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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    ロカとマト。ロカを助けるマト

    空中散歩 それは一瞬の出来事だった。四人で草原を歩いていたら、突然に飛んできた魔物にロカが攫われた。
     あまりに一瞬の出来事だったので、アバンもレイラもマトリフも、何が起こったのか理解した頃には、ロカははるか上空にいた。見たこともないほど馬鹿デカいオオガラスが足でロカを掴んでいる。
    「マジかよ」
     マトリフはすぐに呪文で飛び上がった。追いつこうと全速力で飛ぶが、オオガラスの飛ぶ速度は速い。見失わないように必死でついていく。それでも追いつけず、マトリフはロカに当たらないように呪文を唱えてオオガラスの気を引いた。
     オオガラスはマトリフを認識すると鋭い鳴き声をあげる。向きを変えて突進してくるオオガラスに、マトリフは身をかわして避けた。
    「お、落ちる!」
     ロカが声を上げる。剣を抜いていたが、無闇に攻撃して落下したら大変だとわかっているだろう。
    「落ち着け。オレの合図で足に攻撃しろ!」
     マトリフはロカに聞こえるように声を張り上げる。ロカは初めて見るだろう空の高さに体がすくんでいるようだった。飛んでいるうちにいつの間にか海に出ていたが、いくら下が海でもこの高さから落ちたらただでは済まない。
    「そんなことしたら落ちるだろ!」
    「ちゃんと受け止めてやらぁ!」
     マトリフはオオガラスの周りを飛び回りながら機会を伺う。マトリフは高く飛んでから宙返りをして急降下した。
    「今だ!」
     マトリフの合図にロカが剣でオオガラスの足を斬った。オオガラスは痛みに足を開く。同時にロカが空中に放り出された。
    「うわぁああああああ!!」
     放り出されたせいで予想していたよりも落下位置がずれていた。ロカは大声を上げて落下する。マトリフは全力で飛んで手を伸ばした。
    「マトリフ!」
     ロカが伸ばした手を掴む。しかし落下の勢いと重さに、マトリフもつられて落下した。
    「クッッソ!!」
     マトリフは魔法力を全放出させて落下の勢いを止めた。
    「……セーフ」
     ロカをぶら下げたままマトリフは息をついた。オオガラスはどこかへ飛び去ったらしい。
    「助かったぁ……」
    「じっとしろ。バランスが取れねえ」
     ロカをぶら下げたままではトベルーラで飛べそうにない。かといってこのままルーラでアバンとレイラの元へ戻るのも無理だった。咄嗟に飛び出してきたのでさっきいた場所をイメージできない。
    「ロカ、オレの背中までよじ登ってこい」
    「え?」
    「背中に乗られるほうがバランスがいいんだよ」
     ロカはなんとかマトリフの背中まで登った。マトリフはロカの手を掴むと落とさないようにゆっくりと飛ぶ。せめて岸までは飛ばなくてはならなかった。
    「重くねえか?」
     ロカが心配したように言う。鎧もつけているから随分と重いはずだった。
    「呪文で飛んでるんだから平気だっての」
    「そういうもんなのか?」
     本当は重さが増えるから魔法力の消費も多い。残りの魔法力で岸まで飛べるかわからなかったが、そんなことをロカに言ったら自分は置いていけなんて言い出すに決まっていた。
     そのまま飛んでいると、ロカがぽつりと言った。
    「空ってこんなに高いんだなあ」
    「なに呑気なこと言ってんだ」
    「マトリフはこんな綺麗な景色も知ってたんだな」
     ルーラさえ知らなかったロカには空は見上げるものでしかなかった。たとえ山に登っても、空を飛んで見える景色とはやはり違った。
     マトリフは空を飛べなかった頃のことを思い出せない。空の綺麗さなんてすっかり忘れていた。
     あらためて見た空は綺麗だった。ロカの言葉がなければそんなことにも気付かなかった。
     飛び続けるうちに岸が見えてくる。その海岸にアバンとレイラがいるのが見えた。飛んだ方角を追ってきてくれたらしい。ロカが大きく手を振りながら声を上げていた。
    「じっとしてろ」
    「これっていつもと逆だな」
     ロカがふと気付いたように言う。
    「逆?」
    「いつもはオレがマトリフをおぶっているだろ」
     体力がないマトリフをロカが背負うのはいつものことだった。確かにそうだよなとマトリフも思う。
    「今度からオレが疲れたらマトリフにおぶってもらおうかな」
    「ばか言ってんじゃねえよ」
     マトリフはなんとか砂浜に着地した。アバンたちが無事で良かったと言い合う。マトリフは帽子を脱ぐとロカへ押し付けた。
    「オレはもう一歩も動けねえぞ。さっさと担いでくれ」
    「わかってるよ」
     ロカは簡単にマトリフを肩へと担いだ。いつもよりも高い視界。しかし脚はしっかりと地についている。やはりこちらの方がいいとマトリフは思った。
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