それを何と呼ぶ 雨が降っている。
この冷え込みではそろそろ雪へと変わるだろう。
垣根の椿はしとどになり、明日の明けを待たずに地へ落ちる。赤く色づいていた様子が見事であっただけに残念だ。
はて、この感情はどの代の当主から教わったのだったか。
そんなことを考えながら窓から視線を戻す。
眼前で悩み唸る現当主はそれに気づくことなく朝を迎えるだろう。そうして、落ちた椿に雪が積もるのを見て彼もまた、残念に思うのだろうか。
パチリと駒音が響く。
それを一暼、すぐにパチリと返してやると、家主は唸って宙を仰ぎ、石油ストーブの火にかけたヤカンのお湯がグラグラと音を立てていることに気がついた。
「ちょお待ってや」と言うと準備していた急須に注ぐ。正しい茶の淹れ方など知らず、ただただ熱い茶の入った湯呑みを2つ作る。
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