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    sumire421232

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    殺し屋パロの続き?です

    #東カラ
    karaEast

    東カラ殺し屋パロ2「おーいいるかー」
    山奥のログハウスを訪ねてきたのは、背の低い、スキンヘッドの男だった。小学生のような背丈と何年たっても変わらない容姿のため一見すると少年に見られがちだが、年齢は東郷より少し下くらいの中年だった。
    名前はチビ太という。もちろん本名ではなく、ボスに名付けられたコードネームのようなものだった。ハゲ男とチビ太どちらがいいと言われたのでしぶしぶ後者を選んだだけでまったく気に入っておらず、名前を呼ばれると不機嫌になる。ボスの名づけは適当で、東郷も10月5日に組織に加入したから東郷、カラ松に至っては拾ったその場に落葉松の樹があったからカラ松になったという、本当に意味をなさないようなただの呼び名であった。
    そのチビ太はドアを3回叩き、返事を聞かずに勝手に開けて入って来た。
    中には銃の手入れをしている男がいた。東郷。この家の主だ。
    主と言ってもカラ松の訓練をするための場所であり、本拠地にしているわけではないがここ数か月はこのログハウスに入り浸りであった。
    「片づけといたぞ」
    「おう」
    東郷はテーブルで分解している銃を組み立てながら、目線を寄こすこともなく、足元にある黒いバッグを投げつけた。
    「ほら」
    「足りねえよ」
    「あ?いつも200だろ」
    ここで初めて怪訝そうな視線を投げかける。
    チビ太はテーブルを挟んだ向かいに座り、煙草に火をつけた。
    「馬鹿か。お前今日の死体はなんだよ。あんだけぐちゃぐちゃにしといて清掃代200で足りるわけねえだろ」
    「あー」
    東郷は納得したように返事をして、おらよ、と金庫から取り出した札束を投げ捨てる。
    「毎度」
    チビ太はそれを拾い集め、黒いボストンバッグに詰め込んだ。
    「ターゲットによっぽど恨みがあったんだな。あんなよくわからん死体は初めてだ」
    「ターゲットなんか知らねえよ。……新人にやらせたんだ」
    「新人? ああ、……そういや、どっかで拾ったガキを飼ってるっつってたな。いや、ボスから押し付けられたんだっけ」
    組織に所属しているとはいえ基本的に一匹狼の東郷らしくない、と思った。子育てや子守をする性格ではないし、ただの弾避けだとしてもここまで長続きするのは意外だった。短気で飽き性で気に入らないことがあるとすぐ殺すで有名な東郷とそりがあう人物等この世にいるのだろうか。
    「初仕事だから掃除人の仕事のことまで考えられなかったんだろ」
    「ちゃんと教育しとけよ。殺して終わりのお前らなんかより掃除人の方がよっぽど大変なんだからな」
    チビ太は煙草を吸いながら、東郷の手元を見た。バラされたベレッタから血の匂いがする。
    「にしても、あの死体はなんだ。5人って聞いてたのにほとんど手足も頭もバラバラで内臓も飛び散ってて、……いつもの3倍時間かかったぞ」
    「悪かったな、あとで言い聞かせとく。学習能力ねえからお仕置きも必要かもな」
    「お仕置き、ね……」
    意味深な単語に、チビ太はやはりイロとして置いているのだろうと思った。
    「まあそれはいいけどよ。死体は一応人間とわかるくらいの損傷具合だった。粉微塵でもないから爆発物にしちゃ威力が弱いが……500マグナムにしては強すぎる。あんな狭いとこでライフルやマシンガンは使えねえだろうし……」
    詳細を言いたくなさそうな東郷とは反対に、チビ太は早口で推理を捲し立てる。掃除のプロにとってもよほど不思議な損傷具合だったのだろう。
    「その小僧が使ってる獲物はなんだ」
