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    111strokes111

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    マリアンヌによる答え合わせの回です。エドマンド辺境伯の周りを捏造しています。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。

    #ロレマリ
    lloremali

    10.interval(side:M) エドマンド辺境伯は書斎に通された妹の娘を見た瞬間に泣いた。目をきつく強く閉じたせいで頬をこぼれ落ちた涙を手巾で拭きながらもすぐ書類を取り出せたことからも分かる通りずっと前から用意していたのだろう。自分や妹と同じ水色の髪と目をした娘は言われるがままに署名しマリアンヌ=フォン=エドマンドとなった。

    「ただいま戻りました」

     マリアンヌが帰宅の挨拶をするため義父の書斎に顔を出すとエドマンド辺境伯は棚の上に作った小さな祭壇の蝋燭に火を灯していた。マリアンヌの両親を偲ぶもので彼女の実母が家を出る前に残していった髪の毛と彼女の実父がエドマンド辺境伯に当てた直筆の手紙が飾ってある。彼女の亡骸は見つからず妻の死に関係があったであろうマリアンヌの父は失踪したのでこの髪の毛しかマリアンヌとエドマンド辺境伯には残されていない。

    「おかえり。リーガン家のひよっこはなかなかやり手のようだ。誰か一人くらい捕虜になるかと思ったが皆見事に逃げおおせた」

     義父は皆、と言ったのできっと東に逃げた者たちも無事に帰宅できたのだ。

    「はい、クロードさんはすごい人です。でもすごい人はクロードさんだけではありません」
    「マリアンヌ、入学前は友人など出来るはずもないと言っていたがそんなことはなかっただろう?」
    「はい……」
    「色々大変な目にもあったとは思うがマリアンヌをガルグ=マクへやって良かった。私があいつと知り合ったのもガルグ=マクでね……」

     マリアンヌはヒルダと選んだ手巾を義父にそっと差し出した。義父は滅多にマリアンヌの父について語らないのだが語り始めると泣いてしまうことが多い。

    「お義父さま、そんなに話すのがお辛いのでしたらその、私の父のことは……」
    「いいや、話したいんだ。少しずつしか話せないが……いつも取り乱してしまって申し訳ない。明日の午後仕立て屋が来るまでゆっくり休みなさい」
    「仕立て屋……ですか?」
    「そうだ。リーガン公の葬儀に間に合うように新しい喪服を作りなさい」

     エドマンド辺境伯は同盟きっての論客で交渉の場に立てば彼に勝てる者は殆どいないと言われている。ローレンツの父であるグロスタール伯もマリアンヌの義父は敵に回したくないのだという。多分こういうところが原因だ。

     数節後、マリアンヌは作りたての喪服を身に纏って義父であるエドマンド辺境伯と共にデアドラのリーガン邸にいた。侍女を帯同させているのでガルグ=マクにいた頃のように編み上げから髪の毛がこぼれ落ちることもない。リーガン邸は長く盟主を務めていたオズワルドを悼む弔問客でごった返している。その中に見覚えのある髪型をした桃色の頭が見えた。

    「私はリーガン家の家臣たちと少し話をしてくる」
    「あの……私は……」

     マリアンヌは辺境伯の地位を継ぐ者として養女となったので義父の出る会合には帯同せねばならない。眉尻を下げている養女を見て義父は実母と同じ場所に笑窪を浮かべた。

    「お友達がいたのだろう?せっかくだから話しておいで。私は少し時間がかかるからね。ああ、弔い酒は飲んでも構わないがもう無理だと思ったら私の名を出してきちんと断りなさい」

     許可を得て広い邸内を再び探し歩いたがヒルダはなかなか見つからない。もしかしたら人違いなのかもしれなかった。マリアンヌは後継者として顔と名を売らねばならないがヒルダはそんなことをする必要がない。きっとゴネリル家を代表してリーガン公の葬儀に出席するのはヒルダではなく彼女の兄か父だ。

