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    ベルジャン+ジュリオ(2009/07/20)

    #ラキファン
    lachrymalFan

    トッピングはお好みでトッピングはお好みで











    「うまい! うまーい! お、こっちもウマイぞ! っかー、あのジェラテリア当たりだったなジュリオ!」
    「はい、ジャンさん。……あ、こっちもうまい、です」

    バニラにイチゴ、チョコレート、ミント、レモンにアーモンドにヘーゼルナッツ。甘い香りの、色とりどりのアイスクリーム。手のひらサイズのカップに入って、テーブル中、所狭しと並んでいる。
    CR:5のボスに就任して三ヶ月ほどたったある日の昼下がり。
    偉大なるコーサ・ノストラのカポである俺は、マッドドッグの異名を持つ幹部ジュリオ・ディ・ボンドーネと共に――アイスクリームの食べ比べ、なんてことをやっていた。

    「そっちはイチゴか? 一口くれよ。あ、次はチョコレートアイスにしような、ジュリオ」
    「はい」

    ボスになる前も、なったあとも――まあプライベートでやってることなんて同じようなもん。
    様にはならないかも知れねぇけど……、仕方ないよな。
    蒸し暑い夏の日、甘ぁーいアイスクリームを心行くまで食いたいって思うのは人の常ってもんだ。

    ジュリオとシマの見回りに行った際、帰り道に適当なジェラテリアで大量のアイスクリームを買い込んでくるのは、俺達の通例になっていた。カウンターに並んだフレーバーを端から全部注文して、二人でアイスクリームが溶けないうちにと車をかっ飛ばしておうちに帰る。CR:5の本拠地であるこの屋敷に戻ったら、堅苦しいスーツをソファに放り出して一日を頑張ったボスと幹部のセルフご褒美タイムだ。
    ボスの威厳を十二分に主張する重厚な内装の部屋の中で、ファンシーなカップが異彩を放っているのをものともせずに、俺達は口溶けなめらかな甘味に夢中になっていた。
    ルキーノはシノギの店が忙しいらしく、顔を出していない。イヴァンの野郎は 『見てるだけで胸焼けがするぜ』 なんて言い放って出て行った。あの野郎はきっと、身長よりも大きなぷるぷるのプティングにダイブしてみたいとか、風呂いっぱいに作ったジェリーの中で泳いでみたいとか、そんな夢いっぱいのカワイイ野望も理解できねぇんだろうな。可愛かった子供時代の夢や希望 を、イヴァン君はいったいどこに落としてきちまったのか――なんてふざけたことを一瞬考えて、俺はすぐに首を振った。だってイヴァンだ。生まれた時からサイコーに可愛くねぇクソガキだったに決まってる。
    ちなみにベルナルドはこの部屋から扉を一枚挟んだ向こう、電話の王様の玉座でお仕事中。自分好みの内装を施したプライベートルームではなく、ヤクザのお部屋でございますとまくし立てているようなこの部屋でカップの蓋を開いたのは、ベルナルドのせい。俺達は、街で耳にした気になるネタをベルナルドに確認しようと、呼出し音が鳴り止むのを待っている。

    ……まぁ、一刻も早く食べたくて我慢できなかった、ってのもちょっとはあるけど。 

    俺は甘い香りに誘われるままにカップにスプーンを突きたてて、勢い良く口へ運んだ。濃厚なバニラの香りがふわりと鼻腔に広がって、思わずへらりと笑っちまう。
    隣のジュリオが、無邪気な笑顔を並べて自分のスプーンを口に運んだ。
    こちらは大人になっても子供のきらめきを失わない。色とりどりのカップと、追加で用意させた大量のトッピングを見つめながら澄んだ眼を微笑ませている。優しい笑顔はまるで王子様だ。顔だけ見れば完璧なんだが……
    「ジュリオ、唇。――ついてるぞ」
    不器用な王子様は、綺麗な唇の端にバニラアイスをちょこんとつけていた。苦笑しながら親指の腹で拭ってやると、恥ずかしそうに頬を染める。
    「ありがとうございます……ジャン、さん」
    「男前が台無しだぜ?」
    ウィンクをひとつ飛ばすと、ジュリオはきょとんと首を傾げた。絶対わかって無いな、こりゃ。
    そして前言撤回。台無しになるどころか母性本能刺激しまくりでこいつの魅力は5割増しだ。俺が女だったらアイスじゃなくて私を食べてとばかりにメロメロになっていたかもしれない。にこりと笑ったジュリオの、全開の笑顔に思わず釣られる。うわ、なんだ? 意味も無く恥ずかしい。

