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    すいぎんこ

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    すいぎんこ

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    ブラオス習作。カートゥーンとエリチャンネタが入っています。

     オスカー・ベイルはエリオス所属のヒーローである。担当はサウスセクター、階級はAAA。
     身長193センチと、体格に恵まれたヒーローたちの中でもずば抜けた体躯を持ち、その真面目でストイックな性格により鍛え上げられた肉体は頑健な筋肉となってその身を包む。
     サブスタンス能力であるソニックキラーを存分に活かした戦闘スタイルは圧巻の一言で、体術のスペシャリストとしても名高く、深く被ったヒーロースーツのフードもあって只者ならぬ雰囲気を醸し出す。
     つまり、何が言いたいかと言うと、オスカー・ベイルはとにかく近付き難いヒーローとして有名であった。
     これを憂いたのは彼の元主人であり、現在直属の上司となっているブラッド・ビームスだった。
     エリアランキングにより地区の発展まで決まる特異な体制を敷くこの街において、ヒーローは市民からの協力なくして成り立たない。ヒーローへの信頼は緊急時の迅速な避難誘導や、作戦実行の際の理解の得やすさに影響し、任務遂行の円滑化へと繋がる。
     また、ヒーローも自分が守るべき対象との交流を通じてモチベーションの向上を図ることができ、ブラッド自身そうしたメリットを理解しているからこそ、けして疎かにできないものと考えていた。
     それはオスカーもわかっているはずだが、入所当初からどうにもうまくいかないと未だに課題となっている。
    「まあ……不器用なタイプではあるのだが」
     ぽつりとこぼした言葉は無機質なデスクに落ちていく。マゼンダの瞳の先にはディスプレイに映る報告書があり、それは昨日のパトロールについて記述されたものだった。
     報告者はウィル・スプラウト。サウスセクターのルーキーで、ブラッドとオスカーのメンティーである。報告内容は平穏そのものであったものの、所感欄に書かれた文章が流れるように目を通していたブラッドの視線を止めた。
    『観光客からの道案内対応が課題と感じています。オスカーさんに相談したところ、ご自身は聞かれたことがないとのことでしたが、次回はわかりやすい道筋を意識しながら、目印を覚えて歩くというアドバイスをいただきました』
     レッドサウスストリートは手頃な価格の店が多く、ストリートフードが充実しているということもあり観光客が多い。今期から異動したブラッドも、ノースにいた頃に比べて声を掛けられることが増えエリアの違いを感じていた。
     だが、そんな自分より担当任期の長いオスカーが声を掛けられたことがないとは。いや、聞かれたことがないということは、他のエリアを担当していた頃からの話かもしれない。
     けして人を拒んでいるわけではないのは、話しかければ素直に答えてくれることや、相手を尊重する姿勢からわかる。話せばわかるいい人。だが、その一言で片付けては彼のためにも、エリアのためにもならないと、ブラッドは瞳を眇めて思案を巡らせる。
     その時、卓上に置いていたスマホが震えた。ガタガタと音を立てたそれを拾い上げ、画面を覗き込むとエリオスチャンネルの通知だった。
     一時間前に送られてきたキースからの飲みの誘い。相変わらずの生活態度と、市民も見ているSNSの私的利用にため息をつき無視したが、今度の送り主はディノだった。続くテキストに目を落とせば、酔いつぶれたキースと、キースが店が特定できる情報を流したせいでブラッド目当てに押し寄せた女性への対応に疲れ果て、泣きつく言葉が綴られている。
     問題がキースだけであれば無視を継続するところだが、こんな遅い時間に女性が出歩くのは看過できるものではない。しょうがないとブラッドが車のキーを取ったのは、あくまでも目的は市民対応とディノへの救援。キースの回収はそのおまけだ。
     気持ち足早にリビングへ入ると、自主トレーニング後に寛いでいたらしいオスカーとアキラと出会した。いち早く「ブラッドさま」と駆け寄って来たオスカーが、不思議そうに手にしたキーを見る。
    「どこか行かれるのですか?」
    「ああ、ウエストのバーに行ってくる。キースが余計なことを言ったせいで、ディノが面倒に巻き込まれた挙句、本人は酔い潰れたと連絡が来た」
    「それはまた……」
     そう言ってオスカーは、先輩ヒーローの体たらくに苦笑を浮かべた。もう何度となく繰り返されて来た光景を思い出したのだろう。
    「なあ、それってエリチャンのやつだろ?」
     いつものことと分かり、お気をつけてと下がろうとしたオスカーを止めたのはそんなアキラの声だった。ソファからこちらを見ているその手にはスマホが握られており、若干呆れの見える顔にメンター二人の視線が向く。
    「お前がさっさと返事しねえからだぞ。あーあ、ディノかわいそ」
    「アキラ、何の話だ?」
    「ん? オスカー、エリチャン見てねえの?」
     困惑した様子のオスカーに気づいたアキラは「これだよ」とくるりと画面を向けると、そこには先程の自分とキース、ディノのやり取りが表示されていた。サッと動いた青い瞳は事態を理解し、今度は驚いたように瞬きを繰り返していた。
    「な、なるほど。今頃店は大混乱だろうな」
    「はあー? ブラッドといい、フェイスといい、店来るってだけで騒ぐ奴らの気持ちがわかんねえよ」
     そう言いながら下げたスマホを胡乱げに見るアキラに内心同意はするものの、一応メンターとして釘を刺すことは忘れない。
    「そう言うな、アキラ。俺たちは市民に協力を仰ぐことも多い。好意的に思ってもらえることに感謝を忘れるな。もちろん、俺たちのプライベートへの配慮も理解してほしいがな」
    「へいへい」
     やる気のない返事に眉を顰めつつ、話を切り上げドアへ向かう。そろそろ出掛けないと、ディノに詫びピザを贈ることになりそうだ。
    「それでは行ってくる。長居をするつもりはないが、先に休んでいて構わない」
    「はい、いってらっしゃいませ」
     律儀に見送りに来たオスカーに告げると、未だ暑さの残る街に意識を向ける。同時に、一つの考えを巡らせながら、ブラッドは愛車をゆっくりと発進させた。

