2025-06-20
時々、皆と話すフリックを外から眺める事がある。傭兵連中なんて大概がやくざで、自分の腕一本で食ってるような奴らばっかりだから、外見はやたらと柄が悪いしでけえ奴らもいっぱいいる。
フリックだって当然鍛えちゃいるけど、傭兵たちの中にまぎれたら何かの間違いみたいに見える。文官が仕事で付き合ってるのかな、とか戦わないんだろ、とかもうさんざん言われているのを見てきた。
傭兵隊を作った時、元から知り合いだった連中はともかく、そとから応募してきたやつらなんて、端からフリックの事を舐め腐っていたのが今はいっそ懐かしい。フリックのそばで、仲良さそうに談笑しているあいつも、注いだ酒を差し出しているあいつも、かつてはそんな舐めた口を聞いていたはずだ。
グラスを傾け、太い腕に分厚い肩、胸と引き締まった太ももと、男くさい連中と、いまだにほっせえフリックが並んでいる。慣れた友人の距離、というにはほんの少しだけ遠いな、となんとなくいつも思うのだ。
まだトランにいたころの俺だと、またもう少し離れていた。あれはフリックがほとんど無意識に取る距離だ。体格的にどうしたって不利なあいつが、安心できる距離。手を伸ばせば届くかもしれないが、伸ばしきってしまうから取れれば勝てる。折れる。そう言う物騒な距離を、フリックは自分より大きな人間に対して無意識に取る。
大概の連中がそう言う距離だから、みなフリックとの距離はそう言うものなのだと認識しているので、波風をたてる事もないよな。
例えば。
ちょっと俺が歩いて行って、皆よりもずっと近い距離でフリックの隣に立っても、あいつが警戒しないさまとか、そう言うのを見せてやりたかったり、とか、そう言う特別さ、なんかをな、たまには見せたほうがいい。