    「マリアンヌさん!」

     騒々しい邸内でもよく通る声がマリアンヌの鼓膜を叩く。振り向いてみればそこに喪服姿のローレンツが立っていた。見慣れた制服姿ではないので少し違和感がある。

    「ローレンツさんお久しぶりです。あの……ヒルダさんを見かけませんでしたか?」

     ローレンツは給仕たちが注いで回っている弔い酒を空けると首を横に振った。脱出行の際に伸びた髪は整えられている。

    「ふむ……クロードとリシテアさんには会ったがヒルダさんは見かけていないな。良かったら探すのを手伝わせてもらえないだろうか?」

     コーデリア家はリシテアが主体となって近々爵位を返上するのだという。その関係でデアドラに来ていてもおかしくはない。

    「ありがとうございます。ヒルダさんから手紙はいただいたのですが直接お会いできるならお会いしたくて」

     ローレンツはマリアンヌの言葉を聞いて小さく頷いてくれた。彼はいつからかマリアンヌの言葉を黙って待ってくれるようになった。背が高いローレンツが見渡してくれればすぐに見つかるような気がするし口籠もってしまうマリアンヌが声をかけるより本来は朗々と語るローレンツが声をかければすぐに気づいてもらえるだろう。ところが中々ヒルダは見つからない。

    「人違いだったのでしょうか?」
    「いや、マリアンヌさんが彼女を見間違えるはずはない。今日は前夜式でごった返しているから会えないだけで明日には貴賓席で会えるだろう。リシテアさんの居場所なら分かるが挨拶していくかい?」

     マリアンヌが頷くとローレンツは弔問客用の軽食が用意されている部屋に連れて行ってくれた。そこにはリーガン家の使用人たちが総出で作った菓子や弔い酒用の肴がおいてある。

    「また会いましたね、ローレンツ。ああ!マリアンヌ!元気にしてましたか?この揚げ菓子最高ですから食べた方がいいですよ」

     リシテアは生地に干し葡萄が練り込んである揚げ菓子を頬張っていた。

    「ええ、私は元気です。リシテアさん、ヒルダさんを見かけませんでしたか?」
    「あれ?ヒルダ居ないんですか?私はここについたばかりの時に会ったんですが……帰っちゃったのかもしれませんね。まあ焦らずとも明日にはヒルダにもマリアンヌにも貴賓席で会えますよ」

     リシテアはローレンツと同じことを言った。そもそもデアドラでヒルダと会う約束をしていたわけでもない。それでも少し残念に思いながらマリアンヌはようやく給仕から弔い酒受け取り杯に口をつけた。死者に捧げる杯なので空ければ空けるほど良いとされている。

    「私だけお会いできないなんて……」
    「いやマリアンヌさん、僕もヒルダさんに会えていないのだからそれは違う」

     空きっ腹に流し込んだせいか酒の周りが早くマリアンヌの頬は赤く染まった。給仕がまたマリアンヌの杯に酒を注いでくれたので空けようとするとローレンツにそっと取り上げられてしまった。

    「それ以上は明日に障りが出てしまう」

     おかげでマリアンヌも義父からもう無理だと思ったら断るようにと言われていたことを思い出せた。

    「すいません、ありがとうございます。ふふ……ローレンツさんは私が義父の名を出さなくても止めてくれるのですね」

     マリアンヌは酒を飲むと気持ち悪くなってしまうことの方が多いのだが今日は違った。いつも心から離れない重りはどこへ行ってしまったのだろう。リシテアが絶賛していた揚げ菓子のように心がふわふわと軽い。

    「マリアンヌさん、それは当然のことだ。貴族というか男として守らねばならない一線がある」

     その後のことをマリアンヌはよく覚えていないのだがきちんと義父と共にデアドラの上屋敷へ帰り帯同していた侍女にずっとローレンツの話をしていたらしいということは翌朝義父から聞いた。
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    MAIKINGロレマリに続きようやくクロヒルの方もちょっとそれっぽくなってきたかもしれません。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    7.B(side:L) ローレンツが厩舎の管理をマリアンヌと共に担当していた時に上空警備を担当していたクロードとヒルダが戻ってきた。金鹿の学級で軽業師の真似事が流行ったことがある。ナイフ投げも軽業もレオニーが飛び抜けて上手いのだがクロードも負けていない。下馬の際に左足を鎧から抜き忘れた人の真似、というのがクロードの得意技だ。羽ばたきやペガサスの嗎に混ざってヒルダが楽しそうに笑っている声が聞こえる。

    「また同じことを繰り返して……ヒルダさんも飽きたと言ってやれば良いのに寛容なことだ」
    「最初拝見した時は心臓が止まりそうになりました……」

     それはそうだろう。普通の馬であったとしても肝が冷える光景だがクロードはなんとそれを上空でやっているのだ。何かひとつでも間違いがあれば死にかねない。好きな人に良いところを見せたいと言う気持ちは分からなくもないがレスター諸侯同盟の次期盟主として相応しくない振る舞いなのは言うまでもなかった。
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    MAIKING何話か進めばクロヒルかつロレマリになる予定です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    2.C-(side:H) クロードは他人の喉元に入り込むのが上手い。ヒルダ自身も楽をするために他人の喉元に入り込む自覚があるのですぐに分かった。それにしても十代の男子が女子の体調を気遣うなんて珍しい。ディミトリもメルセデス辺りに頼んでいるのだろうか。そんな訳で不本意ながらヒルダは女子学生の意見をまとめクロードに伝える係をやっている。レオニーは臆さないが盟主の嫡子と言うだけで萎縮してしまう学生もいるのだ。