     その日、オスカーは日課のパトロールをこなしながら難題に頭を悩ませていた。それは彼の敬愛する上司、ブラッドから出された課題についてであり、気を抜けば出そうになるため息をなんとか飲み込んでいるような状況だった。
     課題といっても、頭を使うプロジェクトへの参入や、イクリプス掃討などの危険なものではない。今日から二週間、エリオスチャンネルへの更新を日課とするというものだ。投稿内容は自由だが、画像のみではクリアしたとみなされず、必ずメッセージを入れることが条件とされた。そして成果はその日の夜にブラッドがチェックすることとなっていた。
     突然の課題に目を白黒させるオスカーを覗き込み、できるな? と念を押すブラッドは確信を持った瞳をしている。
     ブラッドから与えられる課題はハードルは高くとも、けして無茶無謀ではないことを知っている。ゆえに、信頼と期待を寄せるその眼差しを前にすると、オスカーの口は自動的に「イエッサー」と答えてしまう。
     元より、ブラッドからの問い掛けに対し、オスカーがイエス以外の返答をするのはありえないのだが。
     そんなわけで、苦手なコミュニケーションという課題と敬愛する主にも見られる緊張感に、どうしたものかと頭を悩ませているのだ。
    「オスカーさん、あの、ちょっといいですか?」
    「ん、ああ、すまない。どうした、ウィル」
     呼びかけにハッとして隣を見れば、怪訝そうな顔をしたウィルがオスカーを見上げていた。うっかり課題にばかりに気を取られていたことを反省しつつ、要件を促せば柔らかな琥珀色に安堵の色を浮かべ、ウィルはスマホを差し出した。
    「ここなんですけど、マップだと横道がないですよね? でも、実際にはこうして道がありまして……ここが使えれば通りへのショートカットになると思うんですけど、どう思いますか?」
    「ああ……これはマップの更新が間に合ってないだけだろう。よく気づけたな」
     発展著しいニューミリオンでは、常に何かしらの開発が行われている。その目まぐるしさに取りこぼされるものもあり、そこは現地の目と耳の出番となる。
    「あはは、地元なのである程度はわかっているつもりだったんですけどね。でも、こうしてヒーローとして歩いていると、発見がたくさんあります」
     照れ臭そうに笑うウィルの顔には、ヒーローとしての責任感が伺える。
     この都市を象徴する花形職、市民の安全と街の発展を担う自負を持った行動にオスカーも自然と笑みを浮かべた。入所当初は控えめで戸惑うことも多かった新人が、こうして立派に成長をしていることを間近で感じられるのはメンターの特権と言っていいだろう。
    「せっかくだから、このことを皆さんにお伝えしたいですね。あとでエリチャンに投稿しておこうかな」
    「そんな使い方があるのか!」
    「えっ」
     道を見つめながら呟いたウィルの言葉にオスカーの瞳が見開かれる。今まさに悩んでいたことへの天啓ともなる発言に、つい大声を出したことに驚き振り向くウィル。その視線に己の失態に気づき、慌てて謝罪した。
    「す、すまない、驚かせたな」
    「いえ、気にしてませんよ。でも、急にどうしたんですか?」
     不思議そうに瞬く相手に、驚かせてしまった詫びも兼ね、パトロールを再開しながら掻い摘んで事情を説明する。
    「なるほど、エリチャンの投稿ですか。そういえばオスカーさんはあまり更新しないんですね」
