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    きもいさん

    @kimoisan

    なんかできたら置いていきます。

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    きもいさん

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    支部より再録。2017年4月。元気にモリモリ書いてたんやな、この頃…。
    お花見行って妄想して書いたら感謝祭(わたし仕事で行けなかった)で嵐ちゃんがみかちゃんとお花見とかいうネタがあったらしく、公式やん…!って壁に頭打ちつけたってキャプに書いてました。
    元気やったんやな、自分…。

    #なるみか

    桜と宝石、キラキラしたもの/なるみか 人が多い場所は苦手だって事はよく知っているけれど、それでも一緒にどこかに出かけたくなる。しかも、できれば人が多い人気スポットとかに。
     一緒にお出かけして、この可愛い子は。アタシと仲良しなんですって、皆に見せびらかしたいのかも知れない。

    「お花見? ええよ~」

     それは春うららかなある日。
     午後の授業が突然の査察だかで急になくなったのを良いことに、どうせ断られるだろうと思いながらもためしに提案してみたら、存外軽く了承されてこっちが心配になる。
    「……みかちゃん、ほんとに良いの……? お花見って事は、花見客がいっぱいなのよ? 昼間っからお酒飲んで良い気分の人達もいたりするのよ?」
    「そらお花見やねんから花見客なんちゃう? 買い物客とかやないやん。ん~、人は多いやろけど……今日曇ってるからそない多くないかもやし、なるちゃんが行きたいんやったらええよ」
     おまけにコテンと首を横に倒しながら微笑んでそんな事を言ってくれるので、つい口許を手で押さえて感動にうち震えてしまう。
     その最後の一言だけでどれだけ嬉しいかなんて、この子はきっと分かっていないのだろうけど。
     見上げてくる異なる色の瞳は無邪気な子どもみたいで、何となく、優しく声をかけて誘拐しようとする悪い大人のような気分になってきた。
    「どの辺まで行くん?」
    「夢乃崎川沿いにずっと桜があって、そこならそんなに遠くないから行きやすいのかしらって」
    「花見? 良いんじゃないか、あの辺に出店もいっぱい出てるらしいし」
    「出店っっ!?」
     近くの席でユニット練に向かう用意をしていた真緒ちゃんが教えてくれるのを聞いて、みかちゃんが急に目を輝かせた。
    「なるちゃん……! なるちゃん、ほなお昼そこで食べよ!?」
    「でもみかりん大丈夫~? きっと人多いよ~?」
    「我慢する! おれ屋台めっちゃ好きやねん!」
     机に突っ伏して寝ていた凛月ちゃんが少しだけ顔を上げてみかちゃんに忠告してくれる。
     でもみかちゃんはそわそわしながら急いで机の上にあったノートやシャーペン、あと何かの動物……? 怪人かしら……? という異様な形をした消しゴム等を片付け始め、リュックに詰め込む。
     急いで詰め込みすぎてペンケースのチャックを閉めてないように見えたけど、案の定リュックの中からペンケースの中身が飛び出た音がした。みかちゃん以外の人間は気づいたみたいで吹き出しそうになってるのに、本人は気にせずに勢いよく後ろの席の晃牙ちゃんの顔にぶつけながらリュックを背負い立ち上がる。

    「なるちゃん! はよ行こ!」

     すでに準備万端で笑顔のみかちゃんが腕を引っ張るので、顔を押さえてうずくまる晃牙ちゃんが怒鳴り出す前に、早々に立ち上がった。
     本当に子どもみたいにはしゃぐみかちゃんに、お花見がメインなんですけど? と苦笑しながら二人で歩き始めた。




