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    sgm

    @sgm_md
    相模。思いついたネタ書き散らかし。
    ネタバレに配慮はしてません。
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    sgm

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    現代AU
    ツイスターゲームをしようとする付き合い立て曦澄。

    #魔道祖師
    GrandmasterOfDemonicCultivation
    #曦澄

     確かに、藍曦臣があげた項目の中に「これ」はあった。そして自分もしたことがないと確かに頷いた。
     ただ、あまりその時は話を聞けていなかったのだ。仕方がないだろう?
     付き合い始めて一か月と少し。手は握るが、キスは付き合う前に事故でしたきりでそれ以上のことはしていない。そんな状態で、泊まりで家に誘われたのだ。色々と意識がとんでも仕方がないではないか。もしもきちんと理解していれば、あの時断ったはずだ。十日前の自分を殴りたい。
     江澄は目の前に広がる光景に対して、胸中で自分自身に言い訳をする。
     いっそ手の込んだ、藍曦臣によるからかいだと思いたい。
     なんならドッキリと称して隣の部屋から恥知らず共が躍り出てきてもいい。むしろその方が怒りを奴らに向けられる。期待を込めて閉まった扉を睨みつけた。
     だが、藍曦臣が江澄を揶揄することもないし、隣の部屋に人が隠れている気配だってない。いたって本気なのだ、この人は。
     江澄は深いため息とともに額に手を当てる。
     「馬鹿なのか?」と怒鳴ればいいのだろうが、準備をしている藍曦臣があまりにも楽しそうで、金凌の幼い頃を思い出してしまうし、なんなら金凌の愛犬が、遊ぼうとボールを持って尻尾を振っている姿とも重なる。そんな藍曦臣にどうして怒鳴ることが出来ようか。いや、出来るはずもない。
    「準備が出来ました」
    「あぁ。……藍渙。一つ聞いていいか?」
    「なんですか?」
    「これは、なんだ? いや、知ってるしわかってるんだが……。もしかしたら俺の知っているものと似て非なるものかもしれないから、念のため確認したい。俺にはこれがツイスターゲームに見えるんだが?」
    「えぇ。ツイスターゲームですね。阿澄はまだやったことないんだろう?」
     一縷の望みを込めた問いには、ほぼ予想通りの、無邪気で無情な答えが返ってくる。そんなにきらきらと無駄にまぶしい嬉しそうな笑みを満面に浮かべないで欲しい。
     ツイスターゲーム。
     どちらかと言えば、十代や二十代の若者たちが、多人数でやるパーティゲームだ。スピナーの指し示した場所を、指示された四肢で触ると言う。相手に触れたり床に着くと負けというアレだ。
     決して三十路半ばの自分と四十路に片足突っ込みかけている藍曦臣の二人して、良い大人がするゲームではないし、恋人同士が二人きりで素面でするゲームではないはずだ。第一最低人数は三人からのはずで、一人でやったとしてなんの面白みもないだろう。テレビ電話で弟でも呼び出してスピナーを回させるつもりなのだろうか?
     一息に出かかった言葉を江澄はなんとか飲み込んだ。
     リビングに敷かれた赤、青、黄、緑の円が描かれたマットを憎々し気に睨みつける。わざわざソファの前に置いてあったローテーブルを、藍曦臣はずらして、このツイスターゲームのマットを敷いたのだ。
     藍曦臣が、「あなたが誰ともしたことのないことを一緒に私がしたいです」などと言い出した時に止めればよかった。可愛いことをいう人だな、などと年上の男に対して可愛げを見出している場合ではなかった、と江澄は再び過去の自分を殴りたくなる。
     大体にして男と付き合うこと自体が、江澄にとっては初めてなのだから、「男とするのは」の一文がただし書きとして頭につくが、藍曦臣と恋人同士ですることなどは全て初めてと言っていい。
     男相手にキスするのも、一夜をともに過ごすのも、今後していく予定の抱擁も、今後していく予定の口に舌を突っこむようなキスも、今後していく予定のセックスも。全部全部初めてだ。それではダメなのか。なぜそこでツイスターゲームを思いついたのか。育ちが良すぎると思考回路が自分とは異なっているのかもしれない。
     何としても、江澄はツイスターゲームを回避したかった。時間は有限であり、夜も有限だ。
     付き合い始めて一か月。お互い忙しい身であるため、平日はメールや電話などをぽつぽつとしているぐらいで。会うのも週末土日のどちらかで。デートと呼べるようなこともしているが、外で大っぴらに手をつなぐことなどもできないからと、別れ際に握手をする程度だった。はっきりと言ってしまえば、何の進展もない。付き合う前とほぼ変わらない。せいぜい二人きりの時の呼び方が変わった程度だった。
     藍曦臣の家で。
     二人きりで。
     一晩明かす。
     今晩、キスぐらいはしたい。
     それがだめならば、せめて隣り合って座って寄り添って。手を握るぐらいまでは進展をしたい。ツイスターゲームなどをやっている場合ではないのだ。