     一度役割を任されてしまえば期待に応えないわけにいかない。だからこそヒルダは期待をかけられることを嫌い責任というものから逃げ回っていたのだがそうなってみるとどうしても気になる同級生がいた。マリアンヌだ。とにかく何も話さずすぐに一人で厩舎へ行ってしまうので噂話だけが流れている。ダフネル家の代わりに五大諸侯に加わったやり手のエドマンド辺境伯は注目度が高い。おそらくヒルダの兄ホルストの次くらいに学生たちから注目されている。マリアンヌは彼のお眼鏡に叶って養女になったとか目ぼしい若者が彼女しかいなかったから仕方なく彼女を養女にしたとかそんな噂だ。クロードの耳にも当然入っている。
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    MAIKING何話か進めばクロヒルかつロレマリになる予定です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    4.C(side:H) マリアンヌの鉄筆をすぐに拾ってやれたことからも分かる通りローレンツは気になることがあるとつい目で追ってしまう癖があるようだ。そして自分が見られていることには無頓着らしい。断りきれずに食事を共にした女子学生はさぞ居心地が悪かっただろう、とヒルダは思う。

    「マリアンヌちゃん、何か困っていることはない?」

     先日、マリアンヌに書庫整理の手伝いをしてもらった結果全て自分で作業をする羽目になったヒルダは本格的に彼女が心配になった。マリアンヌには何か根本的な欠落がある。

    「特にないつもりです……」

     養父であるエドマンド辺境伯はマリアンヌとの関係を良好たしたいと考えているのだろう。こまめに手紙や差し入れが届く。だがローレンツから託された手紙をヒルダが渡した時マリアンヌは戸惑っていた。きっと理由を聞いても教えてくれないのだろう。無駄なことはしないに限る。身内になれない他人が踏み込むべきではない領域があるのだ。そう思ってヒルダがマリアンヌに対して引いていた線を数日前、ローレンツはあっさり越えた。
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    DONEクロヒル&ロレマリの話、ロレマリ後日談の話です。この話はこれでおしまいです。エドマンド辺境伯がらみの捏造が我ながら本当にヒッデェなと思います。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    19.sequel:L&M 紋章を持つ貴族同士の婚姻は動物の品種改良と似ている。好ましい形質が確実に顕になるよう交配していくからだ。逆に好ましくない形質を持つものは間引かれる。マリアンヌの実父は"おこり"を恐れていた。モーリスの紋章を持つ子供はそれはそれは美しく生まれてくるのだという。両親は美しい乳児を愛さずにはいられない。子供は自分の一族にかかった呪いを知らずに育つが子供の成長と時を同じくして呪いはゆっくりと親を侵蝕していく。

     "おこり"、いや"興り"が訪れると最初はぼんやりする時間が増える。言動に異常をきたしてしまえばもう死ぬまで止まらない。人格が崩れ獣性が剥き出しになっていく。人格が崩れ社会的に破綻し最後はヒトの形を保てなくなる。ヒトのまま尊厳を保ち周囲から愛されて生涯を終えたいなら早く死ぬしかない。モーリスの紋章を持つ一族は前線で武器を持たず治療に専念する修道士や消火隊など危険な仕事に従事するようになった。その結果かつて社会から根絶やしにされかけた一族は信頼を回復し地方で領主を務めるまでになった。それでもモーリスの紋章を持つ一族の生存戦略は変わらない。
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    DONE #クロロレ春のこども祭り2021重力から自由になったと思った矢先、クロードは全身に強い痛みを感じた。跳ね起きようとしてマヌエラ先生から身体を押さえられる。押さえられた拍子に視界がぐるぐると回りやがて上下が定まった。

    「落ち着きなさいクロード!貴方は飛竜から落ちたの。下敷きになったローレンツも骨折したわ。二人とも信仰魔法で治したけれど大怪我だったから落ち着くまで時間がかかるわ」

     落ち着く、とはなんだろうか。信仰魔法の主な副作用は吐き気と眩暈だ。先程マヌエラが起きあがろうとしたクロードを止めたのはせっかく治したのに目眩を自覚せず歩こうとして転倒されては無意味になってしまうからだろう。