    「わ~……。めっちゃ綺麗やなぁ~っ」
     桜の木を見上げながら口をぽかんと開けているみかちゃんは、嬉しそうに呟いた。
     川沿いの桜は少し散りかけで、すでに葉桜が混じっている木も多かった。
     それでも川の土手に沿ってずっと桜が続く光景は圧巻で、桜の種類によってはまだ蕾のものも、今がちょうど満開のものもある。
     平日の昼間だからか、人はたしかに多いけれど中高年や小さい子ども連れのお母さん達ばかりで、みかちゃんが特に苦手そうな、一番男くさい年代のサラリーマンや若い男性は少なめだった。
     それでも上ばかりを見て歩くので、ふらふらと人にぶつかってはそれが男の人だとその度にビクッと肩を震わせるみかちゃんの代わりに、ごめんなさいねと謝りながらその手を取る。
     きっと、人が多い場所なら。
     手を繋いで歩いていても大丈夫そうだからって。そんな下心できっと人気スポットに行きたがっていたであろう自分にほくそ笑む。
     周りの人達も何人か、手を繋いで歩く男子高校生に一瞬怪訝な顔をしたりするけど、みかちゃんがいちいち感嘆の声を上げながら落ち着きなくあっちこっちに行こうとするのを見ては、納得したのか微笑ましい顔になったり苦笑したりしていた。
     時たま写真が撮りたくなったらみかちゃんを呼び止めて、二人で並んで花を撮る。
    「曇ってるから、空を背景に撮ると白っぽい桜は何だかぼんやりしちゃうわね~……」
    「でも下の方向けると人が絶対入ってまう……」
    「ほんっと、それ……」
     文句を言いながらも、次々と写真を撮りながら川沿いを進む。
    「ふふ~ん。帰ったらお師さんとマド姉にも見せたろ~」
     ご機嫌でスマホを見つめるみかちゃんの横で、自分もまた花を撮る。
     よくアーティストのジャケットやタレントの写真集にも参加している好きな写真家さんみたいに、もっと綺麗に花を撮れないものかしらと一つの枝の房を強調して撮ってみれば、横で見ていたみかちゃんも、それめっちゃええやん! と、下の方まで伸びている枝に近寄る。
     自分の顔くらいの高さの枝に顔を近づけて、じっと見ている。
     ほぼ白に近い、薄紅色の花弁の横に。
     似たような色の、陶器で出来たお人形さんのようなきめ細かい頬が見える。
     濡れ羽色の髪にその色はとても映えて、そして造りもののような整った顔立ちと、前髪の隙間からから覗くサファイアの空色とトパーズの金色の瞳がさらに一枚の絵画のようにそこに存在していて。

     ……気づけば、自然とシャッターを切っていた。

     その体勢のまま見惚れていたのか、スマホの画面越しに見ていたみかちゃんと目が合う。
     こちらを見ていたお人形のような顔は、ぱちくりとまばたきをしてから。突然、んあぁぁあっ! と叫んで途端に表情が崩れた。
    「ごめんなぁ~! 今めっちゃ、写真入ってもた……!」
    「あ……。ううん、いいの……」
     半泣きで謝ってくるみかちゃんに、むしろみかちゃんを撮ったとは言えずに言葉を濁す。
     曇り空の下で見るその花弁も、枝も。
     まるでみかちゃんの肌と髪の色に見えてきて、おもわず細い、折れそうな腕を掴んでいた。
    「…………? なるちゃん……?」
     不思議そうに見上げてくるその瞳を見ながらも尚、この子が桜そのもののような気がしてくるので。
    「……そろそろ、お腹ペコペコで倒れそうよ」
     いつものみかちゃんの表情に戻って欲しいとそう告げれば。
     一瞬で目を輝かせて、元気よく。
     満面の笑みで頷いてくれた。




     りんご飴。綿菓子。ベビーカステラ。
     お持ち帰り用のビニール袋を下げてご機嫌で歩くみかちゃんは、今チョコバナナを食べている。
     チョコバナナって、可愛いけど少し卑猥じゃない? と言おうとした瞬間にみかちゃんが選んだチョコバナナは、鮮やかな水色と紫色のコーティングに色とりどりの細かいカラーシュガーをかけたもので、そのあまりの食欲を無くす色に慌てて口を閉じた。
     可愛い男の子がチョコバナナをくわえる図はいろいろとヤバいんじゃ……と思っていたのに、卑猥どころかどう見ても健康を害しそうにしか見えないその色に、今ここに泉ちゃんがいたら真っ青になって叫び出すんじゃないかと想像してしまう。凛月ちゃんや王様は好きそうだけど。
     そんなみかちゃんはチョコバナナの前にはたこ焼きを二人で半分こにして食べているし、その後にはクレープも食べているので、この子にしたら今日はまだ食べている方じゃないかと思ってしまう。
     ソースの匂いに吸い寄せられるように屋台に近づいたのに、最初見つけたお好み焼き屋さんのお好み焼きに焼きそばが入っているのを見て、「あかん!」「邪道や!!」と普段あまり見せないような厳しい表情で立ち去り、次にソースの匂いがするたこ焼き屋に立ち寄っていた。
     全部食べられそうと言っていたものの、まだ屋台がずっと続いてるから何か見つけても食べられなくなるんじゃない? と聞いてみたら、ほな半分こしよ。と言ってくれたので半分ずつ食べた。
     たこ焼きを食べながらそもそもお好み焼きに焼きそばが入ってるのは何でダメなのか聞いてみたら、お好みはお好み! 焼きそばは焼きそば! とムスッとした後に、
    「……ま、宗教上の理由やね」
     とカッコつけて真面目な顔で締め括っていたけど、アンタのその宗教って何なのよ……。粉もん教とか、そんな何かなの……。
     チョコバナナを食べながら相変わらずあっちこっちにふらふらと寄っていくみかちゃんは、お目当ての看板や屋台しか見ていないらしく行き交う人達は目に入らないのか常にぶつかりそうでハラハラしてしまう。
     仕方なく、お持ち帰りの袋を奪い取って空いた手をしっかり繋ぐ。
     本気で屋台にしか興味がなさそうなみかちゃんが手を繋いでいる事に気づいているかも疑問なので、そっと手のひらをずらして指と指を絡める。
     いわゆる恋人繋ぎにして指先に力を込めたら、
    「なるちゃん!」
     突然名前を呼ばれて、さすがに調子に乗りすぎたかとハッとして顔を上げる。

