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    さみぱん

    はじめての二次創作

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    さみぱん

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    先週の流星群を見てた笹唯ちゃんからメリークリスマス!

    初出:2021.12.25

    ##笹塚創
    ##笹唯
    #スタオケ
    #笹唯
    sasamita

    星に願うこと【笹塚創】 クリスマスシーズンで浮ついた街へ出て、人間観察と環境音のサンプリングから戻ったら、いつもの事だがとっくに夕食の時間は終わっていた。冷蔵庫を覗いてみると『笹塚さんの分』とメモが貼られた皿があった。そういえば昼も食べてないし、続けて食いっぱぐれるのは困るので助かるな。料理をレンジで温めていると、誰かがうろうろしている影が見えた。テラスから庭へ出たり入ったりしているような音もする。
    「笹塚さん! 今日は何時からですか?」
     食べ終えた食器を片付け、タブレットを弄りながら部屋へ戻ろうと立ち上がると、上着の袖をきゅっと引っ張られた。声ですぐわかるし、こんなことをするのは1人しか居ない。思った通り肩越しに見えたのは朝日奈だ。俺が席を立つのを待ち構えていたという所だろう。
     まぁ何の用かだいたい予想はついてる。
    「あんたか。なに」
    「何って、ふたご座流星群に決まってますよ~♪」
    「もうそんな時期か」
    「昨日からで、今日がピークって聞きましたっ」
    「ふーん」
    「あれ? 何だか反応薄いですね…? この間の月食は終わるまで一緒に見たじゃないですか。…もしかして流星群は興味ないとか?」
    「無くはないけど。毎年あるから別に無理する必要ない」
    「そっか…。笹塚さんお忙しいですもんね」
     見ると朝日奈は既にモコモコに着込んでいるのに何故か下はスカートに生足だ。月食の教訓で防寒対策を万全にしようと思ったのかも知れないが、その格好で流星群見るつもりなのか?
     ずるずるとテーブルに突っ伏して、楽しみにしてたのになぁと呟いている。そんな残念そうな声出す程の事じゃないだろ。別に約束していた訳でもないし、放っておいてもいいんだけど。
     朝日奈から誘われたのが案外嬉しかったみたいだ。
    「付き合わないとは言ってない」
    「えっ、いいんですか? やったー!」
     ガバッと顔を上げたかと思うと、今度は飛び上がって喜び始めた。喜怒哀楽がわかりやすくて見てて飽きないなと思っていたら、今度は袖じゃなく腕をガシッと掴まれた。そのまま腕を組むようにしてぐいぐい引っ張られる。
    「じゃ、善は急げです! さっき外出てみたんですけど、どこ見たらいいか分かんなくて」
    「今の時間、放射点なら東だけど。…確か観測は全天で可能なはず」
     朝日奈の勢いに引きずられるようにして庭へ出てみると、東の空にはふわふわと薄い雲が一面に広がっていた。しかし雲の流れは案外速く、少し待てば空が広く見える箇所も出て来そうだ。
    「あれ?」
    「結構雲あるな。しばらく我慢して様子見るか…。晴れてからまた出てもいいけど」
     白い雲と黒い空がまだら模様になり、時折隙間からチラチラと星が輝いているのが確認できる。じっと見ていると、雲は止まっていて星の方が動いているような錯覚を起こしそうだ。
    「んーー?? あれ…は…ちがうよね」
     そうは言っても上空だけでなく地上もそこそこ風が強く、体感気温は下がる一方だ。俺はこのくらい平気だが朝日奈の足元が寒そうなのと、口数が減っているのが気になって星を見るどころじゃない。あれだ、何か喋ってないと寒さに気持ちが負けそうなのに、口を開けば開いたで体温が奪われる、という悪循環に陥り始めているのかもしれない。
    「…んくしゅっ」
    「おい、あんたもう限界だろ。戻るぞ」
    「やだ……流れ星まだ見てないのに…。わっ! 笹塚さん⁈」
     時間がかかると面倒なので抱えて運ぶことにした。空を見上げたままの朝日奈の腰のあたりに手をかけてひょいと持ち上げると、ちょうど目の前に白いうなじが見えて、いい匂いがした。ああ、この感じ、いいな。月食の時の事を思い出して思わず口元が緩むのが自分でもわかった。
    「じ、自分で歩きますから、降ろしてください!」
    「このほうが早いし、もう着いた。ほらさっさと入れ」
     屋内に入ると、室温としてはそれほど高い訳ではないのに、風がないだけでホッとする。
    「あーー寒かったぁ」
    「だから無理する必要ないって言ったろ」
    「だってえ…さっきまで晴れてたのに…」
     恨めしそうにガラス越しに夜空を見上げる朝日奈の横顔を眺めるのもいいが、あの様子じゃ簡単に諦めてくれなさそうだ。しょうがないな。
     タブレットを操作して目的の情報を画面に表示させ、朝日奈へ提示する。
    「2時くらいになったら風も止んで晴れそうだ。ほら」
    「えっ? ホントに?」
    「この時間なら月も沈んだ後だし、観測しやすいかもしれないな」
    「うれしいけど、2時まで起きてられる自信ないです…」
    「時間まで仮眠しとけばいい。俺は作業するつもりだし起こしてやるよ」
    「それはいい考えですね! じゃあ毛布取ってくるので待っててください‼︎」
     朝日奈がバタバタと女子棟の方へ走っていくのをつい目で追ってしまったが、いま何て言った? もしかして、ここで仮眠するつもりなのか?


