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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    地獄のハッピーバレンタイン🍫【呪いは甘く、甘く】ディスガイア4 地獄大人組のお話です。
    ❤️フェン→ヴァル←ティナ❤️

    #ディスガイア4
    disgaea4
    #バレンタイン
    valentine

    呪いは甘く、甘く【呪いは甘く、甘く】



    「おい、何をこそこそやっている」
    「……あら。こんなところでお会いするなんて奇遇ですわね」

     私たち、案外合うんじゃないかしら? そう言って悪戯に笑う天使を前にフェンリッヒはにこりともしない。天使も、向けられる鋭い眼光に怖気付くことはない。
     魔界、暗黒議会前。議事堂に入ろうとしていたアルティナを呼び止めたのは彼女を良く思わない、一人の狼男だった。

    「天使さまが物騒な議会になんの御用で? どんな議題を提案するつもりか知らんが……妙な気を起こすなら容赦はせんぞ」

     これ見よがしに鳴らされた指の音にアルティナは言い淀む。吸血鬼ヴァルバトーゼを党首とする、地獄新党。政拳奪取に向け大統領府を目指す道すがら、いつの間にか天使が着いて来ていることをフェンリッヒは良く思っていなかった。
     やや強引な手段も時に選び取る聡さ。洗練された銃の扱いや回復魔法の術式を間近で見、その実力は申し分ないと彼自身、感じていた。しかし敬愛する主が血を飲まなくなった直接的な原因である彼女を、従者はどうしても認める訳にはいかなかった。アルティナが現れてからというもの、ヴァルバトーゼの気もそぞろになり、そのこともフェンリッヒには一層面白くなかった。

    「上手く地獄に馴染んでいるつもりだろうが……オレはお前のことを一ミリたりとも信用していない。今ここで天界から来たスパイだと白状されても何の驚きもないな」
    「スパイだなんて事実無根ですわ!」
    「なら、何のためにここへ来た? 地獄から後をつけてきたが終始そわそわと様子がおかしい。お前は悪事だろうがなんだろうが、もっと飄々と立ち振る舞う女だと思っていたが」

     どうやら思い違いだったようだな? 悪魔をも騙す天使とは、つくづく恐ろしい話だ。そう言ってフェンリッヒは嫌味を放つ。その声は揶揄うような温度が含まれず、とても冷たいものだった。常日頃、息をするように発される単なる意地悪ではないと悟り、アルティナは覚悟を決めて口を開く。

    「違います! その……私はただ……チョコレートが欲しかっただけなんです」
    「……は?」

     拍子抜けするフェンリッヒにアルティナはぽつり、事情を説明し始めた。明日はバレンタイン、悪魔には馴染みがないかもしれませんが……大切に想う人へと贈り物をする日。けれど、この間めきめきと力をつけた私たちはローゼンクイーン商会のお得意様ランクを上げ過ぎてしまったようで……いつまで経ってもお目当てのチョコレートが入荷せず、困り果てていたのです。

    「でも、これ以上は待てません。バレンタイン、もう明日ですから」

     一呼吸おいて、天使は堂々言い放つ。

    「だから、暗黒議会で一度お得意様ランクを下げようと思ったのです。無事にチョコレートを買った後、皆さんの買い物に差し支えないようランクは元通りに戻しておきますわ。勿論、私のマナで、ね?」

     実にくだらない。天使の顔を見てそう思った。行事にかこつけて閣下ににじり寄り、自己満足の砂糖菓子を渡そうという魂胆なのだろう。甘ったるい菓子など閣下は好みはしない。実に、実にくだらない。狼男の刺々しい視線に気付いたアルティナは、問う。

    「それで……優しい狼男さんは私の議会入り、見逃してくださるのかしら?」

     暗に見逃せと訴えた天使に、くっく、とフェンリッヒは意地悪く笑った。

    「そのチョコレートを閣下に渡さんと約束するなら、見逃してやろう」
    「……ええ。約束、ですわ」

     アルティナは長い睫毛でウィンクをして暗黒議会の扉を開け放つ。禍々しい妖気に白い翼が眩しく映えた。その後ろ姿を狼男は、ただ疑問符を浮かべて見送ることしか出来なかった。天使の返答が、思ってもみなかったものだから。


    ❤︎+❤︎+❤︎


     バレンタイン当日、ヴァルバトーゼは星屑のような小粒のキャンディーを。フェンリッヒはオレンジピールのビターチョコレートを、それぞれアルティナから手渡される(押し付けられる)ことになる。