    「なるちゃん、あれ見てや! めっちゃかわいい!」

     そう食べかけのチョコバナナで指す先には、金平糖の屋台がある。
     恋人繋ぎの指先に力を入れられて、そのまま手を引かれた。
     近寄ってくるアタシ達に気づいた屋台の見るからに元ヤンぽいお姉さんと目が合って、少し気恥ずかしくなって手を解く。みかちゃんはさして気にする事なく、屋台の前にしゃがみ込む。
    「うわぁ~、めっちゃかわええなぁ~。アイスクリーム屋さんみたいやわ~っ」
     キラキラした瞳でみかちゃんが見つめる低い屋台の上には、色とりどりの金平糖。色ごとに区切られていて、それぞれに札が立ててある。
    「お花の名前ついてるで! え~、めっちゃかわいいめっちゃかわいい……!」
     みかちゃんの言う通り、色のイメージの名前が札に書いてあった。ピンク色には桜、黄色にはたんぽぽ。紫色にはスミレ。でもよく見れば水色には水色って、何でそこはまんまなのよ。
     先に屋台にいた幼稚園児くらいの女の子がびっくりしてみかちゃんを見た。
     女の子くらいしか好きじゃなさそうな屋台に男の人が来たからか最初は警戒していたものの、透明な瓶に入れている途中の金平糖を見てみかちゃんが
    「その色の選び方、やるやん~。今日の服ともぴったりやわ。さては、オシャレさんやな?」
     と嫌味もなく笑顔で言うもんだから、女の子も少し誇らしげに金平糖の色を説明し始めた。
     それを聞いているみかちゃんは、そうなん? へぇ~、すごいなぁ~と素直に教えを拝聴していて、そのうち屋台のお姉さんもそこに混じっていく。
     小さい子には人見知りはあまり出ないのよねと感心していれば、みかちゃんがこちらに振り向き見上げてくるので横に一緒にしゃがみ込んだ。
     高さ10cmくらいの透明な瓶に入るだけ詰め放題で、どんな色を入れても良いらしい。お値段千円。結構するのね。
     みかちゃんは普段金欠金欠言っているくせにしれっとお姉さんに千円札を渡していて、瓶を片手にもうどの色にしようか悩んでいる。
     適当に全部の色を入れようかと言うみかちゃんに、女の子が好きな色でまとめると可愛いとアドバイスしてくれる。瓶の中身も、色がバラバラにならずにまるでカクテルみたいに色分けされている。たしかにこの子、みかちゃんよりはセンスは良いのかも。
     瓶いっぱいに入れた金平糖なんて到底食べきれそうにないので、こっちはこっちで金魚すくいの袋みたいな小さいポリ袋をお姉さんにお願いする。これは300円。
     せっかくのお花見だからと、ピンク系だけにしてみる。あらやだ、本当に可愛い。
     ふと視線を感じて横を見ると、みかちゃんがじっと見ていた。
    「何? どの色にするか決まった?」
     聞いてみたら、嬉しそうに大きく頷くみかちゃんは、女の子が見守る中、紫色の金平糖を小さいスコップで掬う。
     みかちゃん緑色が好きだって前に言っていた気がするけど、最初に選ぶのは紫色なのね。
     少し意外な気がしてそのまま見ていると、次に黄色。それからしばらく考えて、水色じゃなく濃い方の青色。まだ上に余裕があると思ったのか、こちらを見て、袋の中のピンク色の金平糖を見てからピンク色を瓶に入れた。
    「んん~、かわええわぁ~っ」
     屋台のお姉さんに手渡された蓋をして、みかちゃんの金平糖の瓶が完成した。 
     どない? って大きい弟子に聞かれた女の子はまぁまぁと返していて、お姉さんと吹き出してしまう。
     誰かを呼ぶ声がして皆そちらを見ると、フランクフルトを手にした、女の子とさほど歳の変わらなそうな男の子とお母さんらしき女の人がこちらに歩いてきていた。
     女の子が立ち上がって走り出す。
     みかちゃんが、ありがとぉな~バイバイ~。と手を振ると、女の子も手を振り返して一緒に歩いて行った。
     男の子がみかちゃんを見て、お母さんに何か言っていた。目を指差してたからきっとオッドアイの事を言っているんだろうとは思うけど、そういえば女の子の方は気にしてなさそうだった。みかちゃんは言われ慣れているからか、気づかないような顔をしている。
     満足そうに瓶を眺めているみかちゃんに、落とさないうちに仕舞った方が良いんじゃないと言うと、ほんまや!! と慎重に瓶をこちらに渡してきた。
     みかちゃんが背中を向けるので、リュックを開ける。
     案の定ペンケースの中身は散らばっているけれど、それはまぁ良いという事にして、中に入っているものを寄せてスペースを空ける。ちょうど縦に隙間が出来たので、そこに瓶を立てたまま入れた。
     入れる直前にまじまじと見てみたけど、本当に何でこの配色なのかいまいち分からない。ただ単に、味で選んだのかしら。
     どちらかと言えば黄色と青は逆の方が見映えは良さそうだけど、でもみかちゃんはそこまで考えて詰めてないでしょうねと思いつつリュックを閉じる。
    「あかん……。しまう前にちょこっと食べたらよかったわ……」
     今さら気づいてしょんぼりするみかちゃんが想定内すぎるので、しょうがないわね~! と大袈裟にため息を吐くふりをしながら、透明な袋の中に指を入れた。
     薄いピンク色と、濃いピンク色と、白色。
     ちょうど一つずつ掴めたので、指をみかちゃんの口許へ持っていく。
     みかちゃんは大人しく口を開けてくれるので、そのまま金平糖を舌の上に乗せた。
     指が出る前に口を閉じようとしたみかちゃんの唇が指に当たって、それだけなのに心臓が跳ねる。
     口をモゴモゴさせたみかちゃんが、おいしいわ~とにっこり笑うので、そう? って何て事ない風を装ってまた袋に指を入れる。
     薄いピンク色の金平糖を一粒だけ掴んで、自分の口にも入れる。

