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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    11/5新月🌑執事閣下🐺🦇【俺の名を、呼んで】今、貴方を否定する。
    「呼んで、俺の名を」の後日談。お時間が許せば前作から是非どうぞ→https://poipiku.com/1651141/5443404.html

    #ディスガイア4
    disgaea4
    #執事閣下
    deacon
    #フェンヴァル
    fenval

    俺の名を、呼んで【俺の名を、呼んで】



     教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
     しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。

     静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。

    「悪魔が教会に何の用だ」

     低い声と共にアルティナの足元、影より出て姿を現したのは魔界の住人、暴君ヴァルバトーゼ。にじり寄る魔の気配から聖女を遠ざけるよう、マントをはためかせる。
     
    「吸血鬼さん?」

     鈴のような声は僅かに不安を宿していた。聖女(シスター)と悪魔(きゅうけつき)。本来相入れない立ち場にあるはずの二人はとある約束の元、一時行動を共にしていた。

    「目を閉じていろ。お前を恐怖に陥れるのは他の誰でもない、この俺だ」

     吸血鬼が乙女の目元を覆えば、魔法が眠りを誘って、長いまつ毛の瞼が落ちる。かくり、倒れ込んだ彼女を落とさぬようしっかりと抱き抱える。その腕の中へと視線を落とす吸血鬼の表情といえば、それは、まるで

    「ハァッ、ハァ……もう、もう我慢の限界です……これ以上はどうかご容赦を、ヴァルバトーゼ様……っ」

     大きな水晶が映し出す、不気味な教会と二人の男女のやりとり。それは魔界全土で空前の大ブームとなっている禁断のラブロマンス……ではなく、地獄にてプリニー教育係を勤めるヴァルバトーゼが過労の果てに見た夢である。勿論、夢である以上、彼の記憶に大きく影響された世界といえる。

     此処は魔界、地獄の地下牢。回想屋が丹精込めて再現したと豪語する「夢」に向き合わされているのはヴァルバトーゼのシモベ、フェンリッヒ。その手足は枷にて拘束されている。狼男の目の端に涙が浮かぶのを見ても、吸血鬼が表情を変えることはない。

    「こんな拷問……これ以上は耐えられません……どうかお許しください」
    「許せんな。目を開けて良く見ていろ。あの夜、お前が何に嫉妬したのか分からせてやる」

     腕の中に眠るシスターをそっと覗き込む暴君ヴァルバトーゼの姿が投影され、現実世界のフェンリッヒは精神的な苦痛に顔を歪める。
     魔界中にその名を轟かせた偉大なる悪魔、暴君ヴァルバトーゼ。そんな彼が血を絶ち、力を失う原因となった人間、アルティナのことをフェンリッヒは然るべくして嫌煙していた。忠誠を誓った主人の強大な力を抑え込む目障りな存在。しかし、夢の中の暴君がアルティナに向ける視線。そして現実世界で天使として転生した彼女に接する主の態度に、嫌悪とは別の感情が生まれていたのも事実だった。「ブルカノ」が地獄へ来てからはいつも板挟みで、狼男は言いようもない気持ちを胸に抱いてきたが、それを口にすることはしなかった。言葉にして、主を困らせてやろうと何度思ったことだろう。けれど、それはやはり従者にとって本意ではなかった。何故そう思うのか、はっきりとした理由は彼自身さえ分かっていない。三人の関係は事の発端から四百年の時を経た今、地獄にて不思議な均衡を保っていた。

     フェンリッヒの心中はやはり穏やかではない。アルティナと暴君ヴァルバトーゼのともすればロマンティックなワンシーンは、やはり彼には堪えたらしい。映し出される夢を焦点の定まらぬままで見つめ、うわごとのように呟く。

    「かくなる上は……舌を噛み切るしか……」
    「手枷足枷のみならず、猿ぐつわまでご所望か? 欲張りだな」

     拷問具の山の中からいそいそとギャグボールを探し始めるヴァルバトーゼ、喚くフェンリッヒの両名をよそに、水晶は夢の続きを二人に見せる。

     不穏な空気が教会内へと満ちた頃、ステンドグラスがピシリ、嫌な音を立て、遂に破られる。ガラスの破片と共に悪魔たちが侵入し、教会の床を見る見るうちに覆い尽くす。掲げられた十字架をものともせず、魔物の大群がヴァルバトーゼを取り囲む。その様は、飢えた蟻たちが、角砂糖を中心に群がるようだった。聖女を抱え、両手の塞がるヴァルバトーゼは魔力でレイピアを宙に浮かせ、操ってみせた。
     蟻の群れへと放つ、暴君の一振り。自ずから振った剣ではないものの、間違いなく強大な衝撃波を受けたはずの魔物たち。しかし、あまりの手応えのなさに、暴君はひるむ。あろうことか、彼らは何食わぬ顔で平然とそこで笑っていた。
     暴君と呼ばれ畏怖された男に、このようなことがかつて一度でもあっただろうか。宿敵〈ハゴス〉級の悪魔を相手取るのであるならばともかく、今面前で息を巻くのはどう見ても微弱な力しか持たぬ魔物たち。肌に伝わってくる魔力量も、笑えるぐらいの可愛いものだ。

