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    koshikundaisuki

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    12/2 影菅アドベントカレンダーチャレンジ

    #影菅
    kagesuga

    家探しのコツ住宅情報誌を意味もなくペラペラ捲っていた。最早俺の目は内容を追ってもいない。ただコタツの温度に溶かされ「人をダメにするソファ」によってダメにされた男がひとり、居るだけだ。同じコタツに入っている影山は、暖をとるために背中こそ丸まっているもののきちんとした姿勢で座っている(※当俺比)。珍しく書き物をしているらしかった。「何してんの?」と聞くと顔を上げ、ペンを置いて言う。
    「今度出る番組用のアンケートらしいです」
    興味ある。しかし、起き上がるのが億劫だった。「読んで」と強請ってみるが「ダメ」と返される。
    「なんでだよ」
    「守秘義務」
    「影山のくせになまいき~。お前、守秘義務って言えばあきらめざるを得ないと思ってやがんな」
    クッションにうずまったまま文句を言うと、テーブルの向こうからクスンと笑う声が聞こえた。
    「ふんっ!!」
    勢いをつけて体を起こし、影山の手元を覗き込んだ。守秘義務などと言ったくせに隠す気配も見せない。
    やがて反動により軌道を描いて再びクッションに沈み込む。
    「……つまんねぇ質問……」ボソリと呟くと影山が「本当に」とぼそりと応えた。
    わずか数秒見ただけだったが、「犬派か猫派か?」「彼女にしたい芸能人は?」「自分を動物にたとえると?」といった質問が並んでいた。
    大学生の合コンでももう少し有意義な質問をすると思う。
    「で?彼女にしたい芸能人は?」
    「特になし」
    「つまんねぇ答え……」
    「なんて答えたらいいですか」
    「マ〇コ・デラックス」
    適当に返すと影山が無言でペンを走らせはじめたので慌てて止めた。


    「天下の影山選手だぞ?もうちょい聞くこと他にあるよなぁ」
    「たとえば?」
    「そうだなぁ……家探すときの条件って何?」
    「えー、俺は体育館近くて、風呂ができるだけ大きくて……鉄筋であれば後は何でもいいです」
    「鉄筋!?意外なこだわりだわ」
    「宅トレしてると苦情来るんで、木造だと」
    ああ、なるほど、と納得すると同時に家もバレー基準なのだと今更感心した。とはいえ影山はほとんど寮生活だったので個人で家探しをしたことはほとんどないらしい。
    「菅原さんは結構引っ越し多かったですよね」
    その通りだった。別にこだわりが強いわけではない。それこそ初めての一人暮らしは大学近くの築42年オール和室の1K(バス・トイレ同室)に住んでいた。
    ちなみに家賃は1.4万円。管理費無し、敷金礼金なし。親に頼るつもりもなかったものだから、安さ重視で選んだ物件だった。わずか二か月でものの見事に空き巣に入られ、貯蓄していたカップ麺と何故か衣類を根こそぎ持っていかれた。警察は鍵を見て「もう少しちゃんとした鍵ついてるところを選んだ方がいいですよ」と言って帰っていった。まるでこんな家に住んでいる俺が悪いと言わんばかりの態度だった。憤慨して周囲に話すと「一理ある」とのことだったので、次の物件ではオートロックのアパートにした。
    1階も侵入されやすいとのことだったので、2階にした。しかしあっさり侵入された。犯人は大家だった。俺の部屋で何をしていたのかのは、聞かないことにした。
    今度は大家ではなく管理会社が管理しているアパートを借りた。憧れのロフト付きだった。エピソードとしてはありきたりだが、ロフトは夏熱く冬寒いという居住性は最悪の空間なのでほぼ物置として使用していた。窓からは隣接する墓地が見えたが特に気にならなかった。それよりも俺が外出するとき、隣人も全く同じタイミングで外に出てくることの方が余程気になっていた。
    ただ顔を合わせれば挨拶を交わすだけの関係だったが、ある日俺がまだ学生だった影山を連れ込んだ翌日から壁を殴られるようになった。理由はまったくわからない。うるさくしたわけでもない。
    墓地から聞こえるお経は気にならなくとも、明らかに悪意をもった壁殴りの音はダイレクトにメンタルに来た。すでに2度も違約金を払っているので引っ越したくなかったが、結局大した家賃でもないことを考え、一度実家に戻ることになった。
    就職が決まり、配属される学校が決定したところで改めて家探しをした。社会人になってはそう簡単に引っ越しもできない。俺は親や大地、不動産のプロフェッショナルを自称する親戚などに相談しながら慎重に家を探した。今までの経験を踏まえ、条件を探りながらたどり着いた家は今までと比べても立派だった。毎月給料がしっかり出る分、家賃の予算にゆとりがあったのが大きい。
    築27年の2DK、バストイレ別(風呂は追い炊き機能付き)、IHではなくガスコンロ、室内洗濯機置き場、駐車場付き。南向きの明るい住戸だった。
    それが今住んでいるこの家だ。
    と言えればどれだけよかったでしょう。なんやかんやで俺はそれからもう一度引っ越しをした。
    俺もいい歳だし、何かあってもおかしくないのだから2つ部屋があってもいいな。そう思って引っ越した今の家に、イタリアから帰国した影山が住んでいる。