     しれっと、便乗しようとしてるんだけど。

     …………願わくは、みかちゃんが気づきませんように。

     涼しい顔でそう念じながら、みかちゃんの唇が触れた指先を自分の唇にも押し当てる。
    「…………うん。美味しい」
     何事もなかったように指先を下ろすと、そちらの手にまたみかちゃんちへのお持ち帰り用の袋を持たせる。 
     空いた手を出せば、みかちゃんもその手を見下ろしてから自分の手を重ねてくれた。
    「雨降りそうやね。そろそろ帰る? お腹いっぱいやし」
     今度はみかちゃんも自覚があるので、恋人繋ぎじゃなく普通に手を繋いで歩き出す。
     結局、やっぱりお腹いっぱいになってるんじゃないのとツッコめば、楽しそうに笑っている。
     喋りながら口の中で小さい金平糖を転がす。
     美味しいというより。

     ただ、甘いのよね。





     最後にクロワッサンたい焼きという、みかちゃんの希望も斎宮先輩の希望も叶えてくれそうな夢の食べ物の屋台を見つけてテンションが上がったみかちゃんの手を取ってまた歩き出す。
     みかちゃんには残念なお知らせだけど……。前に食べた事があるけど、おそらくそれ、どちらが好きな人も物足りなさを感じそうな食べ物じゃないかしら……。
     嫌いではないけれど、たい焼きではない。そして当然のように、クロワッサンではない。どっちかっていうと、パイ生地ね……。いや、美味しいけどね……?
     お師さん喜んでくれるやろかとウキウキしているみかちゃんに、真実を告げられないままお持ち帰り用の袋の中身が追加された。
     お土産に買う前に、味見としてみかちゃんが食べてみれば良かったのに……って、もうこの子お腹いっぱいだから無理だろうけど。
     まだおやつ時くらいなのに、今にも降りだしそうな薄暗い空の下、雲の灰色が移ったような桜並木と屋台が続く隙間を進む。
     二人とも傘を持っていなかったので、自然と歩みが速くなる。
     夜から本格的に雨とは言っていたけど、もうすでに降ってもおかしくないくらいに空が暗い。出店の人も花見客も、桜を見上げているのか空を見上げているのかよく分からなくなってきた。
    「なるちゃん……。なるちゃん……!」
     早足になりかけていたら繋いでいた手に抵抗感があって、後ろにつんのめりそうになる。
     みかちゃんがまた何か見つけて足を止めたようで、今度は何よと振り向けば、みかちゃんは頬を紅潮させて口を半開きにして横を眺めていた。
     視線の先には、宝石つかみの文字。
     どっちかって言えばスバルちゃんが見たら喜びそうな、金魚すくいの屋台のような低い台に、キラキラしたカラフルな石がたくさん入っている。
    「かわええなぁ~……」
     スバルちゃんに負けず劣らずキラキラした瞳でそれを見つめるみかちゃん。そうね、カラスもキラキラしたものが好きなんだっけ……。
     宝石って言っても、アクリルの着色された透明な石で、本物のはずがない。
     何て言うんだっけ……アクリルアイス? 水槽の中やインテリアに使ったりもできるやつだわ。
     それでも子どもの目から見れば綺麗にキラキラ光る宝石に見えるんでしょうねと思いつつ、ここにもそう見える子がいるわと全然その場から動かなくなったみかちゃんに苦笑する。
     看板には、小学生まで300円、中学生400円、高校生以上500円と書かれている。
     手の大きさで決まってるのかしらとまた苦笑していると、キラキラした瞳で見ていたみかちゃんが、何か思い出したように肩を落として歩き出そうとした。
    「……なるちゃん、ごめん。……行こ」
    「え? みかちゃん、やらなくて良いの?」
     トボトボと進む背中が気になって今度はこちらが止まったまま手を引っ張れば、んあ~っと痩せっぽちの身体が後ろに傾くので受け止める。
     ん? と上からさらに聞いてみれば、みかちゃんはしばらく唸った後に、眉毛をハの字にしてため息を吐いた。
