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    zeana818

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    月鯉小説書いてます

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    zeana818

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    高3主将DF島と高2FW之進です。
    サッカーの知識は無くはないけどだいぶ古いことなので〜wまあ内容的にはそんなの関係ないかな…

    #月鯉
    Tsukishima/Koito

    青い冬 ホイッスルが鳴り響く。短く、短く、長く。歓喜と落胆と、なんだかわからないため息が、一緒くたになって冬の空に溶けていく。
     負けた。敵のチームは狂喜乱舞して、抱き合っている。高校サッカーの集大成、冬の選手権の準決勝、上には上がいる。大会で負けないのはたった一校だ。
     主将の月島は荒れたフィールドにひっくり返って空を仰いだ。この荒れ具合は、どれだけゴール際での戦いが激しかったかを物語っている。DFの月島の戦場だ。
     東京は冬でも晴れると聞いていたが、こんなにもスコンと真っ青ではるか彼方まで見通せそうな空は初めてだと月島は思った。
     生まれ故郷の新潟の冬の空は大抵曇天で、雪も降ればまず見上げるなんてことはしない。スカウトしてくれた高校のある旭川もそう変わらない。外に居ればたちまち睫毛まで凍る。自分は坊主だからそんなことはないが、鯉登は髪も長いから凍って痛いとよく月島の元に逃げ込んできた。
     ——試合に負けたのに、まず考えたのが鯉登のことかよ。
     自嘲して笑った。これが最後の試合だ。本気でやるサッカーはこれで終わり。推薦もらった大学に行って、就職しよう。この数年、最高に幸せだった。この思い出だけで後の人生暮らしていける。
     二年生エース、FWの鯉登の元には、既に強豪の大学からも、プロからも誘いが来ている。まだ卒業には一年もあるのに、やはり突出した才能には誰もが飛びつく。どこに行くのかは、この選手権が終わるまで返事を待ってもらっている状態だ。おそらくオファーはもっと増えるのだろうと予想できるくらいには、鯉登は活躍した。この試合に負けなければ、得点王を取れたはずだ。
     ——足を引っ張ってしまったな。キラキラした経歴に傷をつけてしまったかも。鹿児島からわざわざ来たのにな……。
     月島は、DFとしては身長が少し足らなかった。あと十センチ成長できていれば、選手として全然違ったろう。成長期でも中々伸びなかったのが悩みだった。ただ、根性と足腰の強靭さとリーダーシップでそれを補った。
     それももうお終い。深く息を吐いた。後悔はない。精一杯やったから。
     寝っ転がっている月島の頭の方から、ぴょこっと逆さまに顔が出てきた。鯉登だった。
    「月島」
    「おう」
    「お疲れ」
    「……お前も」
    「うん」
     鯉登は、一年生で入学してきた時から誰にも敬語を使わない。選手として尊敬できない人間を先輩などとは思わないと公言していた。上下関係の厳しい部活動では、全くもってあり得ないことだ。無論、反発も衝突も数限りなくあったが、月島の仲裁と本人の実力でねじ伏せてしまった。
     しかし、そのおかげで上下の風通しが良くなったのではないかと思っている。サッカーの上手さに年齢は関係ない。試合中に年齢まで考えているヒマなどない。遠慮なんぞくそくらえだ。ぶつかりあった成果が、この国立競技場なのだから、鯉登のやり方は正解だった。
    「月島」
    「……おう」
    「好き」
     月島から見て逆さまになっている鯉登の唇がそう動いたのを、ぼんやりと見ていた。起きろとか、行くぞとか、そんな感じの言葉を言われると思っていたので、全く意味が取れなかった。
    「は?」
    「好きだ」
    「……はあ?」
    「好! き! だ!」
     慌てて身を起こした。突っ立って、自分のユニフォームの裾をぎゅーっと握りしめている鯉登は怒ったような顔をしている。
    「こんなとこで何言ってんだよ……」
    「この大会が終わった瞬間、言おうと思ってた。今勝ってたら明後日の決勝でだったし、一回戦で負けてたらその時だった。言うの恥ずかしいから、できるだけ勝ちたかった」
     ——真っ赤になっている。本気か。なんでお前が言うんだ。
     そう思ったのが、そのまま口をついて出たら、断られたと思ったのか顔色を変えた。
    「えっ……月島、おいんこつ嫌い?」
     急いで立ち上がる。鯉登の方が背が高い。入学当時はひょろりと上にだけ成長していたが、月島の指導のもと、しっかり筋肉もついて当たり負けしなくなった。更に身長も伸びたので、文字通り大型FWともてはやされている。そんなに大きいのに、うるっと眉を歪ませると、途端に幼くなる。月島には放っておくことができない。
    「そんなこと言ってないだろ」
    「じゃあ好きか?」
     ——はあああ……っと、肺の中の酸素を全部吐き切る勢いでため息をついた。
     もうどうにでもなれ、だ。今、月島は『人生の集大成』なのだ。言っておけばよかった、しておけばよかった、そんな後悔はしたくない。
    「好きだよ」
    「だよな! だと思っちょった!」
     ぴょんと飛びついてくる。月島は苦もなく腹の上に乗せるように抱え、鯉登は太くて強靭な胴を足で挟んだ。実に安定している。
    「なんだよ、だよなって……」
     大きな身体を抱えたままで、最後の礼の整列場所に移動する。同じ学校の連中は見慣れた光景だが、他校の生徒はそうもいかない。ざわざわしている。
    「だって、月島、おいんこつ絶対好きじゃろ。わかっちょった。でも、部内で恋愛禁止だから……」
    「あのなあ、それは女子マネとの話だ」
    「えっ! 選手同士ならよかと⁈」
    「……あんまりそういうケース、考えないだろう」
    「そうかなあ」
     呑気なものだ。列までついて、鯉登を降ろして、最後の礼をした。互いの健闘を讃えあうにも敵チームは完全に奇異なものを見ている目だが、鯉登は全く意に解していないし、目が合ったらニコッと笑って「決勝頑張れな!」と労ったりしている。笑いかけられた方は、そのあまりの輝きっぷりに目を白黒させていた。とても負けたチームの選手とは思えないのだろう。
     鯉登にとっては、高校選手権準決勝といえど『試合の一つ』でしかないのかもしれない。完全なる強者だ、と月島は思った。鯉登の前には真っ直ぐで盤石な道が見えているのだ。
     あー負けたー! と嘆きながら、スタンドの応援席にも礼をして手を振った。エールが飛んでくる。実にありがたかった。いい試合だったと思う。帰り支度をしながら、鯉登がうきうきとくっついてきた。
    「なあ、月島、進路どこがいい?」
    「俺の大学は推薦でもう決まってるが……」
    「あんな、おいんとこに来てるスカウトに、月島を先に取ってくれって言ってる。承諾してるとこもいくつかある」
    「はあ⁈ なんで⁈」
     驚きすぎて声がひっくり返った。
    「だって、月島がおらんとこに行っても、上手くやれる気がせんもん。それに、お前の今回の活躍を見て評価してくれたんだぞ」
     月島は頭を抱えた。確かに、大学だろうがプロチームだろうが、先輩と去年みたいな確執をまたやると言うのも大変だ。しかも月島のフォロー無し……。
    「な? 月島がおったら、おいはどこでも構わんのじゃ。どこがええ?」
    「……通った推薦蹴るのは無理だ。下級生にも障りが出る」
    「そっか。どこだ」
    「D大……」
    「じゃあ、そこにする」
    「でも、サッカーそんなに強くないぞ」
    「よかよ。二人でイチから強くしよまい。ハナから強かとこ行ってもつまらん」
     けろりとしている顔を見ていたら、それも面白いかもしれないと思えた。
    「……FWとDFだけだと少し難しいな」
    「ふむ。じゃあ、ユースで一緒になったMFとGKにも声かけてみっか。あいつらも変わりもんのはみだしもんじゃで、恐らく苦労しちょっど」
     ユース合宿で殴り合いの喧嘩になったMF杉元と、太り過ぎで泣きながらシゴかれていたGK谷垣のことだろうか。確かにあいつらはかなり戦力になるだろう。
    「……楽しそうだな」
    「だろ!」
     終わってしまったと思っていた道が、また開けた。あっけらかんと突き進む鯉登が、月島の手をぐいぐい引いていく。
     そうか、自分が開いていくだけじゃあないか……鯉登の指し示すのは、月島には思ってもみない新世界だ。鯉登なら、王道ではない道をたどっても、結局は開けた場所に行くのだろう。
     それもまたいいかもな、と二人で歩く行く末を楽しみだと月島は思った。
     