    まっすぐすぎる仔犬の瞳に、むずむずと尻の座りが悪くなって俺は視線を彷徨わせた。電話の王様はまだ謁見中か? ジュリオの向こうの扉を見やって、ふとベルの音が途絶えていたことに気づく。
    果たして、数秒のうちにガチャリと音を立てて扉が開き、現れたのはいささかくたびれた様子のベルナルド。
    「ハァイ、ダーリン。お仕事はもう終わり?」
    助かった、とばかりにひらひらと手を振ると、ベルナルドは苦笑しながらこちらに歩いてきた。
    電話の向こうには姿なんて見えないだろうに、皺一つないスーツをピシリと着こなしている。テールグリーンのストライプが鮮やかなネクタイを、こいつにしてはいささか乱暴に緩めながら 「お待たせ、ハニー」 と手を振り返した。あのネクタイ、俺がつけても似あわねぇんだろうな。なにが違うんだ――顔か? 顔なのか? 畜生、中身はただのエロオヤジの癖しやがって。
    夜中にこっそりとあいつの愛しの前髪ちゃんを十本ばかり抜いてやると理不尽に誓いながら、俺はテーブルに並んだアイスクリームを見せびらかす様に両手を広げる。

    「ラッキードッグとマッドドッグのご機嫌なアイスクリーム・パーティにようこそ、青リンゴ色のウサギさん。一口食べれば疲れも吹っ飛ぶ、最高にクールなオヤツはいかが?」
    「お招き頂き光栄の致り……って、俺はウサギさんてガラかい?」
    「ご不満かよダーリン? ちなみに、このパーティは肉食獣お断りだぜ? だからほら、真っ赤な髦のライオンさんも、ワンワン元気な銀色の狼さんもいねぇだろ?」
    「おいおい、犬って草食だったか?」
    「知らなかったのか? ラッキードッグもマッドドッグも、甘ぁいドルチェがあれば満足なカワイイワンちゃんだったんだぜ? ――なぁ、ジュリオ?」

    いつものように適当な軽口を叩いて、今日は少々苦笑気味のベルナルドを笑いながら、俺はジュリオの肩を抱き寄せる。甘いもの、好きだよな。ジュリオは一瞬驚いたかのような表情を浮かべたが、すぐにいつもの優しげな顔で、はい、と頷いた。気づけばその手元のカップはすっかり空になっていて、ジュリオは積み上げられた空きカップの山にすとんと重ねる。
    そろそろ十段目に届きそうなカップの山を見て、ベルナルドは感嘆というか、むしろ呆れたように声を上げた。
    「よく入るな」
    食の細いベルナルドからしてみると驚異的な量らしい。
    「若いからな」
    意地悪にウィンクを飛ばして、隣のソファを顎で示す。
    それで? ウサギさんはパーティにはご出席? ちなみにチョコレートは俺とジュリオで予約済みだからやらねぇぞ。
    尋ねながらも、机の上のカップの中から、ベルナルドの好きそうなフレーバーを探す。濃厚でコクのあるバニラやミルクのアイスクリームよりも、爽やかなフルーツのソルベのほうがいい。ベリーやピーチは少し甘すぎる。レモンやオレンジもいいけれど……
    「本日のおススメは、フレッシュライムのシャーベットでございマス。果汁を絞って爽やかに。トッピングはお好みで好きなものをどーぞ」
    「これはこれは。ボスのおススメなら、是非いただかないとね」
    これだ、と選んで差し出したカップを、ベルナルドは笑いながら受け取った。促されたソファに腰を下ろそうとして、不意に思い出したようにジュリオを振り向く。

