冬の朝「ねぇ、れおくんさぁ。そろそろ起きたらどうなのぉ?」
返事の代わりに、ぎゅっとお腹に回された腕に力が加わった。まだ起きる気はないらしい。
「休みだけどさぁ。いつまでベッドにいるわけぇ?」
「だって寒いんだもん! ここで楽園あり桃源郷でもある! とにかくおれはここから出ない!」
「あ、起きた」
「嘘です。寝てます」
「じゃあ寝てていいから、手どけてよねぇ。そろそろ朝ご飯食べたいんだけどぉ?」
「やだ! セナという湯タンポがいなくなったらこの布団の暖かさも半減? いや、それ以上だ! それはおれが許さない!」
「れおくんに許されてもねぇ」
寝起きから元気すぎる。おそらくだいぶ前から起きてたんだろうと思う。
「だいたいなんだ!? おれの方を向かないでスマホばっかり見て! セナはいつからスマホさんちの子になったんですか!」
「暇だから。ゆうくんの写真でも見ようかなって」
「それでいて浮気! また『ゆうくん』の話! おれもセナと一緒にできる仕事取ってきてやるからな! がるる」
おそらく先日のバトラーの仕事のことを言っているのだろう。
「対抗心燃やされてもねぇ。あんたとはいつでも一緒に仕事してるでしょ~?」
「セナ冷たい! でも身体はあったかい!」
「だいたい浮気って……あんたねぇ」
ぐるりと身体を回して、れおくんと目を合わす。ぱちくりとエメラルドグリーンの瞳が見え隠れして、俺を捉えた。
「あんたがさっさと起きれば、俺が作った朝ごはんも食べれるし、一緒に出かけられるんだけど? 誰のせいで俺が暇を持て余してると思ってるのぉ? それに、あんたの抱き枕に大人しくなってあげてるのに感謝の一つもないわけぇ!?」
「わ~セナごめん大好きありがとう! 愛してるから起きます!」
がばりと布団を勢いよく退けて、レオが飛び起きた。ベッドから降りてドタドタと洗面所の方に向かっていくのを視線だけで見送る。
「やっと起きた……」
れおくんが冬に弱いのは知っている。夏は俺より先に起きて作曲している姿も見ていたのに、最近は寒くて身体が動かないとかなんとか言い訳をして、中々起きてこない。ベッドも分けているのに、てんで意味をなさない。なぜかって? 何回言っても寒いと俺のベッドに潜り込んでくるからだ。
「俺も起きてご飯作るかなぁ」
身体をゆっくりと伸ばす。
冬の朝は、だいぶ遅いスタートだ。