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    何話か進めばクロヒルかつロレマリになる予定です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。

    #クロヒル
    blackHill
    #ロレマリ
    lloremali

    5.B-(side:L) セイロス騎士団の団員も士官学校の職員たちも今年度は全く例年通りに行かない、とこぼしている。ロナート卿の叛乱に続いて今度はシルヴァンの実家絡みの不祥事が起きた。

    「お前の家にもあるんだろ?」

     クロードがグロスタール家の家宝であるテュルソスの杖について軽々しく言及してくることがローレンツには耐えがたい。

    「あるが厳重に管理されている。どの名家も変わらない筈だ」
    「紋章の検査の時くらいしか触らないよね。でも怖いから私はそれでいいな」

     ヒルダの実家ゴネリル家にもフライクーゲルという英雄の遺産が伝わっている。巨大な斧だが適合していれば軽々と持ち上げられるのだという。

    「……こっちを見てるような気がするんだよな」

     クロードが珍しく同意ができる話をした。言動のほとんどが名家の者とは思えないがその感覚はローレンツにもある。きっと破裂の槍はシルヴァンの兄を見ているだろう。

     シルヴァンとヒルダは兄との関係が大きく異なるものの立場はよく似ている。二人とも国境を外敵から守る名家の出で第二子であるシルヴァンとヒルダが紋章を持って生まれた。誉れ高い兄を持つヒルダが後始末をする部隊にいてさぞシルヴァンは居心地が悪いことだろう。コナン塔へ近づくごとに彼の顔は曇り心に傷が増えていく。彼の兄マイクランが荒らした領内は酷い有様で身内の恥という言葉で表せる枠を超えていた。ローレンツはシルヴァンの隣にいてやることしか出来ない。担任であるベレトも同じようにシルヴァンと傍から離れなかった。かける言葉が見つからなくても寄り添うことはできる。

    「中に入ればもう決着がつくまで引き返せないだろう。塔に登る前にもう一度シルヴァンたちの話を聞いて装備を見直すように」

     破裂の槍がどのような武器なのか、コナン塔がどんな場所なのか。ベレトはとにかく戦闘する場所について学生たちに細かく把握させたがった。螺旋状の塔の内部は見た目よりかなり広いらしい。

    「それなら短弓は要らないか……」

     通常の弓は目前の敵を射ることが出来ないが短弓ならばそれが可能だ。だが複数の武器を持ち歩くと身軽さの点で問題が生じる。

    「前後に展開できるなら持っている意味がないのは確かだな。前衛はいつも通り僕に任せたまえ」

     続けてローレンツはシルヴァンにマイクランの体格や破裂の槍について質問した。

    「俺の方が優男だが背丈はあまり変わらない」
    「槍の指南役は二人とも同じか?破裂の槍の長さは?」
    「普通の長槍と長さは変わらないが手にした後でどう変化するかは分からない」

     ローレンツは訓練場でシルヴァンと何度も手合わせしているので普通の槍と長さが変わらないならば間合いを見誤ることはないだろう。ただし破裂の槍は英雄の遺産だ。形や長さが変わっても全く不思議ではない。

     英雄の遺産は自らの長さや形状を変えることはなかったがマイクランの肉体を蝕み魔獣へと変化させていく光景にあのクロードですら驚いている。事前の打ち合わせでは破裂の槍を奪い取るのはシルヴァンが望ましいが他の紋章保持者も機会があれば狙え、とベレトに言われていた。しかしあのおぞましい魔獣の身体に取り込まれた槍をどうやって奪えというのだろうか。ヒルダたち女子学生が先に悲鳴を上げてくれたからローレンツたち男子学生は辛うじて名誉を保っていられた。

    「ヒルダ!一旦距離を取れ!!」

     クロードの一番得意な武器は弓で兵種のこともあり彼は基本前列に出て来ない。ローレンツが彼の前衛を務めるのだが果敢に魔獣に斬り込むベレトのそばで斧を持ったまま恐怖のあまり立ちすくんでいるヒルダを庇うように前に出た。

    「弓しか持ってないクロードくんが前に出てどうするの!」
    「いいからヒルダは退いてくれ!俺が引きつけるから!」

     ローレンツは彼女が上手く立ち回れない姿を初めて見た。ヒルダは今までいつ如何なる時も自分の身を守れていたのに。そしてローレンツはクロードが打算づくではない行動に出るのを初めてみた。塔に登る前の打ち合わせで荷物を最小限にしようということになったので今日の彼は短弓を持っていない。

     ああなんだ、そういうことか。
     
    「クロード!この愚か者!ヒルダさんを連れて僕の後ろに下がれ!」

     ベレトに斬りつけられた痛みを紛らわすように魔獣と化したマイクランは暴れている。兄弟が殺し合い英雄の遺産が盗人を呪いぶつかったらただでは済まない大きさの瓦礫がいくつも飛んでくる場では己というものが剥き出しになっていく。マリアンヌは日頃卑屈な態度を崩さないが飛んでくる瓦礫を恐れず盗賊たちの刃物を避けて負傷者の元へ駆けつける姿を見れば本来の彼女がどんな人物なのか分かるしクロードが誰を大切に思っているのかも分かってしまう。