    「ああ。見る分にはいいんだが、自分からとなると苦手でな。どんなことを書けばいいのかわからないんだ」
    「確かに、色々と気を遣わないといけませんからね」
     わかります、と頷くウィルだが、先程のことにオスカーは感心していた。個人的な日常の一コマや、携わった企画の宣伝に利用されているのは目にしていたが、市民生活の充実にも使えるのかと目から鱗が落ちた気分だ。
     話しているうちに広場までやって来て、時間もちょうどよいため小休憩を取ろうとカフェに向かう。テイクアウトしたドリンクを片手に広場に入っていくと、折よく空いていたベンチがあったのでありがたく腰掛けながら乾いた喉を潤す。
     今日もよく晴れており、日差しは強いが心地よい風が吹いているため不快感は少ない。首元を緩めて涼を取りつつ、中断していた話題を口にした。
    「ウィルは、どう言う時にエリチャンを使おうと思うんだ?」
    「俺ですか? うーん、趣味の園芸の話とか、美味しかったものの話とか、あとはさっきみたいに知っていたら便利になることとかですかね」
    「そうか」
     ウィルの話はなるほどと思うが、オスカーにはいまいちピンとこなかった。ドリンクを啜りながら考え込むその姿を見て、ウィルも考える。
     SNSの存在は日常的なもので、深く考えたことはなかったが、その使い方を改めて言葉にしようとするとなかなか難しい。
     これまではごく普通の一般人だったため、個人としての影響力しかなくマナーを守って自由に使っていた。それがヒーローという職に就いたことで個人の名前に組織がセットとなり、ネットリテラシーやコンプライアンスに一層注意しながら投稿するよう心がけるようになった。
     だが、ウィルの投稿したいと思うタイミングは変わっていない。
     例えば、実家の花屋を手伝いながらおすすめしたい植物があった時。例えば、贔屓の和菓子屋の新作が美味しかった時。そして、知っていたら便利になりそうな、ちょっとした情報。
     嬉しかった、楽しかった、知ってほしい、そんな気持ちを誰かに聞いてほしいと思った時、自然と選択肢にエリチャンが現れる。
    「あ、そうか。俺は、誰かと気持ちを共有したいんだ」
    「ウィル?」
     ぽつりとこぼした言葉にオスカーが顔を向ける。胸に落ちて来た答えに頷き、ウィルは顔を上げた。
    「オスカーさん、俺わかりました。俺がエリチャンを使うのは、楽しかったり、美味しかったり、便利だと思ったり……そういう気持ちを、誰かと分かち合いたい時なんです」
     ウィルの言葉に目を瞬かせたオスカーは、すぐさま「話を聞こう」と向き直る。真面目でストイックな相手らしい態度に、先輩に対して失礼だと思いつつ微笑ましい気持ちになりながら、ウィルは先程の考えを丁寧に説明した。
     その言葉を、オスカーはじっくり咀嚼しながら聴く。課題への貴重なアドバイスはやがて空色の瞳を輝かせ、聞き終わる頃には確かな光を宿していた。
    「助かった、ウィル。これで課題もクリアできそうだ」
    「そうですか! お役に立てたなら、俺も嬉しいです」
     先程までの鬱々とした空気を跳ね除ける、明るい顔で礼を告げるオスカーにウィルも笑顔で頷く。
     その頃にはすっかりドリンクも飲み干し、軽やかな気持ちで腰を上げると、残りのパトロール区域へと向かう。
     今、オスカーの頭の中には一つの考えが浮かんでいた。最初の頃からは嘘のように晴れ晴れとした心地で、久しぶりの投稿に添えるメッセージを考えながら眩しい夏空の下へ踏み出した。