    「…………さっきのクロワッサンたい焼きで、もうお金なくなってもうたから……」
     項垂れるみかちゃんも想定内で、改めて屋台を見てみる。
     今は周りに親子連れもいないからか、誰も立ち止まらない。暇そうにしているおじさんが、少し離れた所からじっと見ているアタシ達の様子をチラチラ見ていた。
     たしかに色とりどりに光るアクリルアイスは、これだけの量があれば宝石の山に見えない事もない。この空間自体が可愛く見える。さっきの金平糖の屋台と同じくらい可愛い空間。
     きっと夜になれば、ライトで照らされてそれぞれのアクリルアイスがさらにキラキラと光を反射して魅力的な空間に見えるかも。
     女の子は好きでしょうねとクスクス笑いながら、みかちゃんの手を引いて屋台へと向かう。
    「………………だったら、アタシだって好きに決まってるじゃない」
    「……? ……っ、?? な、なるちゃん???」
     ずんずん近寄ってくる男子高校生二人に、宝石つかみ屋のおじさんが少し狼狽え始める。
     強盗とかじゃないわよ! と心外で、お財布から500円玉を出して明らかにびびってるであろうおじさんに突きつける。それから戸惑うみかちゃんの肩に手を乗せると無理矢理しゃがませた。

    「みかちゃんが取った分を、山分けよ?」

     悪巧みをするような顔で言えば、ええの? と目前に広がる宝石と同じような瞳が瞬く。
    「その代わり、アタシが先に好きな色選ぶから」
     そう付け足してウインクすると、みかちゃんが満面の笑みで、おん! と頷いた。
     挑戦を受けて、おじさんが椅子から立って中腰でみかちゃんの前に来た。
     アクリルアイスのプールの中を、真剣な目で顔を横に倒したりいろんな角度からどこを狙おうかと品定めをしているみかちゃんの、髪の隙間から見え隠れするうなじが白い。
     濡れ羽色の髪に、花びらが一枚。落ちてきた。
     出店の列に入る前の造りもののようなみかちゃんと桜の花の対比を思い出す。
     よく知っているはずなのに、全然知らない子に思えてくるのは何故なのだろう。
     ずっと一緒にいる子のはずなのに、まるでどこか桜の花のように。幻想的な、人じゃないもののような気がしてきてしまう。
     ヒト、じゃないものが。
     人間と一緒に遊びたいからって、人の姿になって縁日に来ちゃったんじゃないかしら。
     そんな妄想をしていたら、みかちゃんの肩が。腕が。動いた。
     アクリルアイスの上に乗せた指先を、ゆっくり握り込んで行く。
    「んあっ……あっ、あかん……っ、んあぁっ」
     徐々に拳が丸くなるにつれて、焦る声を出すみかちゃんが可愛くて後ろで吹き出してしまった。
     前方でみかちゃんの手を真剣に見ていたおじさんの、あっ、おっ? あっ……、あぁ~っ……と応援からの残念そうな声がして、それにも余計におかしくて笑える。
     握り込む途中で指の隙間からこぼれ落ちたものがいくつか見え、みかちゃんが握った手を開いた時、手のひらの中に残っていたアクリルアイスは結局四つだけだった。
     手の中のアクリルアイスを見つめて、はぁ~っと。みかちゃんが肩をがっくり落とした。
    「……取られへんかった…………」
     やけに消沈するみかちゃんの肩をポンポン叩く。
    「でも四つも取れたじゃない」
    「……ちゃうねん……。あいつ取れんかってん……」
     健闘を讃えようとするのに、みかちゃんは俯いたまま顔を上げない。
     あいつ……? どれか欲しいものが決まってたの? と首を傾げていると、店のおじさんが、好きな色を一つ持って行って良いと言ってくれる。途端に、みかちゃんの頭が正面を向いた。
     ええのん!? ほんまに!? と食いつくみかちゃんに笑いながら、おじさんが持ってけ持ってけと追い払うような仕草をする。
     おっちゃんありがとーっ! とお礼を言うみかちゃんは迷わず、さっき指からこぼれ落ちた中から、紫色のアクリルアイスを指先で摘まんだ。

