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    111strokes111

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    ヒルダに色々と見透かされる回です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。

    #クロヒル
    blackHill
    #ロレマリ
    lloremali

    8.B(side:H) 季節が進むのは早いものでそろそろ冬至をむかえつつあった。距離は離れているものの共に気候が温暖で冬にあまり雪の降らない地方出身であるヒルダとクロードは襟巻や手袋が手放せないがファーガス出身の学生たちは標高の高いガルグ=マクで冬を迎えているのにまだ薄着で修道院内を闊歩している。時期が時期だけに士官学校の学生たちの話題は自然と白鷺杯や舞踏会のことが中心になりつつあった。金鹿の学級はクロードをはじめとして舞踊に興味がない者が多いが前節ルミール村で地獄のような光景を目にしたこともあり皆、気分を変えたがっている。ヒルダのように楽しみにしている者も舞踏会という行事に対し拒否感を示す者もいるが考えが違う者同士ありやなしやと語り合い盛り上がることで必死に前節の恐ろしい記憶に抗っていた。

     そんなある日のことベレトから白鷺杯の代表はマリアンヌ、その指導役はローレンツにするという発表があった。ベレト自身も傭兵上がりのため舞踊が得意ではない。誰かに任せようにも金鹿の学級は平民が多く宮廷舞踊の心得があるのはローレンツとヒルダそれにリシテアだけなので指導役は妥当な人選と言えるだろう。

     どうしてヒルダではないのか、とマリアンヌは嘆いていたが指導役にも学級代表にもなる可能性があったヒルダとしてはマリアンヌの足の早さとローレンツの真面目さに感謝するしかない。踊り子は再行動したい者の元へすぐに駆けつけねばならない兵種だからだ。

     白鷺杯を理由にずっとマリアンヌにくっついていられるせいか近ごろのローレンツはとても幸せそうにしている。配偶者探しと称して学内にいるありとあらゆる領主の娘に声をかけていた頃のことが嘘のようだ。しかしたまにベレトに呼び出されクロードと三人で食事をしている時の態度は対照的であの張りのある声でずっとクロードの礼儀作法を注意し続けるのでとてもうるさい。

     クロードはその度にローレンツを自分の母親より煩い、マリアンヌはあんな奴に指導されて大丈夫なのか?と大袈裟に嘆くが本当に不思議なくらいローレンツとマリアンヌは話さなくなった。無理に会話を続けようとして周囲を凍り付かせるようなことが減り今もクロードとヒルダが熱々のゴーティエチーズグラタンを冷ましながら食べている食卓の一列向こうで二人静かに何も語らず共に昼食をとっている。どうやら二人とも沈黙が苦ではないらしい。言葉を尽くして朗々と自論を語るのがローレンツの本質だと思っていたヒルダはその激しい変化に驚いた。普通なら口数が減ることを激しいと表現しない。だがヒルダはその態度にローレンツの強烈な意志を感じるのだ。

    「そんなに気になるならこっそり二人の様子を見に行けば?」

     ヒルダのいる席からは見えないが向かいに座っているクロードの席からはマリアンヌとローレンツの姿がよく見えたらしい。繰り返しになるがヒルダの席からは見えないので想像するしかない。無駄話をせずに昼食を終えた二人は今ごろクロードが見つけた人目につかない穴場で練習に励んでいることだろう。他人の前で体を動かすことに強い抵抗感があるマリアンヌの為に人目につかないところを教えてほしいとローレンツはクロードに頭を下げている。それを知った上でヒルダはクロードに問うていた。

    「いやそれはどうだろう……流石にマリアンヌに悪いなと……」

     クロードはクロードなりにマリアンヌの好ましい部分や欠落そして大きな秘密があることに気付いている。男らしく少し太めの眉と眉の間に皺が刻まれ顔が悩ましげになった。当然、好奇心は身をもたげているが人として守らねばならない一線というものがある。