     フェンリッヒは細いリボンの施された小箱を指で弾き、腕を組んで怪訝な顔で眺めた。

    「閣下のためにチョコレートを手間暇かけて手に入れたのではなかったのか……? どういうつもりだあの女……」

     不愉快だ、そう言ってチョコレートを雑に口に放り込む。感じるのは甘さというよりも上質なカカオの風味。柑橘の、爽やかな香りがぬけていく。甘いもの嫌いを公言しているフェンリッヒは、不満足そうに、それでも箱の中の甘味全てを飲み込んだ。しばらく物思いに耽った後で、待てよ、と顔をしかめる。

    「バレンタイン……うっかり菓子を受け取ったが最後、男はそれを三倍にして返す義務を課せられる恐ろしい日だと閣下から聞いたことがある。まさか、あれはオレへの当て付けで──苦労の分、対価を寄越せと迫るつもりか?!」


    ❤︎+❤︎+❤︎


    「なに見てるデスか? おねえさま」

     悪魔も寝静まる夜、珍しくフーカは自室のベッドで夜更かししていた。彼女は熱心に目を通していた愛読誌「Seventeen hundred」から顔を上げる。

    「スイーツ特集よ! っていうかデスコ。アンタ、こんな時間まで起きてちゃ駄目じゃない」

     駄目、と言いつつ扉から顔を覗かせるデスコを手招きして、部屋に入れてやる。フーカが頭を撫でるとラスボスの少女はくすぐったそうに目を細めた。

    「もうすぐ、バレンタインでしょ? 手渡すお菓子にメッセージを込める……こういうの、ニブい男にはどうせ伝わらないけど……ロマンチックで憧れちゃうわ」

     雑誌の星座占いなんかも、なんやかんやで一番最初にチェックしちゃうのよね……。そうぼやく姉が寅の姿となり、新年早々サクヤの恋占いに取り憑かれていたことを少女はぽやと思い出す。

    「お菓子に意味があるデスか?」
    「わかってないわね。要はおまじないみたいなものなのよ。素直に気持ちを伝えられない女の子がお菓子に込める想い……つまり、ラブよ!」
    「ら、ラブ!? なんだかドキドキしてきたデス……。おねえさま、デスコもお菓子のおまじない、知りたいデス!」

     妹のきらきら輝く表情に満足げに頷くと、フーカは身体をベッドの端に寄せ、デスコのためのスペースを作ってみせた。妹が早速掛け布団の内側、すぐ隣へと潜り込めば、二人の間に雑誌の特集ページが広げられた。

    【気になる彼を射止めちゃえ♡呪(まじな)い込めたバレンタインスイーツ特集!】
    クッキー  …あなたとは友だちでいたい
    マドレーヌ …あなたともっと近付きたい
    マシュマロ …あんたなんかお断り!
    チョコレート…あなたと同じ気持ちです
    キャンディー…あなたのことが好きです
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    last_of_QED

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025

    last_of_QED

    DOODLE【10/4】ヴァルバトーゼ閣下🦇お誕生日おめでとうございます!仲間たちが見たのはルージュの魔法か、それとも。
    104【104】



     人間の一生は短い。百回も歳を重ねれば、その生涯は終焉を迎える。そして魂は転生し、再び廻る。
     一方、悪魔の一生もそう長くはない。いや、人間と比較すれば寿命そのものは圧倒的に長いはずであるのだが、無秩序混沌を極める魔界においてはうっかり殺されたり、死んでしまうことは珍しくない。暗黒まんじゅうを喉に詰まらせ死んでしまうなんていうのが良い例だ。
     悪魔と言えど一年でも二年でも長く生存するというのはやはりめでたいことではある。それだけの強さを持っているか……魔界で生き残る上で最重要とも言える悪運を持っていることの証明に他ならないのだから。

     それ故に、小さい子どもよりむしろ、大人になってからこそ盛大に誕生日パーティーを開く悪魔が魔界には一定数いる。付き合いのある各界魔王たちを豪奢な誕生会にてもてなし、「祝いの品」を贈らせる。贈答品や態度が気に食わなければ首を刎ねるか刎ねられるかの決闘が繰り広げられ……言わば己が力の誇示のため、魔界の大人たちのお誕生会は絢爛豪華に催されるのだ。
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