     …………また、紫。

     顔の高さまで持ち上げて、んふふ~。と嬉しそうに笑っている。
     そこまで紫色にこだわる理由も分からなくて、でも好みが変わっただけで今のマイブームな色というだけかも知れないと、立ち上がるみかちゃんの動きをぼんやりと目で追う。
    「ありがとぉ、なるちゃん。……あんな、これだけおれがもらってもええ? あんまいっぱいやないけど、他のはなるちゃんに。少なくてごめんなぁ」
    「……みかちゃんは、一個だけで良いの?」
     紫色だけ持つ手と、反対の手には四つのアクリルアイス。ぎゅって握っていたからか、四つの方の手のひらには歪な形のアクリルアイスの角で出来たらしい凹みが所々ある。
     すぐに消えるだろうけど、本人が痛がらなくてもみかちゃんの手を凹ませた事が若干気に入らない。アクリルアイスにまでそんな感情を持つ自分の心の狭さを実感してしまう。
     でも何よりも。
     どうして紫色なのかが気になって、アタシも紫色が良いかもと嘘ぶけば、みかちゃんが、えええぇっ!? と泣きそうな顔をした。
    「何でそんなに紫色が良いの? 理由を教えてくれたら、みかちゃんにあげるわ」
     自分でも意地が悪いと思いながらもそう聞いてみる。
     みかちゃんはしばらく唸り続けてから、そのうち諦めたのか、うんとな……と、ボソボソ小さい声で呟いた。

    「……だって。…………目ぇの、色やから……」

     聞こえるか聞こえないかくらいの小さい声なので、え? と一回聞き返したら、癇癪を起こしたみたいに変な声を上げながら体全体で首を振るように紫色の石を抱き締める。
    「おれの今いっちゃん好きな色なんよ! んあぁーっ、おれはこれがええの!!」
     どうやっても死守するみたいに手の中に握り込んでいるので、ハイハイ分かりましたと肩を竦めてお手上げのポーズを取る。
    「じゃあ、紫はみかちゃんにあげる。……ていうか、ごめんなさいね? ホントはその色どうでも良かったの。あとは貰って良いの?」
    「うん、ええよ。……あ、でもなるちゃんが欲しかったん何色なん……?」
     この中にあるん? と聞いてくれるみかちゃんは、あれだけ死守しようとした紫色も含めて、五つの石を両手に乗せて見せてくれる。
     目の色、ねぇ……。
     何となく合点がいって、複雑な気持ちになった。
     それを顔に極力出さないように、腕を上げる。みかちゃんの手のひらの上から、水色と、黄色のアクリルアイスを取った。
    「アタシが欲しかったのは、この二つよ」
    「ピンクやないん? なるちゃんピンク色のもんばっか持ってるやん? ピンクもええよ。透明なんもええよ」
     紫以外の残りの二つも言ってくれるので、ありがと、と微笑みながらあと二つも貰う。
     腕を動かす度に、持ち手を掛けてるビニール袋がカサカサ音を立てた。この中には。みかちゃんと、もう一人分のお土産。
     分かってる事とはいえ、優先順位はやっぱりそこなのかと思うと余計に複雑な気持ちになってくる。
     ……どうしてくれるの。
     これから、紫色を見る度に。人知れず嫉妬してしまうかも知れないじゃない……。
     みかちゃんが大事そうに紫色のアクリルアイスをポケットに入れるのを見ながら、四つのアクリルアイスを手のひらに握り締める。
     痛くはないけど、角が肉に食い込む感触がして。みかちゃんの手のひらもこうやって凹ませたのねと、苦々しく思いつつ。
     それでも、たとえおもちゃの宝石でも。
     みかちゃんの瞳の色の二つは、アタシには本物の宝石並みの価値があるんだから。みかちゃんが、その紫色を欲しがったみたいに。