     朝日奈がラウンジのソファで毛布に包まっている。すよすよと一定間隔で聞こえる寝息が心地いい。幸せそうな寝顔だな。
     作業もせずに眺めていたらあっという間に2時だ。起こしてしまうのがもったいない。
     一足先に外の様子を見てくると、予報通り空はすっかり晴れて、風も止んでいた。星空を見るにはテラスのデッキチェアがちょうど良さそうなので、2台をくっつけようと足で押したら、ギギギ…という思いがけなく大きな音が出てしまった。
     そっと中へ戻ると朝日奈がもぞもぞと動いているのが分かった。さっきの音で起こしてしまったらしい。眠り姫を起こすのはキスのはずだったんだが。
    「……んー」
    「朝日奈。おきた? 空はいい感じだ」
    「ん…おはよ…です」
     まだ寝ぼけている朝日奈をデッキチェアまで連れ出すと、2人まとめて毛布をかぶって星空を見上げる。外の冷たい空気でやっと目が覚めたらしい朝日奈は、一瞬驚いた顔をしたが、一つ嘆息すると何事もなかったかのように星空を眺め始めた。この距離感の心地良さを感じているのが俺だけじゃないといいんだが。
    「あ」
     微かに白い息が見えた。
    「そういえば、気になってたんですけど。何で冬なのにふたご座なんでしょうね?」
    「は? 放射点がふたご座の辺りだからに決まってる」
    「でも、ふたご座って5月6月のイメージじゃないですか」
    「イメージって。あんたが言ってるのが星座占いの黄道十二宮のことなら、季節は逆だけど」
    「こうどうじゅうにきゅう…?」
    「黄道、つまり太陽の通り道。で、その黄道上にある12の星座の上を太陽が通る季節に合わせて当てはめてある」
    「ふーん…なんだか難しいですね」
    「まだ分からない? 太陽が出てる時は星座見えないだろ。いま星座が見えてるのは夜だから。つまり太陽と反対側に来てる時。だから冬」
    「なるほど?」
     これはわかってない声だな。いくらでも説明できるけど今はもういいか。それより。
    「あんた、何でそんなに流星群見たいわけ?」
     ただ宇宙の塵が大気圏で燃えるだけの現象なのに、と言ったらどんな顔をするだろう。
    「もちろん流れ星にお願いしたいことがあるからですよ。それから…」
    「それから?」
    「いえ…なんでも、ないです」
     妙に歯切れの悪い言い方をする。暗くて表情がよく見えないので顔を近づけると、何となく朝日奈の体温が上がった気がした。
     そのまま横顔を眺めていると、また変なしゃべり方をする。
    「…さ、さづかさん。ほし、見ないんですか」
    「あんたの顔見てる方が面白い」
    「気になるので遠慮してください」
     遠慮ならもうしてる。本当にしたいことなら我慢してる。今は、まだ。
    「流れ星は? 流れた?」
    「まだです。もう終わっちゃったかなぁ」
     1時間に五〇個なんてピークは過ぎたと思うけど、タイムリミットにはまだ時間があるはず。
    「だから流星群は毎年あるって言ったろ。また来年見ればいい」
    「でも…」
    「しし座流星群でもペルセウス座流星群でも流れ星には違いないし。その時はもっと空が暗くて広い場所に連れてってやるよ」
     朝日奈の視線が空から外れた感じがした。そのあとしばしの沈黙。
    「…どうしよう」
    「まだ何か問題?」
    「流れ星にお願いする前に叶っちゃいそう」
    「へぇ。内容は?」
    「……来年も、流星群見れますように…できれば笹塚さんと一緒に…って」
    「そういうことは。…星に願うんじゃなくて直接言えばいい」
     朝日奈がこくりと頷いた、その時。
    「「あ」」
    ──ひとすじの光が俺たちの目の前で輝いた。
     ほぅ、と朝日奈が息を吐くのが聞こえた。
    「願いごと、できたのか?」
    「やめときました。だって星に願うより直接お願いした方が確率高いんですもんね。それに、あんな短い時間で3回言うなんて無理ですよ」
    「確かに。それで。何を叶えればいいんだ?」
     直接願う相手が俺以外だと思えないのは自惚れだろうか。
    「…ええと、来週の土曜日って時間ありますか?」
    「土曜? …ああ。クリスマスの予定? ならもう埋まってる」
     朝日奈が一瞬見開いた目をそっと伏せ、小さく深呼吸したように見えた。星空が雲に隠れた時より沈んだ様子だが、そういう意味じゃない。
     耳元に顔を寄せて囁くと、自分でも驚くくらい甘い声になった。
    「ていうか、あんたと過ごす気でいたんだけど」
    「……っ!」
    「あんたもそのつもりだと思ってた。わざわざ約束しなきゃダメなのか?」
    「…そりゃあ約束して貰えたほうが嬉しいに決まってますよ」
    「そんなもんか」
    「そんなもんです」
     くすくすと笑い合う声が星空に吸い込まれていくようだ。面倒だと思うことも、朝日奈が嬉しいならまぁいいかと思えるようになっていくのだろうか、と考えた所でまたひとつ星が流れた。