    「信頼するしかない時ってあると思うのよね」

     猜疑心の塊と自称するクロードの緑の瞳がヒルダを見つめた。珍しく内側に閉じ込めた迷いが現れているような気がする。このままクロードに話を続けさせても良いのだろうか。

    「踊りなあ……俺もリーガン家に入る時に練習したが慣れてなかったせいかあんまり得意じゃないんだよな。自分の足がもつれるだけならいいんだがお相手の足を踏みつけちまう」

     クロードはリーガン家に連なる騎士の家の出なのかもしれない。それなら舞踊よりも武芸優先だろうしクロードに武芸の師匠がいるのも納得だ。

    「ふーん軽業は得意なのにねえ……でもレオニーちゃんも踊りは苦手なんだっけ」

     だがあの身軽さだ。彼女は村育ちだから慣れていないだけで宮廷式の舞踊に親しみを持って育っていればさぞ素晴らしい踊り手になったことだろう。

    「なんだか集中出来ないんだよな」
    「そんなこと言って慣れる気がないの丸分かりだよ!」

     先日、クロードは日頃出さない本気を出せとヒルダを焚き付けた。しかしクロードの方こそ本気を出していない。そんな態度を取っていては宮廷式の舞踊などよりもっと大事なものがあるのだと顔に書いて暮らしているのと同じだ。ヒルダはクロードが隠している大事なものが何なのか知る日が来るのだろうか。それはヒルダにだけ告げてくれるのだろうか?それとも皆と一緒に知ることになるのだろうか?
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    MAIKINGロレマリに続きようやくクロヒルの方もちょっとそれっぽくなってきたかもしれません。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    7.B(side:L) ローレンツが厩舎の管理をマリアンヌと共に担当していた時に上空警備を担当していたクロードとヒルダが戻ってきた。金鹿の学級で軽業師の真似事が流行ったことがある。ナイフ投げも軽業もレオニーが飛び抜けて上手いのだがクロードも負けていない。下馬の際に左足を鎧から抜き忘れた人の真似、というのがクロードの得意技だ。羽ばたきやペガサスの嗎に混ざってヒルダが楽しそうに笑っている声が聞こえる。

    「また同じことを繰り返して……ヒルダさんも飽きたと言ってやれば良いのに寛容なことだ」
    「最初拝見した時は心臓が止まりそうになりました……」

     それはそうだろう。普通の馬であったとしても肝が冷える光景だがクロードはなんとそれを上空でやっているのだ。何かひとつでも間違いがあれば死にかねない。好きな人に良いところを見せたいと言う気持ちは分からなくもないがレスター諸侯同盟の次期盟主として相応しくない振る舞いなのは言うまでもなかった。
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    MAIKING何話か進めばクロヒルかつロレマリになる予定です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    4.C(side:H) マリアンヌの鉄筆をすぐに拾ってやれたことからも分かる通りローレンツは気になることがあるとつい目で追ってしまう癖があるようだ。そして自分が見られていることには無頓着らしい。断りきれずに食事を共にした女子学生はさぞ居心地が悪かっただろう、とヒルダは思う。

    「マリアンヌちゃん、何か困っていることはない?」

     先日、マリアンヌに書庫整理の手伝いをしてもらった結果全て自分で作業をする羽目になったヒルダは本格的に彼女が心配になった。マリアンヌには何か根本的な欠落がある。

    「特にないつもりです……」

     養父であるエドマンド辺境伯はマリアンヌとの関係を良好たしたいと考えているのだろう。こまめに手紙や差し入れが届く。だがローレンツから託された手紙をヒルダが渡した時マリアンヌは戸惑っていた。きっと理由を聞いても教えてくれないのだろう。無駄なことはしないに限る。身内になれない他人が踏み込むべきではない領域があるのだ。そう思ってヒルダがマリアンヌに対して引いていた線を数日前、ローレンツはあっさり越えた。
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    MAIKING何話か進めばクロヒルかつロレマリになる予定です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    2.C-(side:H) クロードは他人の喉元に入り込むのが上手い。ヒルダ自身も楽をするために他人の喉元に入り込む自覚があるのですぐに分かった。それにしても十代の男子が女子の体調を気遣うなんて珍しい。ディミトリもメルセデス辺りに頼んでいるのだろうか。そんな訳で不本意ながらヒルダは女子学生の意見をまとめクロードに伝える係をやっている。レオニーは臆さないが盟主の嫡子と言うだけで萎縮してしまう学生もいるのだ。