     その夜、オスカーのアカウントに久しぶりの投稿があった。そこには久しぶりの投稿を詫びる旨とともに、これから二週間は毎日投稿することが宣言されていた。
     続く投稿には『今日はリトルトーキョーで夕食を摂りました。今、こうしていられることが幸せです。』とメッセージが綴られ、さらに珍しいことにそこには一枚の画像が添えられていた。
     それは大ぶりのエビが目を引く創作和食料理を写したもので、外食といえどバランスよく揃えられたメニューは体が資本のヒーローらしいものだった。彼のキャラクターと相まった食事風景は無骨なヒーローの頑張りを表しており、見た者はそっと眦を緩ませた。
     だが投稿から数時間後、あることに気づいた人々は驚きの声を上げる。それは落ち着いた照明に光る銀のカトラリーに映る人影。小さい上にぼやけて見づらかったが、それは確かに笑顔のブラッドを映していたのだ。
     翌日、見たこともない通知の数に、スマホ片手に呆然とするオスカーを見たブラッドは「写り込みには気をつけるんだな」と苦笑するのだった。
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    すいぎんこ

    DONEブラオス小話。こしのさんの素敵イラストのネタをお借りしました。エリ雄本編とは違うような似たような、なんかふわっとした設定です。友情出演で、今回も🍺がいます。
    一発逆転ジャックポット(ブラオス)「ええと、普段の時給は16ドルです。でも今日はホールなので、もう少し高いとは思うのですが」
     大真面目に答えたオスカーの言葉に、男は珍しいマゼンダ色の瞳を大きく見開いた。その後ろからは馬鹿笑いと称して良い声量の笑い声。最近入ったという怠惰なディーラーの声を聞きながら、オスカーは困惑に眉を下げた。


     時は遡ること数時間前。いつも通りオスカーは己が勤めているカジノに出勤していた。オスカーが今身を置いているカジノは繁華街の路地を入ったところにある、まあ言ってしまえば「あまりよろしくない」類の店で、ブラックとグレーの間をギリギリ綱渡りしているような店だった。
     カジノとしても違法性が高く、バックにヤバい組織が絡んでいると黒い噂があるとかなんとか。それだけ知っていても、身寄りもないストリートチルドレン出身の青年を雇ってくれる貴重な店であるだけに文句は言えず、今日も彼はお仕着せのガードマンの制服に腕を通して配備位置に着こうと従業員通路を歩いていた。
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    「むしろ、なんだ?」
    「分かってんだろ…」
    「でもキースの 1204

    pagupagu14

    DONE #キスディノ版ワンドロライ報告会
    @KD_1drwr
    【ぬいぐるみ】で参加しました!
    ぬいぐるみはヴィレバンコラボのぬいぐるみイメージしてます🐺
    ぬいぐるみ キスディノ

     きっかけは些細な喧嘩だったように思う。今ではその原因さえ思い出せないような、ほんの些細なこと。オレもディノも普段ならすぐに仲直りするようなことも互いに意固地になってしまい、できないでいて今ではどうやって謝るか考えてしまう始末だった。
    「はぁ…」
    その日の夜、部屋のカウンターで酒をちびちびと飲んでいたオレだったがそんなオレに近づく気配を感じる。もちろん、そんなのディノ以外いない…のだが。
    思わず振り向くとオレの視界に飛び込んできたのはディノーーではなく、ディノと同じような空色の瞳をさせたオオカミのぬいぐるみだった。以前、ヒーロー業の一環でした仕事の際にディノが買い取ったのを覚えている。
    『キースくん』
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    ーーああ、もう。
    こんなのも可愛いとさえ思ってしまうオレはきっとどうかしているのだろう。
    「あー…別に気にしなくていいとでも言っとけ。その友達はもう怒ってねぇし、むしろ…いつ謝ろう 997