     何かがおかしい。

     剣が駄目ならばと矢継早に呪文を紡ぎ、敵を一掃しにかかる。しかし、悲しいほどにその反応に変わりはない。火、水、風の三魔元素。そして、上位にあたる星魔法の呪文をもってしても、魔物たちは消滅しない。そも、効いていない。次の攻撃はまだかと言わんばかりの挑発的な表情で不気味に佇んでいる。

     どうしてこんな敵に一撃さえ与えられない? 何故思うように力を出せない? 次の一手を探して、つい視線が彷徨う。動揺を隠しきれないヴァルバトーゼは気付けば魔物たちにじりじりと間合いを狭められ、追い詰められる。彼には、もう、打つ手がなかった。

     それでも、彼には敗北など認められない。降伏など有り得ない。護るべき人がいるからだ。己を奮い立たせるよう、腕の中をちらと覗き込めば、そこには彼を見上げ穏やかに笑うアルティナがいた。いつの間にか開かれていた青い目が濁り、次の瞬間、眼球がこぼれ落ちていく。教会の冷たい床から、それでも向けられ続ける視線に、ヴァルバトーゼは息を呑む。

    「……アルティ…ナ……?」
    「さあ、私の血をどうぞ、吸血鬼さん。今のままでは、貴方は力を振るえない。私を助けられない」

     眼球の収まっていたはずの空洞部から、血の代わりに黒い泥が涙のように溢れ出す。アルティナは、泣いていた。そして紡がれるのは、決定的な呪いの言葉。

    「それとも……また、私を殺すのですか?」

     彼女の言葉を皮切りに、無情にも、魔物たちは襲い来る。凍てついてしまったかのよう、その場から一歩も動けなくなり、彼は、聖女だったものを呆然と見つめた。
     
     俺は、約束を果たせず、アルティナと己が力を失った。今度は約束に固執して、それでもやはりアルティナを失うのか。ああ、俺はまた──

     吸血鬼の喉が鳴る。腕の中の白い首筋に荒く息が掛かり、牙が立てられようとした、その時。

    「下衆が」

     暴君ヴァルバトーゼの目の前で聖女の胸に斧が力一杯振り落とされる。肉がたたれ、骨の砕ける音が鈍く響いた。もがき苦しむ何かは足の先から少しずつ肉体を失っていく。その呻き声は最早、先程までのアルティナのものではない、全く別のもの。魔物の断末魔。そして、聖女の正体を暴いたのは──

    「ご無事ですか」

     吸血鬼の良く見知った悪魔。永らく一人きりで生きてきた暴君が唯一僕とした男、フェンリッヒ。
     どうしてお前が此処に。そんな視線を向ける吸血鬼を振り返らず、フェンリッヒは語り掛ける。

    「もう少しで血を飲んでいただけたようですのに、我ながら惜しいことをしました」

     フェンリッヒはヴァルバトーゼの前へとゆらり立ち塞がる。彼の纏う風の魔力は、充満する邪気を払う。

    「……ヴァルバトーゼ様。貴方が約束に縛られ苛まれるのは、もう懲り懲りです」

     そう言って狼男が全ての魔物を爪で裂き、喰らい、ただの肉塊とするまでに十分とかからなかった。教会に再び静けさが訪れた頃、顔にべとりついた返り血をぬぐい、彼は何事もなかったかのよう主人の元へと歩み寄る。

    「特にあの女は気に入りません。人間の分際で、貴方をこうも縛り付ける。主を惑わすものに私は一切容赦しません」

     座り込む吸血鬼に彼は膝をついて視線を合わせる。そして口を開き、穏やかな口調で告げた。

    「そして、それは貴方であってもだ。我が主、ヴァルバトーゼ様を模る亡霊よ」

     ヴァルバトーゼへと斧を向ける狼男のその目はただ、静かに吸血鬼を見据えていた。

    「ヴァルバトーゼ様は約束を破らない。例え夢の中であっても、誓いを違えることなどない。何より──己が畏れを誇示するために『目を閉じていろ』などと人間に放つお方ではない。あの女の怖いもの知らずは、誰よりヴァル様ご自身が良くご存知のはずだ」
    「……突然何を言っている。そんなことよりも、フェンリッヒ。お前が助けに来てくれて俺は嬉しかった。お前はどうなのだ」