     江澄は、胸中でそっと溜息をつき、極力藍曦臣を落ち込ませないで済むような方法で、ツイスターゲームを回避すべく、口を開いた。
    「その、だな。藍渙。ツイスターゲームは、三人以上でやるもんじゃないのか? 二人だと、誰がそれを回す?」
     それ、と藍曦臣の手にあるスピナーを指さす。回す人間がいなければ、一人が回し、一人がその指示に従う。それではゲームにならない。これで回避できるはずだと思った。だが、藍曦臣は小さく首を傾げた後、横にずらしたローテーブルの上に置かれた箱を手に取り、箱の裏側に書かれたルールを読みだした。そして、笑顔のままで顔を上げた。
    「大丈夫。二人の場合は、スピナーは回さずに、それぞれがお互いに色と左右の手足どれかを指定すればいいみたいだ」
     ここに書いてあります、と藍曦臣が指した場所には、確かに「ふたりであそぶばあい」と記載されていた。江澄は思わず、強かに舌打ちをした。びくり、と藍曦臣の肩が揺れる。
    「……阿澄?」
     仮に。と、江澄は思考を巡らせる。
     仮に、二人きりでこのツイスターゲームをしたとして。
     例えば、自分の身体に覆いかぶさるようにうまく藍曦臣の身体を誘導して、何が嬉しい? 自分が身体の小さな女性であれば包まれるような感覚を味わえるかもしれないが、3㎝の身長差と、多少の体格の違い程度では、ただ単に窮屈なだけだ。
     例えば、至近距離で自分と向かい合うようにうまく藍曦臣の身体を誘導して、何が楽しい? 顔が近ければ、キスの一つでもする雰囲気になるのだろうか? ただし、両手両足はあらぬところの円に触れるために、フルフルと身体は小さく震えている状態だ。間抜けにもほどがある。
     思考を巡らせた結果、江澄は一つの結論にたどり着いた。
    「まだるっこしい」
     思わず、低い声で呟く。藍曦臣が江澄の言葉を聞き取ったのか、瞬きを繰り返した。その顔にニコリと満面の笑みを浮かべると、江澄は藍曦臣の手にあったツイスターゲームの箱とスピナーを奪い取り、ローテーブルの上に戻した。
    「阿澄?」
     呼ぶ声にはこたえず、藍曦臣の後ろにソファがあることを視線で確認すると、笑顔を浮かべたまま藍曦臣の肩に両手を乗せ、彼の両足の間に自分の右足を滑り込ませる。そのまま反応される前に滑り込ませた右足で、藍曦臣の左ふくらはぎから膝裏の位置を思い切り、払った。
    「え?」
     突然の江澄の足払いに、素直に藍曦臣の身体が後ろに倒れる。驚きで伸ばされる藍曦臣の右手を、江澄は己の左手で握った。指と指の間にするりと自分の指を滑りこませる。今まで一度たりともしたことのなかったいわゆる恋人繋ぎだった。
     ソファに倒れこんだ藍曦臣が、反射で起き上がろうとするのを、藍曦臣の胸に右膝を乗せて背もたれに抑え込んだ。左手はしっかりと繋いでいるが、はたから見れば江澄が藍曦臣を制圧しているように見えるだろう。
     すっと目を細め、驚きで目を白黒とさせている藍曦臣を見下ろす。
    「ツイスターゲームをやってる場合じゃないだろう。俺たちは」
    「……ツイスターゲームはいや?」
     眉を下げる藍曦臣に江澄は首を横に振った。
    「そうじゃない。そこじゃない。やるのは別に構わない。でも、その前にもっとやるべきことが俺たちにはあると思う。俺はあなたに触れたいし、あなたにも触れて欲しい」
     こんな風に、と乗り上げて抑えていた右膝をおろし、繋いだ手を離してソファに座る藍曦臣の膝の上に座るような形で抱きしめる。一瞬、やめろ、と拒絶されたらどうしようかと不安が頭をよぎったが、これで拒絶されるのならば、これ以上はないのだと諦めればいいだけだと、開き直る。首に顔を埋めると息を吸い込んだ。藍曦臣が纏う香水の香りが鼻孔をくすぐる。甘い香りにくらくらとしそうになる。
     数秒してから、ゆっくりと藍曦臣の両手が江澄の背中に回る。江澄は吐息をこぼして、身体の力を抜いた。
    「俺は、男と付き合うのは……あなたが初めてだ。だから、あなたとすることは大体全部、初めてだと思う。それじゃ駄目か?」
     首から顔を離して、藍曦臣の顔を覗き込む。藍曦臣が小さく首を振って、困ったように笑った。
    「駄目じゃ、ないです。あなたが誰ともやってないことを、やりたいというのは本心ですが、あなたに触れる切っ掛けが欲しくて。それで……ツイスターゲームとかいろいろ候補を上げました」
    「触れる切っ掛け?」
     藍曦臣の言葉に引っ掛かりを覚えて、江澄は、ツイスターゲーム以外に上げられた候補を思い出す。確か、他にはダイビングだとか、スカイダイビングだとか、ワルツだとか言っていた気がする。確かにどれも、身体の一部に触れたとしてもおかしくない。くっと喉の奥から笑いがこみ上げる。
    「あはは。馬鹿だな。あなたは。そんなまだるっこしいことをする必要はないんだ。素直にこうすれば、いいと思う」
     藍曦臣の首に回していた手を離して、そっと頬に触れた。藍曦臣が目を細めて嬉しそうに江澄の手に頬を擦り付けてくる。
    「本当ですね。あなたの言う通りだ」
     私も触っても? と伸びて来た手に江澄は、自ら頬を差し出した。