       
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    zeana818

    PROGRESSこれは叩き台になるので、かなり方針変えるヨ!書いたから読んで欲しかっただけです。
    DK鯉がとある研修に行く話。
    どうしても鯉にふ〜ぞくで働いて欲しいんだけど、そんな感じじゃないじゃないですか。そんな悩みをtみさんにこぼしてたらoしゃさんが「世界を変えるのです」(救世主の構えでピカーと輝きながら)と仰るので…そういえばmっこさんと施行させた法令があった!わしの周りには天才ばかりですね!w
    大人になるために必要な幾つかのこと 昭和八十一年、とある法令が施行された。
     政府の懸念事案であった少子高齢化は、ある時深刻な転換期を迎える。女子の出生率が全体の三分の一を切ったのだ。一時的なものではという楽観論は、すぐに覆される。年々低下の一途を辿り、さすがに何か手立てを打つべきと論議が重ねられるが、生憎男女の産み分けは神の領域である。ヒトの手で左右できるものではなかった。
     同時に婚姻率も徐々に下がっていったのは自明の理であるが、意外な弊害が出ることになる。性犯罪が増えたのだ。また、他の犯罪に至る動機も突き詰めれば、性欲を解消できない不満にあった。
     女児は産まれた時点で嫁入り先の打診がされる。当然のことながら富裕層に限られるので、一般的な家庭の男性は、よっぽどの縁がなければ生涯独身か、同性相手をパートナーにする他ない。
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