのか……」
    「そうです、オナニーじゃできないだろ、こんな事」
    「できない、ん、んっ、」
    「気持ち良いですね。……ああ、あんたの口の中はもっと良さそうだ」
     幼馴染の視線に魅入られ、唇を見つめ返しているとそこがぱくりと開いた。

    「唇、二十分、たっぷりいただきますよ。あんたを舌だけで感じさせます」
     そうして骨が抜けるほどの良い声色で囁かれると、唇が食べられるようにして覆われていった。
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