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    わかば

    @wakabatteru
    ビリグレがすきな社会人

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    わかば

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    ホラーに巻き込まれるビリグレです🍭💗🧁

    ヒント:🍕🐻🐰🐤🦊🍕

    #ビリグレ
    bigotry
    ##ビリグレ

    want out...




     ──あつい。

    「あ、つぃ……」

     目は閉じたまま、唇が動き、自分の声が掠れてこぼれた。

     ──自分は何をしていたのだったか?

     ああ、そうだ、情報屋の仕事が一段落し、ビリーは、ルームメイトであり恋人であるグレイと、共に布団の中に入ったのだった。

     昼は暖かくなってきたとはいえ、夜や早朝はまだ凍えるような寒さで。
     布団が冷たくて寝られない等の理由をつけて、グレイとくっついて眠ることに成功したのだった。

     だが。

    「あつい……あつ、い」

     このあつさはなんだ。
     汗が全身をぐっしょりと濡らす、
     この不快なあつさは。

     ビリーは、くっついて眠っていたはずのグレイを探して右手を動かす。

    「ぐれ、い……?」

     やわらかなぬくもりはなく、ただ固い、コンクリートのような、石のような感触が手に伝わるだけ。

     そこでビリーは覚醒した。

     ベッドでないなら『此処』はなんだ。
     グレイはなぜ居ない。
     なぜ、こんなにもあつい。

    「ッッ、!」

     はっと勢いよく両目を見開き、視界に写ったのは、
     薄暗く、湿っぽい、小さな部屋。

     そして、何かを映しているいくつものモニター。
     機械のファンが高速で回転する音。
     雀の涙ほどの効力も見いだせない、ただ温風を循環させるだけの扇風機。

     こんな、異様な空間など。

     全て、見覚えが、ない。


     何もかも、知らない。わからない。

     ビリーは混乱する。

     思わず頭を抱えようとして、

    「ビリー君……、目が、覚めた……?」

     愛しいグレイの、何かに緊張しているのか、こわばった声がビリーの耳に届いた。

    「っぐれ」

     イ!、と続くはずだったビリーの声はグレイの手に遮られ、「むぐっ!」とくぐもった声だけがもれた。
     ひとさし指を口もとに当て、静寂を要求するグレイはなにやら部屋の左右を気にしており、視線が忙しなく動いている。

    「しー……、……急にごめんね、ビリー君……。この状況は……僕の、せいかも、しれないんだ……ごめん、……ごめんね」

     グレイが眉尻を下げ、唇を噛む。
     普段ビリーを見つめている時は、あまくとろけているはずの蜂蜜色の光彩が急速に潤んで、


     ──あ、

     ──グレイが、ないてしまう。


     そう思った時には、もう体が動いていた。

    「っ、!?びり、ぃくん……!?」

     こちらの口を塞いだままのグレイの手を掴み、己のほうへと引き寄せ、ビリーは強引にその唇を奪った。
     驚きつつもどうにか声を抑えて、囁くようにグレイがビリーの名を呼ぶ。

     先ほどのグレイの様子からするに、どうやら静かにしたほうが良いようだ。ビリーはグレイに呼応して囁くように言葉を紡ぐ。

    「なかないで、グレイ」 

     そう言ってグレイの頬に手を寄せると、グレイの蜂蜜からついに熱い涙が滴り落ちた。

     ああ、やってしまった。
     涙を流してほしくなかった故の行動であるのに、逆に引き金となってしまった。

    「ッ、……っ、ごめ、ん……っ、ごめ」

     しゃくりあげながら、それでも小声でビリーへと謝罪を繰り返すグレイをつよく抱きしめ、ビリーは右の手のひらでグレイの後頭部からうなじへ下るよう、ゆっくりと撫でていく。
     それを繰り返して、グレイの呼吸は落ち着きを取り戻していった。

