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    ある奇術師の話

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    とある地下ステージで一人、手品を終えたばかりの青年がいる。見た目は髪も長く、華奢で、女性のようにも見えるような美形で、女物の服を身に着けていた。コルセットと一体化したタイトスカートのスリットから見える足が妙に艶めかしく見えた。何処と無く妖しげな雰囲気を醸しているが、話してみると意外と気さくな男だったのだそうだ。羽とリボンと花で飾り付けた帽子から覗かせる顔には笑みを浮かべている。時たま、客の相談に乗ったりしていて、その手腕にも定評があるらしい。だが、この奇術師にはある噂があった。それは彼に関わった人間が不幸になるということだ。事故に遭ったり事件に巻き込まれたり、中には自殺してしまった者もいるらしい。その話を聞いた私は興味を持ち、彼のことをもっと詳しく知りたいと思った。そして数日後、私は彼が出演しているという劇場へ足を運んだ。中は黒と赤を基調としたエキゾチックな造りになっていて、ステージの中央では奇術師の男が観客に向けてお辞儀をしていた。私もその一人で、席に座って彼のショーが始まるのを待つことにした。
    やがて、ショーが始まった。彼はシルクハットの中から鳩を取り出したり、トランプやコインを使ってマジックを披露したりした。その後も様々なマジックを披露して、観客を魅了していった。そして最後の演目となったとき、奇術師の男の顔からは笑顔が無くなっていた。真剣な表情で、帽子を見つめていた。すると帽子に脚を入れるとそのまま中に吸い込まれていった。何事かと思っているうちに奇術師の男は帽子の中に入り込んでしまったのだ。まさかと思いながら見ていると、隣に置いてある箱の扉が独りでに開き、上半身と下半身がバラバラになった状態で奇術師の男の身体が現れた。そこで客席からは悲鳴が上がった。
    「さあ、皆さん落ち着いてください」
    そう言うと奇術師の身体は元に戻った。まるでビデオテープを巻き戻したかのように一瞬にして修復されたのだ。その後、再び拍手喝采が巻き起こった。奇術師の男は再び礼をして、舞台袖へと姿を消した。
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     信号が青に変わると一斉に人の流れが動き始め、それぞれの進行方向へと、人々が双方向に入り交じりながら滔々と流れていく。その人混みから少し離れて道路を眺めていた青年が、隣に立つ男に話しかけた。
    「ここだったよね、KK」
    「ああ、そうだったな」
    あの夜、二人が『運命的』に出会った場所がここだった。

     
    「ねぇ、夜の散歩に行かない?」
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