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    chisaorito

    @chisaorito ヴェランをかきます💛💙

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    chisaorito

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    暑い夜のヴェランちゃん。
    ツイッターで呟いたネタです!

    2024/07/10up

    #ヴェラン
    veranda

    【ヴェラン】熱帯夜「ランちゃーん!」
     バーンという大きな音がして扉が開いたかと思えば、そこには枕を持ったヴェインが立っていた。
     正確には左の脇に枕を抱え、右手にピッチャーとグラスを載せたトレーを持っている。
     ここは俺の部屋で、時刻は夜中。俺はベッドの中で本を読んでいた。当然、ヴェインもパジャマ姿だ。
     真夏の夜は暑苦しく、短パンにシャツで寝ていたけれど、ヴェインは長ズボンのパジャマを着ている。子供の頃、薄着で寝ていると腹の調子を崩していたからだろう。
     彼は扉の立てた音の大きさに自分で驚くと、人差し指を唇に当て、「しー、しー! 静かに!」なんてドアに向かって言うものだから、吹き出してしまった。
     大丈夫だ、ここは一軒家で、隣家はずっと離れている。多少うるさくした所で、誰に咎められるわけでもない。
     まあ、飼い猫のムートが居たら尻尾をブンとひと振りしたかもしれないが。
     ムートはヴェインが来る前に、猫用扉を潜って部屋を出ていった。トイレか、水飲みか。ベッドが暑くなり、廊下の床で涼んでいるのかもしれない。
    「どうしたんだ、ヴェイン」
     賑やかなヴェインに慣れている俺が怒ることも、当然ない。
     寧ろ、夜中に思い掛けず想い人の訪問があり、嬉しさを隠しきれなかった。
     俺は身体を起こして、読んでいた本を閉じる。
     ヴェインとは幼馴染みで、今は祖国を守る騎士団の団長と副団長として、共に過ごしていた。情報共有の観点から、同居するのが都合良く、ふたりで家を借りている。
    「ランちゃん、今夜は熱帯夜だぜ!」
     そう言うと、枕を抱えたまま近づいて来た。ピッチャーの中で氷が揺れて、涼し気な音を奏でる。
     確かに今夜は暑い。じっとしていても肌に汗が滲んでくる。窓を開けていたけれど、カーテンが揺れることもなく、涼を運ぶ風はなかった。まさしく熱帯夜と呼ぶに相応しい。
    「ああ。フェードラッへで熱帯夜は珍しいな」
     我が祖国は温暖な地域で、一年を通して過ごしやすい。夏は多少暑い日もあるが、夜には過ごしやすくなり、今夜ほど暑い日は稀だ。
    「だよなあ〜。暑くて眠れねえよ〜。ランちゃん、ここにレモン水置くから飲んで……、飲むか?」
     ベッドサイドのテーブルへトレーを置くヴェインの姿を見つめていたら、気付かれた。
    「うん、貰う」
     ちょうど喉が乾いていて、キリがいいところまで読みすすめたら、キッチンへ行こうと思っていたんだ。ヴェインはいつもタイミングがいい。それにヴェインがわざわざ用意してきてくれたのだから、飲むに決まっている。
     にこにこ笑顔を浮かべて、よく冷えたレモン水をグラスへ注ぐと、手渡してくれた。熱くなっていた指先がひやりとして気持ちいい。
    「ありがとう、ヴェイン」
    「おう! 八百屋のばあちゃんが『いいレモンだから持ってけー』ってくれたんだぜ!」
    「ふふっ、相変わらず、お前は皆の孫だな」
     城下に行くと、ヴェインは必ずご老人たちから何かを頂いてくる。騎士として遠慮すべきだが、ご老人たちの生きる励みだと言われてしまえば断れない。
     俺と同じで、彼らもヴェインの笑顔が好きなのだろう。
     グラスに口を付けると、爽やかな酸味が広がった。冷たいレモン水が美味しくて、一気に半分まで飲んでしまう。読書に集中していて、ここまでの喉の乾きだったとは気付いていなかった。危ない。
    「今夜は寝苦しそうだ。睡眠中の熱中症に気をつけろよ」
     言うと、レモン水を飲み干したヴェインは俺に向かって枕を掲げた。
    「大丈夫、大丈夫! ランちゃんにくっついてれば涼しいから!」
     ポンと枕を俺の枕の横に投げると、ベッドへダイブする。ベッドが揺れて、慌ててグラスを両手で支えた。
    「こら、溢れるだろ」
    「わははは、ごめん! でも今夜はすぐ乾きそうだな〜!」
     楽しそうに笑うヴェインの額を指で突いて、グラスの中身を全部飲み干した。部屋に入ってきた時から、ヴェインは何だかご機嫌だ。何かいいことでもあったのだろうか。
     レモン水と一緒に口の中へ流れ込んできた氷を噛み砕くと、ヴェインは「スゲえ音!」とまた笑う。
     空になったグラスを受け取って、サイドテーブルのトレーの上へ置いてくれた。
    「飲みたくなったら言って〜」
    「ああ……というか、お前、今夜は俺を氷枕にするつもりか」
    「ランちゃんにくっついてれば」と言っていたので、そのつもりだろう。
     既に隣で枕の上へ金髪の頭を乗せている。
     見下ろせば、その表情はご機嫌というより、嬉しそうだった。「暑くて眠れない」と言っていたとは思えない。
     そもそも本来であれば、暑ければ人にくっついて眠ろうとは思わないだろう。だが、幸い俺が氷の魔法を使えるのだ。全身に冷気を纏うくらいの魔力なら、一晩維持するのは容易い。
     本当に幸いなことに、幼馴染みの俺たちは密着するのにも抵抗はなかった。
