無題 白膠木簓は太陽が似合うと、皆口を揃えて言う。溢れんばかりの笑顔と愛嬌、それに明るい笑い声にトーンの高い声色。太陽、もっと言えばオレンジ色がここまで似合う奴もそういないと。それは空却も同意だ。
だがそれは実際のところすべてが計算で、そう印象を抱くよう誘導されていることを空却は知っている。テレビに出るような人間など大なり小なりそんなものだろう。だが簓はそれどころか、むしろ本当は太陽を疎ましく思っているのではないか、と空却は思っている。というのも、簓はきっちりと着こんだワイシャツの襟首を緩めることも、上着を脱ぐことも基本的にしない。極力外には出たがらず、ずっと日陰を選んで歩く。
では曇りの方がいいかというとそんなこともなく、曇天には思いきり顔を顰め、雨が降ると不機嫌を隠そうともしない。
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