    「……あ。今、顔にポツッて当たった」

     嬉しそうに笑っていたみかちゃんが、ふと空を見上げた。つられて顔を上げたら、ポツッと。本当に頬に雨の粒が当たる。
    「足止めてごめんなぁ! はよ帰ろ?」
     そう困ったような顔で走り出すみかちゃんの髪から、桜の花びらが落ちた。
     薄暗い灰色の空と、白に近い薄いピンク色の桜並木。屋台の看板やのれんの色もくすんで見える中を、陶器のような、桜のような色の肌のみかちゃんがこちらを振り向きながら走る。
     ヒト、じゃないその子が。
     縁日の屋台の隙間から、そのまま消えていってしまいそうな、そんな気がして。
     怖くなって、追いかけて慌ててその腕を掴んだ。
    「……なるちゃん?」
     驚いて見上げてくる宝石の色の瞳が、キョトンと瞬く。
     水色と、黄色の。
     この宝石は。アクリルかしら。金平糖かしら。
     じっとその瞳を見ていると、だんだん細くなっていって瞼で隠されてしまった。

    「……おれが迷子んならんように、帰りもなるちゃん手ぇ繋いでくれるん?」

     んふふ~っと嬉しそうに笑うその頬に、少しだけ赤みが差す。
     それだけで安心する。腕を掴んでいた手を緩め、そのまま袖を滑り手のひらを捕まえた。
    「ええ、そうよ。アンタってば、すぐにどっか行っちゃうんだから」
     きゅっと手を繋ぐと、その二つの手を見てから、みかちゃんが微笑む。
     風が吹いて、雨粒がまた頬に当たった。桜の花びらが舞う。
     花びらがどこかに飛ばされて、地面に落ちたとしても。
     この子が目の前からいなくならないように、握った手に力を込める。
     アクリルアイスで凹んだ皮膚同士が。その凹みがなくなるくらいまで強く、手のひらを合わせる。
    「……さぁ、駅までダッシュよ~!」
    「待って、なるちゃん! あんま本気で走らんとって……!?」
     やる気満々で宣言すると、陸上部いやや~! と泣き声混じりになるみかちゃんの手を引いて。
     暗く重い灰色の空の下を。
     絶対にこの手を離さないように、二人で走り出した。









    「……影片。まだ起きているのかね」

     ドアの下の隙間から漏れる光に気づいてノックをすると、眠そうな声で返事が聞こえた。
     電気を消せる体勢なのかと念のためドアを開けて室内を覗くと、机に置いた腕に顔を乗せていて、これは声を掛けなければこのままうたた寝しただろうと嘆息する。
     机の上には、金平糖の入った瓶と、おもちゃの宝石。
     それを間近で真横から眺めているが、瞼はだいぶ重そうだ。
     お土産だと縁日で買った冷めきった食料を持って帰ってきてから数時間。
     濡れていた髪や制服につい小言を言い、風呂で十分に身体を温まらせてから一緒に食べた。どこがクロワッサンなのかねと文句を言いながらも、ご機嫌でベビーカステラや綿菓子、りんご飴も食べる姿に、これが夕飯になってしまうのかと危惧したら案の定ご飯は入らないと言っていた。
     そんなだからまた痩せるのだよと思いながらも、楽しそうに花見と縁日での事を話すのを止める事も出来なかった。

    「……目ぇの、色」

     ポツリと。小さい声がして、揺り起こそうと肩に伸ばしかけた手を止める。
     呟きながら、アクリルアイスを指先で揺らしている。
     それから、金平糖の瓶も指先で撫でて行く。

    「髪の、色。ユニットの、色……。好きな、もんの……、ぃろ……」

     呟く声は、ほとんど掠れていた。
     嬉しそうに目を細めていく白い瞼は、完全に下りてしまうともう持ち上がる事はなかった。
     静かな寝息に変わるのを聞きながら、起こすより運んだ方が早いと薄っぺらい身体に腕を回す。
     ベッドに下ろし、布団を掛けてやってから机の上のアクリルアイスを指先で突っついた。
    「…………こんな小さな石を、君が無くさないとでも思うのかね」
     不可能だろうと、小さく口許だけで笑いながら部屋の照明を落とす。
     夢の中でも、手を繋いで二人で一緒にどこかに出掛けているのだろうか。ちゃんと帰って来れば良いけれど、いつか、帰って来なくなるのではないかと心のどこかで危惧している。
     けれど、こんなおもちゃの宝石でも。
     そんなに大事そうにされると余計なお節介を焼きたくもなってくる。


