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    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

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    甘味。/konpeito

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    本日の800文字チャレンジ
    探しものが見つかる地図/クロ←リン

    リィン・シュバルツァーが手に入れた地図は、不思議な地図だった。
     シミのような黒点のある、古い西ゼムリア大陸の描かれた地図だ。買ったときにはなかった汚れだったが、紙自体年代物の風貌だったのでそういうこともあるだろう。そのときはそれで済ませてしまった。
     しばらくして、久しぶりに地図を広げたときに違和感を覚えた。果たして汚れはこんなところにあっただろうかと。気にして日に一度見るようにすると、やはりそれは動いていた。
     そうして地図の調査をするため、汚れのある位置へ向かっていた。
    「あれ、やっぱりまた位置が変わってますね」
     隣から覗き込んだユウナ・クロフォードがもの珍しそうにしている。
    「買った店には入手元、聞けなかったんだっけか」
     列の最後尾を気怠そうにアッシュがついてきていた。私情だからと同行は強制しなかったものの、なぜかリィンの生徒全員が付き添いを申し出たのだ。
    「本当に不思議な話なんだが、同じ道を同じように歩いても買った古書店は見つからなかったんだ」
     横道を一本入った細道の先で、偶然見つけた古書店だった。人目を避けるようにあったその店は、しかしふたたび訪れようとしてもたどり着けなかった。
    「教官、そこの宿酒場が目的地のようです」
     ユウナの反対から地図を見ていたアルティナ・オライオンに袖を引かれる。彼女が広げていた真新しい地図と見比べて頷いた。
    「行こうか」
     意を決して宿酒場の扉をくぐる。
    「っしゃいませー」
     ちょうど空いたテーブルを片付けているだろう背中に目が釘付けになった。襟足の伸びた銀髪に、逞しい体躯の男がいた。
     半年振りに見た彼は変わっていなかった。そう連絡を取り合う仲でもなく、ときおり通信で話をする程度。今さらこちらから会いに行くような度胸もなく、後悔していた。
    「クロ、ウ……、なんでここに」
     驚きすぎると人は声も上手く出せなくなるらしい。上擦った声でどうにか彼の名前を呼んだ。
    「リィンか? なんでって、そりゃこっちのセリフだっての」
     不意に、古書店の主からかけられた言葉を思い出す。
    ――探しもの、見つかるといいですね。
     ああ、探していたものは見つかったみたいだ。
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