     一度役割を任されてしまえば期待に応えないわけにいかない。だからこそヒルダは期待をかけられることを嫌い責任というものから逃げ回っていたのだがそうなってみるとどうしても気になる同級生がいた。マリアンヌだ。とにかく何も話さずすぐに一人で厩舎へ行ってしまうので噂話だけが流れている。ダフネル家の代わりに五大諸侯に加わったやり手のエドマンド辺境伯は注目度が高い。おそらくヒルダの兄ホルストの次くらいに学生たちから注目されている。マリアンヌは彼のお眼鏡に叶って養女になったとか目ぼしい若者が彼女しかいなかったから仕方なく彼女を養女にしたとかそんな噂だ。クロードの耳にも当然入っている。
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    111strokes111

    DONEクロヒル&ロレマリの話、ロレマリ後日談の話です。この話はこれでおしまいです。エドマンド辺境伯がらみの捏造が我ながら本当にヒッデェなと思います。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    19.sequel:L&M 紋章を持つ貴族同士の婚姻は動物の品種改良と似ている。好ましい形質が確実に顕になるよう交配していくからだ。逆に好ましくない形質を持つものは間引かれる。マリアンヌの実父は"おこり"を恐れていた。モーリスの紋章を持つ子供はそれはそれは美しく生まれてくるのだという。両親は美しい乳児を愛さずにはいられない。子供は自分の一族にかかった呪いを知らずに育つが子供の成長と時を同じくして呪いはゆっくりと親を侵蝕していく。

     "おこり"、いや"興り"が訪れると最初はぼんやりする時間が増える。言動に異常をきたしてしまえばもう死ぬまで止まらない。人格が崩れ獣性が剥き出しになっていく。人格が崩れ社会的に破綻し最後はヒトの形を保てなくなる。ヒトのまま尊厳を保ち周囲から愛されて生涯を終えたいなら早く死ぬしかない。モーリスの紋章を持つ一族は前線で武器を持たず治療に専念する修道士や消火隊など危険な仕事に従事するようになった。その結果かつて社会から根絶やしにされかけた一族は信頼を回復し地方で領主を務めるまでになった。それでもモーリスの紋章を持つ一族の生存戦略は変わらない。
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    MAIKING「説明できない」
    青ロレ赤クロの話です。
    6.初戦・下

     クロードから自分たちを襲った盗賊の討伐が今節の課題だと告げられた皆は初陣だと言って沸き立っていた。金鹿の学級は騎士を目指す平民が目立つ学級で入学以前に領主の嫡子として盗賊討伐を体験している者はクロードとローレンツしかいないらしい。クロードはローレンツの印象よりはるかに慎重で毎日先行したセイロス騎士団がどの方面へ展開していったのか細かく記録をつけ皆に知らせていた。セイロス騎士団に追い込んでもらえるとはいえどこで戦うのかが気になっていたらしい。

     出撃当日、支度を整え大広間で待つ皆のところへベレトがやってきた時にはローレンツたちはどこで戦うのか既に分かっていた。

    「騎士団が敵を追い詰めたそうだね。場所はザナド……赤き谷と呼ばれている」

     そう言えばクロードはザナドが候補に上がって以来やたら彼の地についた異名の由来を気にしていた。赤土の土地なのか赤い花でも咲き乱れているのか。土地の異名や古名にはかつてそこで何があったのかが表されていることが多い。土地の環境によっては毒消しが必要になる場合もある。だが先行した騎士団によると特殊な条件は何もない、とのことだった。初陣の者た 2081