    「そうだ、ジュリオ。三番街にいるお前の部下から、電話が入った。緊急事態、ってわけじゃないが、お前の判断を仰ぎたいんだそうだ」
    「今、ですか?」
    「こちらから掛け直すと言って、一度切ってある。後ででも構わないが、出来れば早めに」

    ジュリオは困ったような眼で俺のほうを見た。健気なくらい忠実なこの王子様は、いつでも行動の基準を俺に置く。部下からの連絡――ということはCR:5の仕事で、つまりはCR:5のボスである俺のための仕事。だが俺とのアイスクリーム・パーティを抜け出してよいものか。迷っているのはそんなところだろう。
    「待ってるんだろ、行ってこいよ」
    ただしアイスクリームが溶けちまわないよう、さっさと戻ってこいよ。促すと、ジュリオはふわりと笑って頷く。電話のあるベルナルドの部屋に向かっていく背中を見送りながら、相変わらずだな、とベルナルドが苦笑した。その表情がいつになく重い気がして、俺は首を傾げる。
    「元気がねーぜ、ダーリン? お仕事が大変なのかしら?」
    「電話の配線も、あれだけ集まると放射熱が半端じゃなくてね――暑さにバテ気味なだけだよ」
    ……ああ、確かに。
    デイバンホテルの最上階、ベルナルドの仕事部屋の、床を覆いつくす勢いだった大量の配線を思い出す。黒い蛇のようにうねり、絡み合ったコードは熱を持って部屋を温めていた。
    肌寒い風の季節ですら、こもった熱気を顔に浴びて驚いたのを覚えている。
    この暑い季節に、あの部屋に一日こもっていたら……
    「干からびて乾燥ベルナルドになっちまう前でよかったぜダーリン。だったらアイスは最高の差し入れだろ。少しは休憩も大切だぜ」
    「ありがとう、ハニー。まったく、乾燥する前に醗酵しそうな蒸し暑さだったよ……」
    泣く子も黙る筆頭幹部、ドン・オルトラーニが人知れず仕事場で醗酵食品化しているというのはご遠慮願いたい。ていうか、だったらその暑そーな三つ揃えのスーツを脱げばいいんじゃないか? ついでに髪の毛もまとめてみたら? 見るからに暑そうなんですけどと言ってみると、ベルナルドは肩を竦める。コーサ・ノストラの幹部たるもの、身だしなみも大切なんだそうだ。
    ていうことは、もしかして俺もか? 人前に出るときなら仕方がねぇが、一人部屋で仕事をしている間くらいは許して欲しい。
    ちなみに、髪の毛についての返事はなかった。ルキーノだって後ろ髪は括っているし、ちょっと纏めてもみっともなくなんてならないと思うんだが。やっぱり毛根が大事なんだろうか。汗疹でも出来ないように気をつけろよ、ダーリン?
    ベルナルドはソファに身を沈めて、つんつんと小さなスプーンでアイスクリームをつっつく。若干不審そうなその顔は、ダウンタウンの安い店で買ってきた、粗末なカップへの不信感か。まるで動物が食えるモノかそうでないか匂いを嗅いで警戒している姿みたいだ。
    「いいから食ってみろって。ここ、ほんとに旨いぜ」
    腹を壊したりはしねぇよ、と、俺は自分のカップのアイスを掬う。話している間に少し溶けてしまったバニラアイスが、舌先で甘く冷たく広がった。やっぱり旨い。
    それを見たベルナルドは頷いてにやりと笑い――

    にやり?