    「菅原さんは家探すときのこだわりってなんなんですか」
    影山が気だるげにアンケートに記入しながら尋ねる。
    「ガスコンロだな。IHだと炒飯作れねぇから、そこだけは譲れん」
    影山はふふ、と笑い「菅原さんの豚キムチ炒飯、美味いですよね」と言うので、俺は気をよくして今度の休日には炒飯を作ってやろうと思うのだった。

    終わり
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    koshikundaisuki

    DOODLE菅受けワンドロより「あざやか」をお借りした影菅の小話
    雑談「んでな、俺は言ってやったわけ。『いや、それは唐揚げへの解像度低すぎるだろ!』って」

     通常ならここでひと笑い起こるはずだったが、凪。まさに凪。俺はゆっくりと斜め後ろを振り返る。神妙な顔をした影山と目があった。話を聞いていなかったわけではないらしいな、と頷く。
     影山との会話は度々こうなる。例えば昼食を食べたあと「あーもう腹パンパンだわ、パンだけに」と言おうものなら、笑うでもなく、冷たい目を向けてくるでもなく、まじめな顔で「今の、どういう意味ですか?」とか言ってくる。俺が駄洒落を言うときなんて8割何も考えずに口にしてるだけだから、本当はくだらない、と一笑に付してくれるくらいがありがたいのだが、真面目に尋ねられてしまっては俺も誠意をもって「今ランチでパン食ってたじゃん?だからお腹いっぱいなことを『お腹パンパン』って言葉に言い換えてパンと掛けてんだよね」と説明することになる。ギャグは鮮度が命であり、説明なんてしようものなら笑いの神様は死ぬ。解説を聞き、影山は「なるほど」と納得した様子で頷く。その目は「やっぱ菅原さんはすげえ」とでも言いたげに輝いている。影山は感動はしてるが別に笑いはしない。なぜなら笑いの神様はもう死んだからだ。
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    koshikundaisuki

    DOODLEラッキーすけべでお題をいただきました、影菅ノssです
    ラッキースケベ(仮)聞いて欲しい。これは俺の懺悔と、とある追憶の記録だ。

    俺、菅原孝支は宮城県内某所で小学校教諭をしているごく普通の成人男性だ。俺には年下の彼氏がいるのだが、それはそれは可愛く、そして時には大変格好良い男で、バレーボール男子日本代表にも選ばれたトップアスリートである。名前は影山飛雄という。詳しくはWikipediaでも見てほしい。

    愛し愛されかれこれ8年ほど恋人としての関係が続いている。遠距離の時期が長く続いたこともあり、取り立てて大きな事件などは起きなかった俺たちだが、半同棲をはじめて1年半がたつ今、影山を怒らせてしまった。理由はさほど重要ではないので割愛するが、俺自身の不甲斐なさが原因だ。俺は自らの過ちを認めて非礼を詫び、彼の中にあった誤解を解くためそれまでの成り行きを丁寧に説明し、最後に影山を本当に愛していることを伝えて仲直りとなった。焦った。影山が小さな不満を貯め込み、それが表面に漏れてしまうことは珍しくないが、面と向かって不満を爆発させたのはほぼ初めてだったので、俺たちの関係もこれまでかと思った。抱きしめられた影山は落ち着くためにゆっくりと深呼吸をしたあと、シュンとした表情のまま「俺も、すみませんでした」と呟いたのでたまらない気持ちになる。でもそうだよな。長い付き合いだからこそ、きちんとお互いのことを話しいくべきだよな。
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