    「ベレッタだ」
    「嘘つくなよ。普通の9ミリフルメタであんな変死体ができあがるはずねえだろ。改造した小型手榴弾か何かだろ」
    東郷はため息をつくと、手元のベレッタから弾倉を取り出し、そこから3つほど弾を落とした。カラン、と音がしてチビ太の目の前に転がる。
    「なんだこれ」
    「よく見ろ」
    見た目は通常の9ミリ弾だが、よく見ると弾頭外層に細かな切れ込みが入っている。切れ込みは非対称で複雑な形状をしており、ひとつひとつ形が違った。
    ――エクスパンディング・フルメタル・ジャケット。通称EFMJ弾。どんな物体にあたっても拡張し、破裂することで威力を増大させる特殊細工弾だ。対象物にかすめたり人間の胎内に食い込むと切れ込みが大きく変形し、強烈なキネティックパワーを生み出す。損傷威力は通常の弾丸の5倍ともいわれている。中の弾薬が爆発すると同時に切れ込みも飛び散り弾丸を受けた対象者に致命傷を負わせることができるという仕組みだが、その切れ込みの手間は相当なもので、一つの弾に細工するだけで数日かかる。切れ込みの数は数100にも及び、ひとつでも浅いと威力は通常より半減する非常に作りづらい特殊弾。
    その爆発力は手榴弾に近く、太ももに当たっただけで足そのものがちぎれ飛び、耳を掠めただけで首が吹っ飛ぶほどだ。
    損傷が派手なため軍隊での拷問や捕虜への見せしめに使用することはあるらしいが、隠れることが本業の殺し屋が使うものではない。
    ――実物は初めて見た。チビ太は唾をのむ。
    「あいつは1・1の対人格闘は得意だが獲物を使った複数の狙い撃ちは死ぬほど下手だからな。この弾を使えば掠めただけでも仕留められるし傷口が修復不可能なほど損傷するからどこを狙っても出血多量で殺せる。この弾があるだけでドヘタクソの馬鹿でも猿でも暗殺に使える簡単な銃になるってわけだ」
    「すげえな。ハンドメイドかよ。そのガキがひとつひとつ彫ってるのか?」
    「彫ってんのは俺だよ」
    「えっ」
    意外な返答に思わず素の声が出る。
    「うっそだろお前……。他人のためにちまちまお裁縫する性格だったか?」
    「うるせえな」
    「気に言ってんのかイロにしてんのか知らねえが、過保護すぎねえか」
    やはり東郷は変わった。その子どもの影響かは知らないが、以前は人のために何かをしてやる性格でもなかったことは確かだ。
    「でもエクスパンドってジャムったら終わりだよな」
    チビ太は弾をひとつ手にとり、切れ込みを見つめる。
    弾詰まりや暴発をした際には自分の手首も吹っ飛び、修復不可能なほどの傷により出血死もしくはショック死することは安易に想像がついた。殺傷能力が高いにも関わらず紛争現地で実践用として使われない理由はそこにある。死の危険性と隣り合わせだからだ。
    「ああ。そのときはそのときだ。運がなかったってことだからな」
    「マジかよ」
    「運なく敵に捕まったときもできるだけ周囲の人間を巻き込めるように脳天ぶち抜いて死ねと教えてある」
    東郷は取り出した弾をまた断層に詰め、組み立てたベレッタに入れた。セーフティーをかけて、柔らかなタオルで磨く。
    「脳ミソは豆腐みてえに柔らかいし、頭蓋骨もヒビがはいりゃすぐ崩れるからな。貫通して弾丸の破片が周囲に飛び散って運が良ければ1,2人は殺せる。情報も洩れないし、一石二鳥だ」
    「……いつものお前で安心したよ。全然過保護ではないな…」
    チビ太は呆れ半分で笑った。

    そのとき。後ろのドアがキィ、と開く音がした。
    「東郷さん。今日の夕飯、……」
    奥の部屋から顔を半分のぞかせたその少年こそ、「東郷が飼っているガキ」であるとわかった。
    どこにでもいそうな黒髪に、青いパーカー。
    あどけない表情ではあるが、身体つきは少年というより青年に近かった。
    東郷の先にいるチビ太を認識した瞬間瞳孔が細まる。
    「!」