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    7.背叛・上
     皆の初陣が終わるとクロードの記憶通りに事態が進みロナート卿の叛乱の知らせがガルグ=マクにもたらされた。養子であるアッシュへセイロス教会からは何も沙汰が下されていない。軟禁もされずアッシュの方が身の潔白を証明するため修道院の敷地内に閉じこもっている。鎮圧に英雄の遺産である雷霆まで持ち出す割に対応が一貫していない。前節と同じく金鹿の学級がセイロス騎士団の補佐を任された。クロードの記憶通りならばエーデルガルト達が鎮圧にあたっていた筈だが展開が違う。彼女はあの時、帝国に対して蜂起したロナート卿を内心では応援していたのだろうか。

     アッシュは誰とも話したくない気分の時にドゥドゥが育てた花をよく眺めている。何故クロードがそのことを知っているかと言うと温室の一角は学生に解放されていて薬草を育てているからだ。薬草は毒草でもある。他の区画に影響が出ないようクロードなりに気を使っていたがそれでもベレトはクロードが使用している一角をじっと見ていた。

    「マヌエラ先生に何か言われたのか?致死性のものは育ててないぜ」
    「その小さな白い花には毒があるのか?」

     ベレトが指さした白い花はクロード 2097

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    9.典儀・上

     情報には出元と行き先がある。それを見極めずに判断を下すと間違いが起きる。前節、カトリーヌがロナート卿の所持品から見つけた大司教レアの暗殺計画に関する密書は様々な波紋を読んだ。真偽の程は定かではないが対応せねばならない。

     謁見の間に呼び出されたベレトから今節の課題を聞いたクロードは教会があの密書をどう判断したのか悟った。今回も彼の記憶と同じく何者かが教会を混乱させる為に作成した偽物であると判断したのだ。そうでなければ士官学校の学生に警備や見回りを担当させないだろう。だがクロードにとっては丁度良かった。賊の狙いが何処であるのか確かめる為という大義名分を得て修道院の敷地内を直接、自由に見て回れる。賊が聖廟の中で何かを探し、奪いに来たがそこでベレスが天帝の剣を手に取り賊を撃退したことをクロードは覚えているのだがだからといって日頃入れない聖廟を直接探る機会を逃したくはなかった。それにロナート卿の叛乱の時と同じくまたクロードたちが当事者になっている。詳しく調査しておいて損はないだろう。

     ガルグ=マクにはフォドラの外からやってきた住人がクロード以外にも存在する。自然と祖先を 2082

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    11.末路・上
     クロードは先日、あんなことをしでかしておきながら怯えさせてすまない、とローレンツから逆に謝られてしまった。あれから何度か時間をとって話し合いをしてみたが互いの知る未来にかなり大きな食い違いがあることが分かりその後はおかしな雰囲気にはなっていない。

     細かな違いはあれどクロードの祖父が体調を崩し盟主代理として円卓会議に出席すること、それとマイクランが破裂の槍を盗み出すことは共通していた。

    「俺はマイクランが討ち取られたという話しか知らない」

     クロードの知る過去でもローレンツの知る過去でも級長が不在の可能性があるなら、と言うことで金鹿の学級はコナン塔へ行かなかった。

    「そちらでも箝口令が敷かれていたのか」

     教会は何かを隠している、というのが元からのクロードの主張なので教会の態度に矛盾はない。ベレトから馬の面倒を見るように命じられた二人はそれぞれ別の馬に新しい水や飼い葉を与え体を拭き尻尾の毛に櫛をかけ絡まっている塵を取り除いてやっている。いななきや馬が立てる物音が話し声を隠してくれた。今後の展開が色々と気になるところだが今回も祖父ゴドフロアの具合が悪くなるなら 2156