お願い、欲しがって 人形のメンテナンスを生業にしてる治♀。ある日路地裏で片脚が欠けて顔もひび割れてボロボロのすなちゃを拾う。店に帰って修復とメンテナンスしたら目を覚ましたすなちゃ。棄てられたのはわかりきったことだったのでなにも訊かないと決めた治♀が最初に口にしたのは「自分、綺麗やなあ」だった。
人間そっくりの人形が世に出まわって久しいし、仕事柄数多くの人形を見てきた治♀。すなちゃはスタイルはいいが胸は控えめだし、飛び抜けて美人なタイプではない。でも、その表情と雰囲気が治♀の琴線に触れた。
切れ長の目許とミステリアスな雰囲気、そしてなにより肌がおそろしく人間に近い。それなりの高値をつけられていただろうに、どうしてあんな無惨な姿にされたのか。どうせ人間の女と同じように扱って、人間と人形の決定的な違いに勝手に苛立って手をあげたのだろう。考えるだけでも胸くそ悪い。
「好きなだけここにいてええから」
治♀が言ったのは、それだけ。それから治♀とすなちゃの生活が始まる。
初めは警戒心剥き出しだったすなちゃも、美味しそうにご飯を食べる治♀を見て気が抜ける。治♀は料理上手で、作ってくれるものはどれも美味しかった。治♀の店も手伝ったりして、一緒にお風呂に入ったり眠るまでベッドの中でお喋りしたりと楽しい日々。次第に治♀が好きになるも、前回の持ち主のトラウマから前に踏み出せないすなちゃ。それでなくても自分は人形で、先のことを考えるなら治♀は人間の男と付き合った方が幸せだよねと考える。
「…治って、好きな人とかいないの?」
美人で食べる姿は可愛くてスタイルもいいし、なにより人形のメンテナンスの腕も確かだ。どうしてこんないい子が一人でいるんだろう。ああ、私が知らないだけで彼氏くらいいるのかも。
「……それ、本気で言うとるん?」
「え…?」
「私が誰のこと好きか、ほんまにわからへんの?」
治♀的にはすなちゃが好きすぎて、ずっと一緒にいたくていっぱい尽くしてきたつもりだった。ご飯を作るのは好きだけど、それはすなちゃが嬉しそうに食べるのが見たかったのもあるし。常に傍にいて離れず、お風呂や寝る時もずっとずーっと傍にいたのは、すなちゃが治♀に依存して離れようなんて思わなくなればいいなと思ったから。
「…私、人形だよ?」
「そんなん関係ないわ。角名は角名やもん」
「……ずっと、一緒に、いていいの?」
「一緒におって。角名と離れるとか考えられへん」
それから恋人になって、触れ合いが増えてく二人。キスだけじゃ足りなくてえっちしようとするけど、すなちゃが嫌がる。私はなにも出せないから、と。
ものを食べたり受け入れることはできても、なにかを出すことはできない。汗も涙も出せなくて、当然ナカが濡れるなんてこともない。人形なら当然のことで、それに激怒して前回の持ち主に棄てられたのに。
「それでもええよ。角名には私のこと全部見てほしいし、角名のことも全部知りたいねん」
服を脱ぎながらキスをして、互いの肌を触って高めていく二人。気持ちよさそうな治♀に嬉しくなるすなちゃ。
「治、気持ちいい?」
「ん…、気持ちええよ。角名は?」
「治が気持ちよさそうで嬉しい」
「角名も気持ちよくなって…」
舌を絡めてするキスが気持ちよくて蕩けてくるすなちゃ。二人してベッドに沈んで横向きに向かい合いながらも愛撫はやめない。
この後は二人でらぶらぶちゅっちゅして夜を越すのです。にょたえろ難しいので断念。