    なんでそこで、そういうやらしーい笑顔が浮かぶんでしょうかね?
    疑問に思った時には既に遅く。
    「っ、んむ、んっ……!?」
    寸前までの疲れたオヤジの気だるさなど一切感じさせない、すばやい動きのベルナルドに、俺は唇ごとアイスを奪われていた。
    「本当だ……旨い、な……」
    「んんっ!」
    口中のアイスを全て奪われ、いつもベッドの中で聞かされるような、甘く掠れた声で囁かれる。エロオヤジも大概にしろ――苦情を言おうとした俺の口に、ベルナルドはすばやくスプーンでアイスを運ぶ。直後、もう一度舌先が忍び込んできた。
    今度は爽やかな酸味のある、ライムの香り。やっぱり俺の選択は正しかった。ほどよい酸味と甘さが、暑さを吹き飛ばして頭をすっきりとさせてくれる。これならベルナルドも気に入るだろう。だが、その気使いを無に帰すようなベルナルドの舌使いが、頭の芯を痺れさせる。
    冷たいアイスクリームを食べているはずなのに、いつの間にか口の中も、顔も、頭も熱くなっていて――
    「――っ、ナニしやがるエロオヤジ!」
    このままじっとしてたら、やばい。確信が走って、俺は無理やりベルナルドの身体をひっぺがす。逆らわずに離れた顔にがるると歯を剥くけれど、しれっとした顔で口の端に残ったアイスを舐め取られて、脱力する。
    ベルナルドは俺に赤い舌先を見せ付けるように、ゆっくりと笑った。その顔の、まあいやらしいこと。

    「トッピングはお好みで、って言ったのはハニーだろう?」
    「俺もトッピング材かよ」
    「最上級の、ね。最高に旨い。なんならお前も試してみるかい、ジャン?」
    「トッピングはダーリンでかしら?」
    「勿論。嫌いじゃないだろ?」

    しれっと言ってのける自信はドコから?
    それも顔かね。畜生、この男前。
    俺は肩を竦めて、余裕ぶって笑う。肉を食う獣の眼をしたベルナルド。ウサギさんが肉食だなんて聞いてない。呑まれた顔をしていたら、あっという間に喰われちまいそうで。
    電話をしにいったジュリオも、いつ戻ってくるかわからない。
    さすがに、戻ってきた時には美味しく頂かれていました――なんて事態は遠慮したかった。

    「――止めとくわ。アイス食うつもりで、逆に食われちまいそうだ。……お、お帰りジュリオ」

    そしてまさに言った瞬間、こちらへ戻ってくるジュリオを見つけた。ベルナルドもその気配に気づいて、さっとエロい表情をしまいこむ。
    ワオ、ナイスタイミング。

    「もういいのか、ジュリオ?」
    「はい。必要な指示は、出してきました」

    ベルナルドの肩越しに手を振ってやると、ジュリオははにかんだ笑みを浮かべて早足にやってきた。
    王子様はその綺麗な顔を、心底嬉しそうに弾ませている。もしこいつに尻尾があったら、絶対に千切れるくらい振りまくっているんだろうなって笑顔のジュリオ。CR:5の幹部の一人、しかもマッドドッグなんて物騒なあだ名を付けられている男だなんて、この笑顔を見た奴はきっと誰も信じないだろう。そのくらい純粋な笑顔だった。
    なんというか、かわいい。
    うん、和む。
    特に、誰かさんの純粋って言葉の対極にあるような笑顔を見た後だと、余計?
    心が洗われるようだぜ、とその誰かさんを見て眼を眇めると、涼しい顔して笑っていやがった。ファッキン。ジュリオの爪の垢でも呑んで生まれなおして来い。

    「あの……ジャン、さん」
    「ん? お、おう、どうしたジュリオ?」

    ベルナルドに気を取られていた俺は、ジュリオが隣の席に座りなおしていたことに気づかなかった。おずおずと柔らかな声をかけられて、思わず声が上擦る。明らかに挙動不審な男だったが、ジュリオはまるで何事もなかったように、言葉を続ける。その手の中には、いつの間にか手にとったアイスのカップがあった。両手で、胸の前に大事そうに持っている。
    「俺も、アイス、食べたいです」
    「なんだよ。食べて良いに決まってんだろ? 元々お前と二人で買ってきたんだからさ、変に遠慮なんてするなよ」
    無邪気な微笑みに癒されながら答えると、ジュリオはにこりと笑った。

    その笑顔は、本当に爽やかで、子供みたいにまっさらだった。
    まっさらだった、ん、だが。
    「はい、じゃあ――」
    「へ? ――っ、ん、んむぅ!?」
    眼にも止まらぬ、流れるようなすばやい動きでジュリオの手がスプーンを操り、俺の口にアイスを放り込む。そして甘く冷たいご馳走を追うように綺麗な顔が俺の顔に近づいてきて――重なって。
    今度はチョコレート味だ、なんて思った頃には、俺達の唇はしっかりと合わさっていた。

