あの輝きの中の記憶は曖昧で、ただ自分がこの世界から見て五年以上も行方知らずになっていたことを知らされた。
シャア・アズナブルは与えられた軍籍の仮IDで外出許可を取り、ソドン停泊中のコロニーにある官舎の一室の前を訪れていた。
呼び鈴を鳴らさずともわかる。相手の気配。
しかし先だって連絡をしたわけでもなく来てしまったことに、今更ながら躊躇をおぼえ、暫くそのままたたずんでいると唐突に横滑りの扉が開いた。
外部の明かりの入るように設計された廊下、一転して暗がりに落ちた玄関から、外の光を受けた顔が向けられる。静かな灰緑色の眼差し。
──不自然なほどに、穏やかな。
自分をサルベージしたのは、彼だという。
コロニーの医療機関の部屋で目覚めた後、現在のソドン艦長に一通りの顛末を簡潔に告げられた。ゼクノヴァと名付けられたサイコミュの暴走。その場の皆の生存が危ぶまれる恐慌の中で、自分を探す特務を担っていた中佐が周囲の制止を振り切り自ら出撃し、荒れ狂う強大な渦の中からこの身柄を持ち帰ったのだと。
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