【曦澄】酔っ払い中秋節あいつはきっとひとりで蓮花塢にいると思うんだ。だから澤蕪君、行ってあげてよ。
陽気な彼のいつになく殊勝な物言いに、何より愛しい人を孤独なお月見などさせたくなくて、いても立ってもいられず夜空の中を駆けつけてみてみれば。
愛しい情人は、試剣堂にて門弟の皆さんと楽しく酔いどれていましたとさ。
「あいつの中でどれだけ俺は嫌われぼっちなんだ」
フンと江澄が小馬鹿にするように鼻を鳴らす。忌々しいというよりはどこか呆れた様子で酒を呷った彼の周りでは、これまたお酒で上機嫌になっている門弟たちが、まったくですなあと大声で笑っていた。
「どうして我らが敬愛する宗主にぼっち月見酒なんてさせねばならいんですか。ねえ、宗主」
「そうですとも。せっかくの上司の奢りで飲める機会をみすみす逃すなんて」
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