    本日2度目の想定外の出来事に、元々あまりお利口ではない脳みそはオーバーヒート気味。
    ベルナルドのものとは違う舌の感触。一心に甘いアイスクリームを追いかける舌の動きはたどたどしい。それが、俺の感じる場所も何もかも知っているベルナルドのキスではないのだということを意識させて、心臓が早鐘を打つ。
    ジュリオは眼を閉じていたけれど、俺まで閉じるのはなんだかおかしい気がしたから、間近からジュリオの整った顔を眺めていた。夢心地でうっとりと頬を赤くしたジュリオの表情。長い睫毛が、ぷるぷると震えている。
    なんだこれ、どういう状況だ?
    クラッシュ寸前の脳みそに喝を入れて、状況を判断しようとあがく。けれどあえなく撃沈して、俺は助けを求めるように視線を流し、隣にいるはずのベルナルドを探して――。

    涼しい顔で悠然と笑う、そんなベルナルドはいなかった。
    そこにいたのは、
    「……っな、ジ、ジュリオ!?」
    思わず腰を浮かせて、眼鏡の奥で眼が零れんじゃねーかってくらい大きく眼を見開いて、焦った声を上げている……

    ヤバイ、ちょっと……可愛いかもしれない。

    初めて見るベルナルドに、思わず笑ってしまい。
    ハハ、と胸の奥から湧き上がってくる笑いが肩を揺らして、気づいたジュリオがようやく唇を離す。
    「ん、ジャン、さん……甘い、です」
    濡れた唇から満足そうな吐息と共に、ぽつりと零された言葉に苦笑する。本当に、アイスを味わうのに夢中だったようだ。ふと、ジュリオが戻ってきた時の事を思い出す。俺がジュリオに気づいたのは、もうベルナルドから離れた後だったが……、その時には既に部屋の中にいた。扉を開けたところから気づいていたわけじゃないことを思い出して、だとしたら戻ってきたジュリオが見たものは、
    『本当だ……旨い、な……』
    ベルナルドチョイスの、ラッキードッグトッピングの特製アイスクリーム。あれを見られた、のか……。
    顔が赤くなるのがわかった。誤魔化すように、ジュリオの額を指ではじく。

    「馬鹿。普通に食べたって、アイスは甘いっての」
    「いえ……もっと、甘かったです。すごく、おいしい……」
    「トッピングにラッキードッグかよ。ったく、変な喰い方流行らせるなよな、ベルナルド」
    「流行らせる気なんてないさ――ジュリオ」

    ぴくぴくと引き攣る頬。ほんとに、色男が台無し。間抜けな失敗を後悔しているらしいベルナルドは、硬い声で牽制する。きょとんとしているジュリオ。こいつのコトを、常々仔犬のようだとか思っているせいか、深く舌を絡ませられるようなキスをされても違和感がなかった。大きな犬に、べろべろと顔を舐められた様な感じ? 逆に柄にも無く警戒心を剥き出しにしたベルナルドが、ツボに入ったように可笑しい。

    「ベルナルドの言うとおり、ジャンさん、すごくおいしかったです」
    「――っ、だから、ああもう、ったく!」
    「っはは、あははははは!」
    「笑うな、ジャン!」
    「はは、だって――完璧にあんたの自業自得だぜ、ダーリン?」
    「――――――っ!」

    言葉にし損ねた怒りに震えるベルナルドに、きょとんと見上げるジュリオ。そしてその真ん中で、笑い転げて椅子から落ちそうになっている、俺。
    この街を仕切るCR:5のボスと、幹部の半分が集まってるってのに、すごく平和。平和すぎてアホなくらいだ。
     
    愛しのダーリンの前髪のため、ジュリオにはあとでアイスクリームの正しい食べ方をちゃんと教えるとして。
    ――たまにはこんな馬鹿みたいな午後も、あっていいのかもしれない。
    溶けかけたアイスクリームをぱくりと一口。バニラの味。確かに旨いけど、もう一味。トッピングを追加してもいいかもな。
    味わいながら、俺は思った。












    2009/07/20
     ジュリオはおいしいアイスの食べ方を覚えた!
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