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    さみぱん

    DONEスタオケ版フリーライトへの参加作品です
    https://twitter.com/samipan_now/status/1528016739367198720
    いぶちこさん(@ibuchi_co)の、めちゃくちゃ可愛くて笹唯ちゃんも桜も満開なイラストにSSをつけさせて頂きました!

    少し不思議な体験をした笹塚さんのお話。
    頭の中でどんな音が鳴っているのか聞いてみたいです。
    初出:2022.5.21
    まぶしい音『それでね、今日────』
     電話の向こうの朝日奈の声が耳に心地いい。
     札幌と横浜、離れて過ごす日があると、小一時間ほど通話するのが日課になっている。最初はどちらからともなくかけ合っていたのが、最近は、もうあとは寝るだけの状態になった朝日奈がかけてくる、というのが定番になってきた。
     通話の途中で寝落ちて風邪でもひかれたら困るというのが当初の理由だったが、何より布団の中で話している時の、眠気に負けそうなふんわりした声のトーンが堪らない。
    『────。で、どっちがいいと思います?』
    「ん……なに?」
    『もう、また聞いてなかったでしょ』
     俺にとっては話の内容はどうでもよかった。朝日奈の声を聞いているだけで気分が晴れるし、何故か曲の構想もまとまってくる。雑音も雑念もいつの間にかシャットアウトされ、朝日奈の声しか感じられなくなっているのに、断片的な言葉しか意味を成して聞こえないのが不思議だ。
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