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    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

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    本日の800文字チャレンジ
    クロリン/Ⅳ後/勝負の女神が微笑んだわけ

    「これで終いだ」
     クロウの手でマスターカードが動かされ、攻撃が宣言される。こうしてリィンのマスターカードの体力はなくなり、敗北が決定した。
     ヴァンテージ・マスターズ。通称VMと呼ばれるカードゲームをクロウに教えたのはリィンだった。それまでは横で見ていた程度だと言っていた彼に初戦で苦戦を強いられたのも、今はいい思い出だ。それからは正直、一進一退。お互いに勝っては負けてを繰り返していた。
     そんな彼相手に手を抜くなんて真似は当然しなかったが、こうも差をつけられるのは正直堪えた。
    「……負けた。今日はやけに真に迫っていたな?」
     敗北を宣言したリィンは、テーブルにひろがったカードをケースへ片付けた。クロウのマスターカード、クラウンシーフは動きが読みづらく、こちらは遠隔攻撃を得意とするウィッチで迎え撃ったのだが、結果はこの有り様だ。
    「まあな。さてと、約束通りひとつだけ俺のお願い聞いてもらおうか」
     勝者の笑みを浮かべるクロウは、今にも鼻歌を歌い出しそうなほどだ。勝負をする前、珍しく賭けを申し出た彼にリィンは難色を示したものの、賭けるものが金銭でなかったので、つい容認してしまったのだ。
    「分かった。約束は約束だ。いいぞ」
    「よし。んじゃ俺のことをクロウ先輩と呼んでもらおうか」
    「いやだ」
     緑の制服を着たクロウの姿が、今の姿に重なる。考えるより先に口が動いていた。
    「なんでだよ! トワのことは先輩呼びしてるじゃねえか」
    「トワ先輩は先輩だから当然だ。クロウはいったい俺のなんの先輩なんだ」
    「――人生の先輩だ」
     しばし顎を撫でたクロウが、真面目な顔で堂々と宣言した。本気かと目で問うも、彼が引くことはない。
    「お願い、聞くんだろ」
     それから無言の駆け引きが続き、最終的にリィンが折れた。
    「クロウ、先輩」
     舌のうえで甘酸っぱい青春時代が溶けた。むず痒い口元を手の甲で隠す。頬が熱くてたまらなかった。
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