     ペンダントヘッドにすれば良いだろうかと思案しながら、音を立てないように、静かにドアを閉めた。


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    きもいさん

    MOURNING支部より再録。2017年の自分が元気すぎる、9月の東京のブリデに行けず悔しくて
    当時関西在住だったなるみかのフォロワーさんと2人だけでエアブリデをした時に作った本?紙の束?です。
    体育祭2のお師ジャーにたまげましたねっていう…。
    支部ではどうでもいい感想が加えられてたので省きました😇
    ブリデにエア無配/なるみか「…………あ」
    「……んぶぅ、っ、……んぁ」
     ふと思い出した事があって足を止めたら、背中に『ぽすっ』という軽い音と共に痛くはない程度の衝撃があった。
     肩越しに振り返ると、鼻を押さえたみかちゃんがほっぺを膨らませている。
    「なるちゃん~、急に足止めんとって~」
    「ごめんなさいね。あぁもう、泉ちゃんに渡してって言われてたものがあったのに。さっき渡し忘れちゃったわぁ~……」
     体育の時間の前に、更衣室に向かっている途中だった。
     体育服への着替えは、更衣室でなくても別に良い。めんどくさい人は教室で着替えたり、部室で着替えたり。とりあえずは着替えさえできたらどこでもかまわない。
     男ばかりだからぶっちゃけどうでも良いなんて皆思っていたらしいけど。今年からは女の子が、転校生ちゃんが来たので、特に隣の2―Aはそういう訳にはいかなくなったみたい。普段からそういうデリカシーを持っていないからダメなのよね。この学院の男の子達は。
    6480

    きもいさん

    MOURNING支部の再録。2016年9月ですって。なるみかというより2-Bとみかちゃん。
    エルミタージュの後だとちょうどいいかも…?ナチュラルに女装(人形役)です。
    辛うじてすうぃっちは実装されたけどまだ三毛縞はいなかった頃に書いたお話。
    凛月がみかりんなんて呼ぶ前に書いてたので、結構冷たい感じです。
    あんな仲良しだなんて思わねぇじゃねぇ〜かよ〜〜!
    一羽のカラスと一人の騎士の物語/なるみか(&宗みか)「フツーの文化祭らしいことって言われてもなぁ……」 

     2年B組の教室で、企画書を片手に衣更真緒は軽く唸っていた。教室内を見渡して、各々好きな事をしている同級生達にすでに頭痛を覚える。
     数時間前にプロデューサーである転校生に渡された企画書と共に、お願いされてしまったのだ。クラスの皆に先に軽く説明をしておいて欲しいと。後で直接各クラスに企画の説明自体には来てくれるようで、その前にある程度の概要は伝えて欲しいとの事だ。
     今回の企画は、各クラスでの歌劇。普通科の生徒から見れば、言ってしまえば毎日が文化祭のような事をしていると思われているかもしれないアイドル科だが、ユニット単位での仕事やイベント参加が多いので案外クラス単位での行動は少ない。比較的どのクラスにも各ユニットの人間がバラけている事に気付いた転校生の考えらしい。
    32204

    きもいさん

    MOURNING支部より再録。2017年4月。元気にモリモリ書いてたんやな、この頃…。
    お花見行って妄想して書いたら感謝祭(わたし仕事で行けなかった)で嵐ちゃんがみかちゃんとお花見とかいうネタがあったらしく、公式やん…!って壁に頭打ちつけたってキャプに書いてました。
    元気やったんやな、自分…。
    桜と宝石、キラキラしたもの/なるみか 人が多い場所は苦手だって事はよく知っているけれど、それでも一緒にどこかに出かけたくなる。しかも、できれば人が多い人気スポットとかに。
     一緒にお出かけして、この可愛い子は。アタシと仲良しなんですって、皆に見せびらかしたいのかも知れない。

    「お花見? ええよ~」

     それは春うららかなある日。
     午後の授業が突然の査察だかで急になくなったのを良いことに、どうせ断られるだろうと思いながらもためしに提案してみたら、存外軽く了承されてこっちが心配になる。
    「……みかちゃん、ほんとに良いの……? お花見って事は、花見客がいっぱいなのよ? 昼間っからお酒飲んで良い気分の人達もいたりするのよ?」
    「そらお花見やねんから花見客なんちゃう? 買い物客とかやないやん。ん~、人は多いやろけど……今日曇ってるからそない多くないかもやし、なるちゃんが行きたいんやったらええよ」
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