    「ああ、それで視界がぐるぐると……それとローレンツが下敷きって??」
    「ローレンツも無事だから落ち着きなさい。目眩を起こしたまま歩くのは本当に危ないの。人によって体質の違いがあるけれど一日か二日は絶対安静よ」

    「せんせい、もうしわけないのだがおけをぼくのてもとにいただけないだろうか?」

     反対側の寝台から声変わり前の高くてかわいらしい子供の声がした。医務室の寝台には全て幕が掛かっていて互いが見えないようになっている。

    「ああ、 1753

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    MAIKING「説明できない」
    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。
    2.振り出し・下
     士官学校の朝は早い。日の出と同時に起きて身支度をし訓練をする者たちがいるからだ。金鹿の学級ではラファエル、青獅子の学級ではフェリクス、黒鷲の学級ではカスパルが皆勤賞だろうか。ローレンツも朝食前に身体を動かすようにしているがその3人のように日の出と同時には起きない。

     ローレンツは桶に汲んでおいた水で顔を洗い口を濯いだ。早く他の学生たちに紛れて外の様子を見にいかねばならない。前日の自分がきちんと用意していたのであろう制服を身につけるとローレンツは扉を開けた。私服の外套に身を包んだシルヴァンが訓練服姿のフェリクスに必死で取り繕っている所に出くわす。

    「おはよう、フェリクスくん。朝から何を揉めているのだ?」
    「煩くしてすまなかった。単にこいつに呆れていただけだ」

     そう言うと親指で赤毛の幼馴染を指差しながらフェリクスは舌打ちをした。シルヴァンは朝帰りをディミトリや先生に言わないで欲しいと頼んでいたのだろう。

    「情熱的な夜を過ごしたのかね」

     呆れたようにローレンツが言うとシルヴァンは照れ臭そうに笑った。

    「愚かすぎる。今日は初めての野営訓練だろう」

     フェリ 2066

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    7.背叛・上
     皆の初陣が終わるとクロードの記憶通りに事態が進みロナート卿の叛乱の知らせがガルグ=マクにもたらされた。養子であるアッシュへセイロス教会からは何も沙汰が下されていない。軟禁もされずアッシュの方が身の潔白を証明するため修道院の敷地内に閉じこもっている。鎮圧に英雄の遺産である雷霆まで持ち出す割に対応が一貫していない。前節と同じく金鹿の学級がセイロス騎士団の補佐を任された。クロードの記憶通りならばエーデルガルト達が鎮圧にあたっていた筈だが展開が違う。彼女はあの時、帝国に対して蜂起したロナート卿を内心では応援していたのだろうか。

     アッシュは誰とも話したくない気分の時にドゥドゥが育てた花をよく眺めている。何故クロードがそのことを知っているかと言うと温室の一角は学生に解放されていて薬草を育てているからだ。薬草は毒草でもある。他の区画に影響が出ないようクロードなりに気を使っていたがそれでもベレトはクロードが使用している一角をじっと見ていた。

    「マヌエラ先生に何か言われたのか?致死性のものは育ててないぜ」
    「その小さな白い花には毒があるのか?」

     ベレトが指さした白い花はクロード 2097

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    8.背叛・下
     雷霆を振るうカトリーヌの名を聞いた者に多少なりとも英雄の遺産や紋章の知識があったならばそれがとんだ茶番だと判るだろう。だが無謬であるセイロス教会が彼女をカサンドラではなくカトリーヌと呼ぶのならそれに従うしかない。カロン家当主としても令嬢カサンドラに死なれるよりはガルグ=マクで生きていてくれた方が良いのだろう。

     ローレンツは霧深い街道をガスパール城に向けて黙々と進んでいた。前方ではクロードとベレトとカトリーヌが何やら話している。五年前、ローレンツは帝国軍が破竹の快進撃を見せた時に正直言ってファーガス神聖王国がほぼ崩壊したと思った。今の彼らの会話を耳にしてもファーガスが凋落しているという印象が深まっていく。青獅子の学級の学生たちは士官学校に入る前に初陣を済ませている者が多いのはダスカーの悲劇以降小規模な騒乱が後を立たずにいるからだ。

     だからあの時ローレンツはフェルディナントと共にミルディン大橋に立った。ファーガスは近々自壊するだろうしパルミラとの国境を守りながら強大な帝国に抗う力が同盟にはない。ならばせめて領地と領民を守りたいと思ったからだ。霧の立ちこめる行路は人生 2090