     膝の上から降りて、隣に座りその身を寄り添わせる。最低限今夜進めたい、と思っていた目標まで進むことができ、江澄はすこぶる機嫌がよかった。床には結局踏まれることのなく、皺もできていないツイスターゲームのマットがいまだ敷かれている。
    「せっかく買ったツイスターゲーム。どうしましょうね。今度、忘機と魏さんがいる時にでも4人で遊びますか?」
     藍曦臣がソファから立ち上がり、ツイスターゲームのマットを拾い上げ、片付け始めながら言った。江澄は今この場にいない藍忘機と魏無羨を思い浮かべ、四人でツイスターゲームに興じる姿を想像してみる。すぐに首を振った。
    「やめておこう……。あの恥知らずどものことだ。藍家対江家でやるとして、藍忘機と魏無羨を対戦させれば、ツイスターゲームの途中で何をしだすかわからん」
    「ははは」
    「俺とあなたが組んだとして、絶対藍忘機は俺と魏無羨の対戦は嫌がるだろう。となると、藍忘機と俺が対戦することになるわけだが……。血を見るぞ?」
    「それは、穏やかじゃないね。じゃあ、やめておこうか。せっかく買ったんだけど」
    「クローゼットの奥にでもしまっておくがいいさ。そのうち出番が来ることもあるだろう。それよりも、これからどうするんだ?」
     ツイスターゲームをしまって、ローテーブルも元の位置に戻し、江澄の隣に戻って来た藍曦臣の肩に頭を乗せて江澄は尋ねた。映画でも見るか? そんなつもりで口にした言葉だった。
    「うん。そうだな。キスをしても?」
     伸びて来た手に頬をとらえられ、答えを言う前に口そのものを塞がれる。さっきまでまだるっこしいことばかり考えていたのは誰だと思いながらも、求めていたものに、江澄は素直に目を閉じた。
     結局その晩、江澄は抱かれ、男でも女でも家族でも誰にもされたことがないこと、したことがないことを、藍曦臣とすることになった。
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    sgm