     ローレンツは飛んできた瓦礫を槍で叩き落としながら目の前で暴れる友人の兄を睨みつけた。五大諸侯に生まれた唯一の直系男子で紋章を受け継いでいても確実な未来などないのだ、とローレンツは既に知っている。将来の盟主の座は突然現れたクロードに掻っ攫われてしまった。だから彼の憤りは分からなくはない。だがそれはローレンツにとって立ち振る舞いを制御しない理由にはならなかった。

    「生き物なら必ず死ぬ!諦めるな!」

     ベレトの激励を耳にした皆はそれぞれ武器を構え直した。先ほどクロードが言っていた通り早く終わらせてやらねばならない。死に物狂いでローレンツが黒い巨躯に槍を突き立てるとマイクランだったものはようやく動くことをやめた。
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    DONEクロヒル&ロレマリの話、ロレマリ後日談の話です。この話はこれでおしまいです。エドマンド辺境伯がらみの捏造が我ながら本当にヒッデェなと思います。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    19.sequel:L&M 紋章を持つ貴族同士の婚姻は動物の品種改良と似ている。好ましい形質が確実に顕になるよう交配していくからだ。逆に好ましくない形質を持つものは間引かれる。マリアンヌの実父は"おこり"を恐れていた。モーリスの紋章を持つ子供はそれはそれは美しく生まれてくるのだという。両親は美しい乳児を愛さずにはいられない。子供は自分の一族にかかった呪いを知らずに育つが子供の成長と時を同じくして呪いはゆっくりと親を侵蝕していく。

     "おこり"、いや"興り"が訪れると最初はぼんやりする時間が増える。言動に異常をきたしてしまえばもう死ぬまで止まらない。人格が崩れ獣性が剥き出しになっていく。人格が崩れ社会的に破綻し最後はヒトの形を保てなくなる。ヒトのまま尊厳を保ち周囲から愛されて生涯を終えたいなら早く死ぬしかない。モーリスの紋章を持つ一族は前線で武器を持たず治療に専念する修道士や消火隊など危険な仕事に従事するようになった。その結果かつて社会から根絶やしにされかけた一族は信頼を回復し地方で領主を務めるまでになった。それでもモーリスの紋章を持つ一族の生存戦略は変わらない。
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    MAIKINGロレマリに続きようやくクロヒルの方もちょっとそれっぽくなってきたかもしれません。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    7.B(side:L) ローレンツが厩舎の管理をマリアンヌと共に担当していた時に上空警備を担当していたクロードとヒルダが戻ってきた。金鹿の学級で軽業師の真似事が流行ったことがある。ナイフ投げも軽業もレオニーが飛び抜けて上手いのだがクロードも負けていない。下馬の際に左足を鎧から抜き忘れた人の真似、というのがクロードの得意技だ。羽ばたきやペガサスの嗎に混ざってヒルダが楽しそうに笑っている声が聞こえる。

    「また同じことを繰り返して……ヒルダさんも飽きたと言ってやれば良いのに寛容なことだ」
    「最初拝見した時は心臓が止まりそうになりました……」

     それはそうだろう。普通の馬であったとしても肝が冷える光景だがクロードはなんとそれを上空でやっているのだ。何かひとつでも間違いがあれば死にかねない。好きな人に良いところを見せたいと言う気持ちは分からなくもないがレスター諸侯同盟の次期盟主として相応しくない振る舞いなのは言うまでもなかった。
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    MAIKING何話か進めばクロヒルかつロレマリになる予定です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    2.C-(side:H) クロードは他人の喉元に入り込むのが上手い。ヒルダ自身も楽をするために他人の喉元に入り込む自覚があるのですぐに分かった。それにしても十代の男子が女子の体調を気遣うなんて珍しい。ディミトリもメルセデス辺りに頼んでいるのだろうか。そんな訳で不本意ながらヒルダは女子学生の意見をまとめクロードに伝える係をやっている。レオニーは臆さないが盟主の嫡子と言うだけで萎縮してしまう学生もいるのだ。

     一度役割を任されてしまえば期待に応えないわけにいかない。だからこそヒルダは期待をかけられることを嫌い責任というものから逃げ回っていたのだがそうなってみるとどうしても気になる同級生がいた。マリアンヌだ。とにかく何も話さずすぐに一人で厩舎へ行ってしまうので噂話だけが流れている。ダフネル家の代わりに五大諸侯に加わったやり手のエドマンド辺境伯は注目度が高い。おそらくヒルダの兄ホルストの次くらいに学生たちから注目されている。マリアンヌは彼のお眼鏡に叶って養女になったとか目ぼしい若者が彼女しかいなかったから仕方なく彼女を養女にしたとかそんな噂だ。クロードの耳にも当然入っている。
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    MAIKING何話か進めばクロヒルかつロレマリになる予定です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    4.C(side:H) マリアンヌの鉄筆をすぐに拾ってやれたことからも分かる通りローレンツは気になることがあるとつい目で追ってしまう癖があるようだ。そして自分が見られていることには無頓着らしい。断りきれずに食事を共にした女子学生はさぞ居心地が悪かっただろう、とヒルダは思う。