    すぐに殺し屋の目になり、尻のホルダーに手をやった。
    「ただの掃除人だ。身構えるな」
    東郷の言葉に、その子どもは緊張をとく。東郷によっぽど懐いているらしい、ということはその表情の変化でわかった。
    「今日お前が散らかしたやつらをバラしてゴミに出した男だ。よろしくな」
    「あ、…」
    チビ太がにこやかに挨拶すると、
    「ありがとう、ございます。よろしく」
    と、カラ松もおずおずと部屋から出て来て、チビ太に頭を下げた。
    「カラ松です」
    「ああ」
    「えっと、名前は……?」
    「………」
    「こいつは名前を呼ばれるのが嫌いでな。チビでもハゲでも好きなように呼べ」
    「ふざけんな! …チビ太だよ、よろしく」
    手を差し出せば、カラ松は迷わず笑顔でぎゅっ、と手を握ってきた。
    「チビ太」
    さんづけしろよ、と思ったが言わないでおく。
    そして同時に、この純真さでは長生きできそうにないな、と、柔らかな手に触れながら思った。
    裏組織の人間なら誰しも、見知らぬ男に手を出されても触らない。自身が殺される可能性をすべて考えて行動する。たとえ手をさしのべた人間が信頼のおける上司の仲間だとしても、ボスの友人だとしても、絶対にだ。
    (東郷にまともな教育をうけていないのか?)
    いや、受けていたとしてもすぐ忘れてしまうほど無垢なのかもしれない。そういえば先ほど東郷は学習能力がないと言っていた。
    何かが抜けているのかもしれない。このこともあとでお仕置きされてしまうのだろうか。
    しかしそれは自分には関係ないことだ。人の家の教育方針に口を出すほど野暮でもない。
    チビ太は何も言わなかった。
    「向こう行ってろ。すぐ終わる」
    「わかった。――あ、そうそう、今日の夕ご飯はハンバーグにしてもいいか? 良いなら作っておく」
    「好きにしろよ」
    カラ松は「やった」と笑顔を見せて、そしてまた向こうの部屋に消えて行った。
    「人間をぐちゃぐちゃのミンチにしたあとにハンバーグかよ。ずぶてえガキだな」
    「ちょっとサイコのケがあんだよ。長生きはできんだろうが、殺しには向いてる」
    ベレッタを磨き終えた東郷は、革のホルダーに入れてそれをしまった。ホルダーは青いスパンコールでデコレーションされており、これもあの子供の趣味なのだろうか、とチビ太はそれを見つめた。
    「そういやあのガキ。左手の中指と小指が折れていたぞ。利き手の方も治ってはいるが折れ癖がついてる」
    「目ざといな」
    「握手するとき中指の第二関節が微妙に出張っていたからな。――あれは?」
    「失敗したら1本折ってる」
    「本当のお仕置きじゃねえか。お仕置きって夜のことだと思ってたぜ」
    「夜の方もやってるけどな」
    「容赦ねえなぁ」
    溺愛してるのか、厳しいのか、いよいよわからなくなってきた。
    しかし東郷は躾はきちんとしているようだった。ならなおさら、失敗ばかりの子どもを置いておく意味もわからないし、痛い思いをしてまで失敗を繰り返すガキの方も理解できない。よっぽどのバカならこの東郷の性格的に、すぐに切り捨てているだろう。
    「用も済んだんなら帰れ。これから夕食とお仕置きと、ご褒美の時間だからな」
    はいはい、と適当な返事をしながらチビ太は思う。
    もしかしたらあの子どもは、東郷に触れてほしくてわざと失敗をしてるのではないか――、と。
    そして東郷はその意図に気づいて、応えているのではないか。
    歪んだふたりの影が瞼に揺れる。
    (ま、オイラにゃ関係ねえか)
    このふたりにはあまり深くかかわらないでおこう。チビ太は金の入ったバッグを担ぐと、血の匂いが漂うログハウスを後にした。
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