     ヴェインが俺にくっついて眠る選択をするのは当然だった。
     涼しく眠れるのを約束されているのだから、嬉しくもなるのかな。
     俺は嬉しいけど。
     ヴェインにくっついて眠るのが好きだからだ。もう、子供の頃から。
     ヴェインに触れていると、心から安堵し、幸せな気持ちになる。よく眠れるし、夢見もいい。好きな人にくっついて眠るのは、喜びに満たされる。
     でも流石にそんなことは口に出来ない。
    「お前とくっついて眠るのは幸せだから、一緒に寝てくれ」なんて。
     子供の頃なら、「くっついて眠ったら、夢の中でも遊べるかも!」なんて言えたけれど。
     もう立派な大人だから、「狭いベッドでくっついて眠るのはどうなんだ……」と口にする。
    「えー、冬は俺が湯たんぽにされてるから、おあいこだろ〜!」
    「確かに……」
     ヴェインの言葉に口を噤んだ。
     冬の夜に「寒過ぎる! お前の子供体温を分けてくれ!」と何度かベッドへ潜り込んでいた俺は反論出来なくなる。ヴェインは、「えっ、大丈夫か?」とすんなり俺を受け入れてくれていたしな!
     まあ、反論も抵抗もする必要もない。
     ヴェインが俺を抱き枕にするのなら、それは好都合と言うものだ。
    「まったく、仕方ないな」
     なんて口にしながら、ベッドへ横たわると、ヴェインは身体を横に向けて、俺の腰に腕を回した。
     そのまま引き寄せられて、胸や足が触れ合う。ヴェインの腕が背中を優しく撫でてきて、まるで抱きしめられているみたいだった。
     ヴェインの呼吸が額に触れる。
     ……近いな。
     どうしよう。
     脈が速くなってしまう。
     だって、俺がヴェインに「湯たんぽになってくれ!」と、くっつきに行った時は、こんなに密着しなかった。あまりくっつき過ぎたら、俺の想いが伝わってしまうと思って……。
    「ヴェイン……」
    「……ランちゃん、早く魔法使わないと、暑いぜ?」
    「う、うん、そうだな」
     そうだ。ヴェインは暑いから、早く全身を冷やしたくて、密着するのだろう。
     早く魔力を解放して、冷気を出さないと。早く、ヴェインを冷やしてやらないと――。
     でも、上手く集中出来ない。容易い魔法のはずなのに。
    「……ランちゃん、どんどん熱くなってる」
    「ま、待ってろ、今……」
     集中して、冷気を纏わないと――と焦るほど、上手く冷気が出せなくなる。焦りが募ると背中にじんわりと汗が滲み、伝い落ちた。
    「ランちゃん?」
    「す、すまん。暑いだろ……」
     触れているヴェインの足が汗ばんできたのが分かる。
     折角、来てくれたのに、このままでは、ヴェインは自室に戻ってしまうだろう。
     きっとその方が涼しい。
     俺だってヴェインにくっついて、ドキドキしながらも穏やかに眠れると思ったのに。
     けれど、ヴェインは部屋を去る気配を見せなかった。触れている肌に汗が滲んでも。
    「へへ、暑くても平気だぜ?」
    「でも、涼みに来たのに」
     涼めると喜んでいただろう?
    「……と、いう理由で、ランちゃんにくっつきに来ただけ」
    「えっ」
     驚いて顔をあげると、ヴェインは目を細めて俺を見つめていた。
     先程見た嬉しそうな表情を浮かべている。
    「なあ、ランちゃんが、俺を湯たんぽにするのも、……そうだよな?」
     ――なんだ。知っていたのか。
     そうだよ、俺はヴェインを好きだから、なんとか理由をつけて、傍に。
     触れる距離に居たかったんだ。
     お前はそれをずっと許してくれていたのか。それとも待ち望んでいたのか?
     お互いの想いを確認した瞬間、魔力が溢れて、一瞬で部屋が冷えわたる。
     ヴェインは笑って「ランちゃん、これは寒すぎるぜ〜!」と言い、体温を分け与えるように俺を抱きしめた。
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    MOURNINGヴェラン気味
    だから怒られてんだよ!ってのを自己肯定感が低すぎる故にわかってないヴェの話
    途中あんまりしっくりきてないからそのうち書き直したい
    ランちゃんは、かっこいい
    かっこいいし、強いし、賢いし、俺みたいな泣き虫じゃない
    「ランちゃん!!!」
    体、動いてくれ
    良かった、間に合った
    そう思うと同時に体に衝撃が走る
    口から声にならない音が出た
    「ヴェイン!!!!!!」
    後ろからランちゃんの声が聞こえる
    今どんな顔してんだろ
    でも間に合って良かった…
    ごぷと口の中に熱くて鉄臭いものが迫り上がってくるのを感じる
    あ、これやばいかも
    体に力が入らなくて立ってられない
    もう上向いてるのか下向いてるのかどうなってるのかすらわからない
    ごめん、ランちゃん
    俺…もう、ダメかも…
    崩れ落ちる視界の横で黒と青が明滅して消えた



    「…ってぇ…」
    めちゃくちゃ痛い
    起きあがろうとしたけど腕あがんない
    何これ、何でこんな痛いの?
    そうだ俺、ランちゃんを庇って…ってあれ?俺、生きてる?
    めっちゃ痛いけど
    うわー俺ってめっちゃ頑丈…
    そんなことを思っていたら聞き覚えのある声がした
    「ヴェイン!!!」
    「ラン…ちゃ…」
    痛む顔をどうにか動かして声のする方向を見ると見慣れた黒い髪が見えた
    でも、あれ?もしかしてランちゃん怒ってる?
    親の顔より見た幼馴染の 1325