    「マリアンヌちゃん、何か困っていることはない?」

     先日、マリアンヌに書庫整理の手伝いをしてもらった結果全て自分で作業をする羽目になったヒルダは本格的に彼女が心配になった。マリアンヌには何か根本的な欠落がある。

    「特にないつもりです……」

     養父であるエドマンド辺境伯はマリアンヌとの関係を良好たしたいと考えているのだろう。こまめに手紙や差し入れが届く。だがローレンツから託された手紙をヒルダが渡した時マリアンヌは戸惑っていた。きっと理由を聞いても教えてくれないのだろう。無駄なことはしないに限る。身内になれない他人が踏み込むべきではない領域があるのだ。そう思ってヒルダがマリアンヌに対して引いていた線を数日前、ローレンツはあっさり越えた。
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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    3.遭遇・上
     三学級合同の野営訓練が始まった。全ての学生は必ず野営に使う天幕や毛布など資材を運ぶ班、食糧や武器等を運ぶ班、歩兵の班のどれかに入りまずは一人も脱落することなく全員が目的地まで指定された時間帯に到達することを目指す。担当する荷の種類によって進軍速度が変わっていくので編成次第では取り残される班が出てくる。

    「隊列が前後に伸びすぎないように注意しないといけないのか……」
    「レオニーさん、僕たちのこと置いていかないでくださいね」

     ラファエルと共に天幕を運ぶイグナーツ、ローレンツと共に武器を運ぶレオニーはクロードの見立てが甘かったせいでミルディンで戦死している。まだ髪を伸ばしていないレオニー、まだ髪が少し長めなイグナーツの幼気な姿を見てクロードの心は勝手に傷んだ。

    「もう一度皆に言っておくが一番乗りを競う訓練じゃあないからな」

     出発前クロードは念を押したが記憶通りそれぞれの班は持ち運ばねばならない荷の大きさが理由で進軍速度の違いが生じてしまった。身軽な歩兵がかなり先の地点まで到達し大荷物を抱える資材班との距離は開きつつある。

    「ヒルダさん、早すぎる!」
    「えー、でも 2073

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    4.遭遇・下
     犠牲者を一人も出すことなく野営訓練を終えて修道院に戻ることが出来た。ローレンツのほぼ記憶通りではあるが異なる点がある。ベレトが金鹿の学級の担任になったのだ。正式に採用された彼は既に士官学校から学生の資料を貰っている。だがグロンダーズで行われる模擬戦を控えたベレトはここ数日、放課後になると学級の皆に話を聞くため修道院の敷地内を走り回っていた。

     ローレンツはあの時、模造剣を配ろうとしたのは何故なのかとベレトに問われたが予め野盗達に襲われているのを知っていたから、とは言えない。言えば狂人扱いされるだろう。

    「歩兵の足が早すぎたからだ。補給部隊が本体と分断されたら敵に襲われやすくなる」

     食糧がなければ兵たちは戦えない。敵軍を撤退させるため戦端を開く前に物資の集積所を襲って物資を奪ったり焼き払ってしまうのは定石のひとつだ。ローレンツの言葉聞いたベレトは首を縦に振った。

    「それで足止めして予備の武器を渡したのか。装備をどうするかは本当に難しいんだ。あの場合は結果として合っていたな。良い判断をした」
    「ありがとう先生。そう言ってもらえると霧が晴れたような気分になるよ」

    2068

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    15.鷲獅子戦・上
     フレンが金鹿の学級に入った。クロードにとっては謎を探る機会が増えたことになる。彼女は教室の片隅に座ってにこにこと授業を聞いてはいるが盗賊と戦闘した際の身のこなしから察するに只者ではない。兄であるセテスから槍の手解きを受けたと話しているがそういう次元は超えていた。

    「鷲獅子戦にはフレンも出撃してもらう」

     やたら大きな紙を持ったベレトが箱を乗せた教壇でそう告げると教室は歓声に包まれた。これで別働隊にも回復役をつけられることになる。治療の手間を気にせず攻撃に回せるのは本当にありがたい。今まで金鹿の学級には回復役がマリアンヌしかいなかった。負担が減ったマリアンヌの様子をクロードが横目で伺うと後れ毛を必死で編み目に押し込んでいる。安心した拍子に髪の毛を思いっきり掻き上げて編み込みを崩してしまったらしい。彼女もまたクロードと同じく秘密を抱える者だ。二重の意味で仲間が増えたことになる。五年前のクロードは周りの学生に興味は持たず大きな謎だけに目を向けていたからマリアンヌのことも流していた。どこに世界の謎を解く手がかりがあるか分かりはしないのに勿体ない。
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