     暴君ヴァルバトーゼの指がフェンリッヒの頬に触れる。その手を、狼男はそっといなし、首を振る。

    「優しいだけの貴方は、耳障りの良い甘い言葉ばかり囁く貴方は……ヴァルバトーゼ様ではない。ただの夢。まやかしだ」

     そして狼男は、吸血鬼へと斧を振るった。迷いのない、一撃。ヴァルバトーゼを模った者は呆気なく穿たれ、黒い灰と帰す。それでも、この夢は終わらない。

     フェンリッヒの手によって消えてしまったヴァルバトーゼは、ヴァルバトーゼであって、そうではない。夢は己の無意識を映す鏡。ヴァルバトーゼ本人の意識は最初から最後まで、俯瞰する位置に在った。夢の中の登場人物として姿を持たぬ故に声を出すことすら叶わず、繰り広げられる一部始終をここまでただ見つめていた。

     フェンリッヒは小さく主人の名を呟く。誰もいなくなった教会で、その声は小さくこだまして、闇の奥へと溶けていく。
     じき、空間に占める闇の割合が広くなり、焦点がぼやけていく。徐々に夢が崩壊していく。狼男がぐしゃり、灰を握りしめ俯いたところで水晶は魔力の放出を止め、それ以上、夢を映さなくなってしまった。

    「……そんな目で見ても続きはない。夢は終わりだ。お前に首を絞められて、ここで目が覚めてしまった」

     「話がある」と呼び出され、説明もなく地下牢に押し込められたのは、俺にこれを見せたかったからなのだとフェンリッヒはようやく悟る。それと同時にたった一言、主の寝言のために嫉妬に狂ってしまった記憶が苦々しく蘇る。独りよがりの行為に走ってしまった償いを、一体俺は何で埋め合わせれば良いだろう。

    「一晩中掻き抱いて満足したか? 感想でも聞かせてもらおうか」
    「お、お待ちください……つまり、私は早とちりを……?」
    「そういうことだ。たかが寝言に嫉妬するなと言うのだ。お前はそんなに独占欲を滲ませる男だったか?」

     全貌を理解して赤面し、俯く狼男は手枷足枷を付けられたままで言葉を失う。
     何なりと、罰を。そう告げて首をもたげる従者にヴァルバトーゼはあえて許しを与えない。

    「お前が俺に何を見て、何を求めているのか……俺には知り得ない。そも、悪魔の心など分かりようもない」

     とかく詮索するつもりもないしな、そう放って、とん、と胸を押してやる。手足を拘束された男はなす術もなく、仰向けに転がった。吸血鬼は覗き込むよう、上から、従者の戸惑いの滲む表情を確かめる。

    「だが、覚えておけ。お前は夢の中、俺の惑いを、危惧を、躊躇いなく否定してくれた。それが出来たのは本当のアルティナと本当の俺のことをお前が良く知っているからだ。それが、俺は言いようもなく嬉しかった」
    「ヴァル様のことはともかく、私は泥棒天使のことなど……」
    「そう噛み付くな。今度はお前の名を呼んでやるから」

     ヴァルバトーゼは気恥ずかしそうに、それでも目を逸らさずに続けた。フェンリッヒ、と目の前の男の名を呼ぶ。

    「今もまだ、苦しいか?」

     従者は呪った。酷く抱かれて、幼さに付き合わされて。それでもこの人は、俺を慮るのか。俺の息苦しさを分かとうというのか。
     そして湧き上がる、言いようのない気持ちに遂にフェンリッヒは観念する。ああ、もう逃げられない。認めるしかないのだろう。俺は、この人のことが

    「はい、と──そう言えば、まだそばにいてくださいますか。ヴァルバトーゼ様」

     狼男は消え入りそうな声で言葉を絞り出す。そのぐしゃぐしゃの顔に、ヴァルバトーゼの険しい表情も綻んだ。

    「ああ、お前がそれを望むなら」

     狼男の銀の髪を撫で、吸血鬼は上からキスを落とす。そして付け足された言葉はあまりにもムードに欠けるもので……

    「しかしああいう抱き方はもうよせ。気をやると、それこそ夢か現か分からなくなるからな」
    「だっ……?! 閣下、私はそういう意味でそばにいたいと言った訳では……」
    「ん? 今日は良いのか?」
    「……やはりこの駄犬に罰を……」