    DONE去年の交流会でP4P予定してるよーなんて言ってて全然終わってなかったなれそめ曦澄。
    Pixivにも上げてる前半部分です。
    後半は此方:https://poipiku.com/1863633/6085288.html
    読みにくければシブでもどうぞ。
    https://www.pixiv.net/novel/series/7892519
    追憶相相 前編

    「何をぼんやりしていたんだ!」
     じくじくと痛む左腕を抑えながら藍曦臣はまるで他人事かのように自分の胸倉を掴む男の顔を見つめた。
     眉間に深く皺を刻み、元来杏仁型をしているはずの瞳が鋭く尖り藍曦臣をきつく睨みつけてくる。毛を逆立てて怒る様がまるで猫のようだと思ってしまった。
     怒気を隠しもせずあからさまに自分を睨みつけてくる人間は今までにいただろうかと頭の片隅で考える。あの日、あの時、あの場所で、自らの手で命を奪った金光瑶でさえこんなにも怒りをぶつけてくることはなかった。
     胸倉を掴んでいる右手の人差し指にはめられた紫色の指輪が持ち主の怒気に呼応するかのようにパチパチと小さな閃光を走らせる。美しい光に思わず目を奪われていると、舌打ちの音とともに胸倉を乱暴に解放された。勢いに従い二歩ほど下がり、よろよろとそのまま後ろにあった牀榻に腰掛ける。今にも崩れそうな古びた牀榻はギシリと大きな悲鳴を上げた。
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    sgm

    DONE江澄誕としてTwitterに上げていた江澄誕生日おめでとう話
    江澄誕 2021 藍曦臣が蓮花塢の岬に降り立つと蓮花塢周辺は祭りかのように賑わっていた。
     常日頃から活気に溢れ賑やかな場所ではあるのだが、至るところに店が出され山査子飴に飴細工。湯気を出す饅頭に甘豆羹。藍曦臣が食べたことのない物を売っている店もある。一体何の祝い事なのだろうか。今日訪ねると連絡を入れた時、江澄からは特に何も言われていない。忙しくないと良いのだけれどと思いながら周囲の景色を楽しみつつゆっくりと蓮花塢へと歩みを進めた。
     商人の一団が江氏への売り込みのためにか荷台に荷を積んだ馬車を曳いて大門を通っていくのが目に見えた。商人以外にも住民たちだろうか。何やら荷物を手に抱えて大門を通っていく。さらに藍曦臣の横を両手に花や果物を抱えた子どもたちと野菜が入った籠を口に銜えた犬が通りすぎて、やはり大門へと吸い込まれていった。きゃっきゃと随分楽しげな様子だ。駆けていく子どもたちの背を見送りながら彼らに続いてゆっくりと藍曦臣も大門を通った。大門の先、修練場には長蛇の列が出来ていた。先ほどの子どもたちもその列の最後尾に並んでいる。皆が皆、手に何かを抱えていた。列の先には江澄の姿が見える。江澄に手にしていたものを渡し一言二言会話をしてその場を立ち去るようだった。江澄は受け取った物を後ろに控えた門弟に渡し、門弟の隣に立っている主管は何やら帳簿を付けていた。
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