     恋慕から昇格して愛の関係となった二人は、この動作が習慣となっていた。




     ──────




     ある夜、グレイが夜中に悪夢を見てしまい、夢と現実の境い目で、ビリーの姿さえも認識できず一種のパニックに陥ってしまった時。
     当然、ビリーも焦っていた。
     ビリーを過去の恐怖の存在達と誤認し、縮こまってかたかたと震えるグレイを、どうにか助けてやらねばと。
     案の定ひどく怯えられたが、それでも手を伸ばし、悲鳴のような拒絶を押し退けて、きついほどに抱きしめ、自分が持てるめいっぱいの愛を手に乗せて、うなじ付近を何度も撫でた。
     後頭部からうなじ付近にはリラックスを促すツボがいくつもある。不自然にならない程度に、軽く、指でそっと指圧をしながら撫でているうちにグレイは落ち着いたようで、「びりー、くん……?」とぼんやりした声でビリーを認識して、気絶するように寝に入ってしまった。
     涙を流したまま、ビリーにしがみつくかたちで眠るグレイを見つめ、思った。

     グレイが一番、苦しくて、つらかった時にタイムスリップをしてグレイを助け出すことができたなら、なんて。



     ──そんなもの、

     ──夢物語だ。



     だけど、今は。
     共に、今を過ごすなら、とびきりの安寧を、与えてやりたい。

     恐怖の対象に囲まれて、理不尽な敵意にさらされ続け、明確な意図を持って傷つけられ、残酷に心を掻きむしられ、自己を肯定することが難しくなってしまった、この危うい存在を。

     全部まるごと抱きしめて、愛して、愛して。

     いずれ、何があろうとどんな事が起ころうと、絶対にグレイを手放さない、ビリー・ワイズという人間がいることを、ゆっくりと、だが確かな事なのだと知っていけばいい。

     そう、強く願った。


     あの夜から、
     不安になったとき、疲れたとき。
     うれしいとき、好きだと思ったとき。
     夜、肌を重ねるとき。
     たとえ何でもなくたって。
     両手で抱えきれないほどの愛を、言葉に乗せてもまだまだあふれる愛を、めいっぱい。
     こうやってきついほどに抱きしめて、それを伝えることが、ビリーの日課となり、
     そしてグレイの日課はそれを受け止めることになった。




     ──────




    「おちついた?」

    「ぅ、ん……ごめん、僕のほうがずっと年上なのに、情けないね……でも、ありがとう」

     ビリーの肩にグレイが頭を乗せてすりすりと甘えてくる。恋人になってだいぶ経ってから、ようやっとしてくれるようになったしぐさだ。
     小声で囁き合いながら、恋人に甘え、……しかしそんな中で、グレイは初めから今に至るまでずっと強く気を張り巡らせて部屋の左右の廊下を気にしている。

     すさまじいマルチタスクだ。
     時折ぴくりと何かに反応してはモニターへと視線を向けている。
     ビリーの背中にぎゅう、と腕をまわしながら。

    「……大丈夫……ぜったい、ビリー君は、僕が守るからね」

     決意に満ちた声でそう言って、グレイは腕をほどき、ビリーから離れた。
     この不快なほどにただただ暑い空間で、唯一不快でない、心から愛するやわらかなぬくもりが、ビリーの腕の中から部屋の前面に位置するモニターの前へと移動して、ビリーはようやっと、目が覚めてから抱いていた疑問を。

    「……ねぇ、グレイ……ここは、どこなの……?」

     努めて静かな声で、問いかけ、

     その瞬間。

     ──ガシャン!、と。

     重量のある金属が硬いものとぶつかる、けたたましい音が鳴り響き、ビリーの肩が大袈裟なほどに跳ねた。
     ビリーは勢いよく音の発生源である左方面へと目を向ける。




     シャッター、だ。




     例えば、火災による煙や火が広がるのを防いだりするために使用される、あのシャッターが。

     左側の通路へと伸びていた出口を完全にシャットアウトし、

     一拍も、だ。
     一拍も、置かずして。

     そのシャッターが、

     何者かに

     強く、何度も叩かれ、引っ掻かれた。

     まるで、開けろ、開けろ、この中に居るのはわかっている。と、そう言わんばかりに。
     金属があげる特有の嫌な音が大音量で部屋中に反響する。
     眉間にしわの寄るようなその不快音に、ビリーは思わず耳を塞いで、しばらく。

