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    フスキ

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    フスキ

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    ワードパレット、7番「払暁に擁す」たまらない・腕にかかる寝息・触れるだけ、で水麿小説です。明け方に目覚めていちゃこらする話。

    #水麿
    mizumaro

    (ワードパレット・水麿)払暁に擁す(たまらない・腕にかかる寝息・触れるだけ) とても穏やかな夢を見ていた。水心子が笑っていて、何よりそれがうれしくて清麿まで笑ってしまうような、そんな柔らかな世界だった。
     けれどそれは線香花火の玉のようにふつりと落ちて、覚醒していく自分を悟った時にもったいなさで苦しくなった。もっとここにいたいな。水心子が笑っていてくれる世界なんて最高じゃないか。また意識が眠りに沈みかけ、彼の笑顔が見える。そうだこれでいい。ずっと寝ていたいよ……。
    『起きたら、もっといい世界があるぞ』
     耳元で、囁かれたような気がした。

     目を開いた。部屋にはうっすら明け方の気配が差し込んでいるけれどまだ暗い。早く起きすぎてしまったのだ。残念に思う。あんな優しい夢はそうないのに。もっとあそこにいたかったのに、こんな時間に起きてしまうなんて。
     ふと、片腕が痺れていることに気づいた。感覚がない。それからとても身体が温かい。なんだろう、と少し視線を下げてみたら、腕の中に水心子がいた。
     清麿に抱きついて、まだ眠っている。
    「めずらし……」
     思わず小さく漏らしてしまう。いや時間的には寝ていて当たり前だろうけれど、彼はいつだって清麿よりも早く起きるから。寝ている姿なんてほとんど見たことがなかった。
     そういえば昨夜抱き合った状態で眠りについた二人は、見事にそのままの体勢で寝ていたらしい。
     下になった腕は痺れているし、こんな明け方に起きてしまうなんて悔しいのだけれど。
    『起きたら、もっといい世界があるぞ』
    「……ねがお、見てほしかったのかい?」
     微笑んで髪を梳いてやる。覚醒間際のあの囁きは、確かに水心子だった。
     確かに夢なんかよりもずっといい世界だ。大好きな彼と身を寄せ合っていて、普段は見られないその寝顔が見られた。腕にかかる寝息が健やかそのものでとても安堵する。
     けれど己は、触れ合っている状態で起きてしまうともっと深く触れたいと思ってしまうような欲深い刀なわけで。
     枕から頭を下ろし身体を少し下げて、彼と同じくらいの位置まで移動する。――少しだけ、触れるだけ。そう思って、水心子の頬にキスをした。彼は目覚めない。
     ちょっとしたいたずら心も混じっている行動は止まらなくなる。鼻の頭にも唇を押しつけ、額やこめかみにも散らして満足していた時。
     ふいに、くくっと水心子が笑った。
    「……え」
    「ふ、……なんで、口にはしてくれないんだ?」
     おかしそうにそう言って、ゆっくりと翠が開かれるものだから。
    「わ、ご、ごめんなさ」
    「謝らないでいいからさ。ね、口にしてよ、清麿」
     ずいっと顔が近づけられて、寝ていたんじゃと混乱する頭で必死に手を突っ張って抵抗をする。
    「ま、まだ歯を磨いていないから!」
     口元に手を押しつけてそう叫ぶと、彼はきょとんとした。
    「……え、だから、口以外にばっかりしてたの?」
    「そうだよ、……う、いや、まってずっと起きていたの」
    「だって清麿がひとりごと言うから」
     確かに言葉を漏らしてしまった、うっかりと。よく考えればこんな至近距離であんなひとりごとを聞いたら清麿だって起きるだろう。けれどだからって、寝ているふりをするなんて。
     恥ずかしさに頭が茹だって狼狽していると、腕をくんっと引かれた。
    「すい」
    「ねえ、舌を絡めなきゃ大丈夫だと思わない?」
     楽しそうな彼の顔。ああ、いじわるのスイッチが入っている。
    「清麿から、おはようのキス、してほしいな?」
     そんなことを満面の笑みで言われるのだから、たまらないのだ。

     唇に唇で触れる。それだけで離れたのに、水心子は嬉しそうだ。
    「これはいい日になるなあ」
    「恥ずかしいよ……」
    「恥ずかしがってる清麿も、世界一かわいいけどな」
    「……うう……」
     腕の中で彼が笑う。指が愛しげに頬を撫でてきて、ついうっとりと目を細めてその手に懐いた。
     夢の水心子が囁いた、起きたら広がっている『もっといい世界』。
     本当だなあ、なんて思いながら彼を見たら、まるで何もかもを知ってしまっているような夢よりも鮮やかで柔らかな笑顔が向けられていた。
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    フスキ

    DONEまろくんが天使だったパロの水麿、すいくん風邪っぴき編です。
    ひとは弱くそして強い(水麿天使パロ) 僕の天使。嘘でも誇張でもない、僕のために人間になった、僕だけの天使。
     水心子は、ほとんど使っていなかった二階の部屋に籠もり、布団をかぶって丸まっている。鼻の詰まった呼吸音がピスー、ピスーと響くことが、いやに間抜けで、布団を喉元まで引き上げた。
    「……水心子」
     僕だけの天使、が、ドアの向こうから悲しげに呼びかける。
    「入らせて。ね、顔が見たいよ」
     清麿は、心細くて堪らないような声でそう言った。ぐっと息を詰める。顔が見たい、のは、こちらだってそうだ。心細くて堪らないのだって。けれど、ドアを開けるわけにはいかない。
     水心子は風邪を引いてしまった。もとより人である水心子は、きちんと病院に行き診察を受け、薬を飲んで今ここで寝ていられる。けれど、一緒に暮らす清麿は、元が天使だ。医療を受ける枠組みの中にいない。もし彼に移してしまって、悪化してしまっても、水心子には術がない。天使だったのが人になった身なのだ。病院で診られて、もしどこかに普通の人とは違う部分があって、それが発端となり彼を失うことにでもなったら。
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