     ……それが狼男には可笑しく思えた。この自由気儘さがなんとも我が主らしい。

     役目を果たし、二人を見守るようにだんまりの水晶。それを横目にヴァルバトーゼは思い付いたようにもうひとつ、口にする。

    「ところで──お前は日頃、どんな夢を見ているのだろうな。とても興味があるのだが 」

     主人の好奇心は底なしである。ぎくりとするがもう遅い。夢とは、それを見る者の危惧を映す。願望を映す。水晶を寄せられたフェンリッヒは首を振って抵抗して見せるが今日の主に慈悲はない。ヴァルバトーゼは彼に馬乗りになり手枷に触れ、楽しそうに「フェンリッヒ」と、その名を呟く。水晶は悪魔に忖度することなく、見た夢をそのままに映し出していく。
     狼男は己がかつて見た赤裸々な夢の数々を暴かれ、悶え、発狂しかけ……そしてその後枷を外され、主にようやく許された。

     窓の外は仄暗くも黄金に染まる。夜空に滲み、今にも溶け出しそうな朧げな満月がなんとかその形を保って二人の悪魔を見下ろしていた。
     薄ら寒い地下牢で月の光と体温を分かち、二人は夢へと落ちていく。互いが互いの夢に現れるのを、今か今かと、待っている。


    fin.
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    last_of_QED

    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

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    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
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    last_of_QED

    Deep Desire【悪魔に愛はあるのか】の後日談として書きました。当社比アダルティーかもしれません。煩悩まみれの内容で上げるかどうか悩むレベルの書き散らしですが、今なら除夜の鐘の音に搔き消えるかなと駆け込みで年末に上げました。お許しください…【後日談】


    「やめ……フェンリッヒ……!」

    閣下との「戯れ」はようやくキスからもう一歩踏み込んだ。

    「腰が揺れていますよ、閣下」
    「そんなことな……いっ」
    胸の頂きを優しく爪で弾いてやると、我慢するような悩ましげな吐息でシーツが握りしめられる。与えられる快感から逃れようと身を捩る姿はいじらしく、つい加虐心が湧き上がってしまう。

    主人と従者。ただそれだけであったはずの俺たちが、少しずつほつれ、結ばれる先を探して今、ベッドの上にいる。地獄に蜘蛛の糸が垂れる、そんな奇跡は起こり得るのだ。
    俺がどれだけこの時を待ち望んでいたことか。恐れながら、閣下、目の前に垂れたこの細糸、掴ませていただきます。

    「閣下は服の上から、がお好きですよね。着ている方がいけない感じがしますか?それとも擦れ方が良いのでしょうか」
    衣服の上から触れると肌と衣服の摩擦が響くらしい。これまで幾度か軽く触れ合ってきたが素肌に直接、よりも着衣のまま身体に触れる方が反応が良い。胸の杭だけはじかに指でなぞって触れて、恍惚に浸る。

    いつも気丈に振る舞うこの人が夜の帳に腰を揺らして快感を逃がそうとしている。その姿はあまりに 2129

    last_of_QED

    DONEしがない愛マニアである私が原作の奥に想い描いた、ディスガイア4、風祭フーカと父親の話です。銀の弾は怪物を殺せるか?【銀の弾など必要ない】



    白衣が揺れる。頭をかいてデスクに向かうそのくたびれた男に私は恐る恐る声を掛ける。

    「パパ、お家なのにお仕事?」

    男はこちらを振り返りもしない。研究で忙しいのだろうか。それとも、私の声が届いていないのだろうか。
    父親の丸まった背中をじっと見つめる。十数秒後、その背がこわごわと伸び、首だけがわずかにこちらを向く。

    「すまん、何か言ったか?」

    この人はいつもそうだ。母が亡くなってから研究、研究、研究……。母が生きていた頃の記憶はあまりないから、最初からこんな感じだったのかもしれないけれど。それでも幼い娘の呼び掛けにきちんと応じないなんて、やはり父親としてどうかしている。

    「別に……」

    明らかに不満げな私の声に、ようやく彼は腰を上げた。

    「いつもすまんな。仕事が大詰めなんだ」

    パパのお仕事はいつも大詰めじゃない、そう言いたいのをぐっと堪え、代わりに別の問いを投げかける。

    「いつになったらフーカと遊んでくれる?」

    ハハハ、と眉を下げて笑う父は少し疲れているように見えた。すまんなあ、と小さく呟き床に胡座をかく。すまん、それがこの人の口癖だった。よう 3321

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007