     音の主は諦めたのかシャッターを掻くのを止め、再び機械のファンの音だけになった空間へと戻った。


     目が覚めたら見知らぬ場所。
     本能的な恐怖を覚える今先ほどの音。
     異様な空間。
     

    「……ここ、ね、……きっと、すごく……危険な場所……」

     ビリーからの問いかけに、今、グレイが返答した。

     先ほどシャッターの向こう側から感じた、濃密な『死』の気配。


     未だ混乱する頭で、ビリーは理解をする。


     どうやら、
     己が生命を摘み取ろうとする
     恐ろしい何かが、
     ビリーとグレイの二人を、部屋ごと取り囲んでいるようだ、と。




     ─────
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    このままネガティブな気持ちになってしまうのも良くない、とルームメイトであり恋人でもあるオレンジ髪の彼によく言われているため、気持ちを切り替えて、その彼に一言声をかけてから寝よう、と隣の整理整頓された部屋をちらっと見てみる。
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    (今日は疲れちゃったのかな…)

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    「う"ッッすきッッッ……もうちょっと待っててねグレイ……ッッ」

    ってなる本当は両想いのビリグレ
    poor fool...




     本日、グレイは休日である。

     現在地、とあるアミューズメント施設の、とあるゲームコーナー。

     生粋のゲーマーであるグレイは、CSゲーム、オンラインゲームの他にACゲームも嗜んでおり、たまにこうやってゲームセンターへ足へ運ぶことがある。

     ACの腕もまたトップランカーとして店舗ランキングに常時君臨しているが、本日はスコアの更新に来たわけではない。

    「……!、ぁっ、た……!」

     ゲームコーナーをくるくると探して数分、グレイはお目当てのゲームを見つけた。

     それはクレーンゲーム。

     グレイの本日の目的は、クレーンゲームのプライズであった。

    「はゎ、はわ……!僕と並んでる……!ふふっ、うれしい……!」

     クレーンゲームのケースの中を覗き、グレイは思わず頬を染めて、琥珀色の光彩をゆるめる。
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     FPS視点ゲームでのマップ把握など、眼前の様子を上から眺めるように脳内で構築するのが得意であるグレイは、プライズを難なくアームで掴み、何事もなくワンコインでプライズを 1716

    mamedaihuku228

    DONE初夜的な感じのビリグレ。フェイスくんも出てきます。詳しく言うとただ準備をするだけで、エッチではありません。エッチな事はしてません。大切な事なので二回言いました。 寮に入った時に二人で選んだソファに並んで座り、それぞれのカレンダー帳に赤い丸の印をつける。グレイのカレンダー帳には新作のゲームやフィギュアの発売日など、自身の趣味に関する事や、仕事の事などがぽつりぽつりとメモされているぐらいだ。きっとビリーのものは自分とは違って、情報屋の事や友人との予定などで埋め尽くされているのだろうとグレイは思っていたのだが、一瞬中が見えてしまったそれはグレイと似たようなものだった。それに気が付いたビリーは「グレイのエッチ♥」だなんて、カレンダー帳を胸に当てて隠すので、偶然であるとはいえ人のプライバシーを許可なく覗き込んでしまったと、「ごめんなさい!わざとじゃなくて…!」と、慌てて両手で目を隠して謝った。
    「ウソウソ♪グレイなら見てもいいヨ。情報屋の方は別にあるから、こっちは完璧ぼくチン用」
     そう言ってビリーが中を開いて見せるのを、とりあえず情報屋での秘密保持などは問題が無い事にほっとしつつ、そろりと指の隙間から覗いてみるが、細かく綺麗な字で書かれたそれはやはりグレイのものと大差ないものであった。パトロールの予定日、休日、マジックでの買い出し日、そしてグレイと同 7666