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    Hakuaisan(GWT)

    @Hakuaisan

    二次創作てんこ盛り野郎

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    Hakuaisan(GWT)

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    「何で言ってくれなかったのよぉ!!」

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    「お兄ちゃん大丈夫かな・・・」
    最近兄が帰ってこないことが多く、訪ねてもバイトだと言われることが何度かあった。
    「もしお兄ちゃんに何かあったら・・・」
    もし兄が過労で倒れてたりでもしたらと思うと心配してしまう。そう思っていると不意にスマホに着信が入った。
    〈7時 6チャン〉
    差出人は兄だが、メールで送られてきた内容に違和感を覚えた。
    「6・・・?」
    テレビのチャンネルだが、最近はほとんど見ることはなくなった。前にたまたまテレビをつけたときはプロレス試合の試合中に金的のアクシデントが起きたことは未だに覚えている。
    「でもなんで・・・」
    疑問に思いながら、7時になったところでテレビをつける。そこにはプロレスのリベンジマッチが放送されようとしていた。あ、そういや前に金的で試合中断したんだ。プロレスラーの『KK』という選手と覆面レスラーの『女狐』の試合で、女狐が負けた場合は覆面を脱いで素顔を晒すという約束らしい。
    「とりあえず、見ようかな」
    興味本位でチャンネルを変えずに試合を観戦することにした。プロレスは分からないが、試合がどうなるかはちょっと見てみたい。序盤から激しい攻防が続き、KKの方は女狐を追いかけるように動いていて、女狐の方は追いかけているKKを挑発するように避けている。そして試合が中盤に入り、動きが激しくなってきた。そして試合が終盤に入ると、KKが女狐に正面からぶつかった。これは痛いと思ったが、女狐は倒れない。むしろ手招きして余裕を見せている。KKは挑発に乗らずに冷静に女狐に攻撃を浴びせようとする。女狐がKKの攻撃を巧みに避け、カウンターでKKに攻撃を当てていく。そしてKKはいつの間にかコーナーポストまで追い込まれ、そこからジャンプしてムーンサルトプレスを女狐に向けて放つ。だがそれもかわされてしまい、空中で無防備な状態のKKを女狐はドロップキックで吹っ飛ばした。そして起き上がったKKが再び突っ込んでいくが、寸のところで避ける。KKは女狐を追いかけてコーナーポストに追い詰める。そして女狐が飛んだ瞬間KKは飛びつき、そのまま技をかけようとする。KKは素早く体を翻し、空中で回転して着地するとすぐに女狐の背後から飛び蹴りで吹っ飛ばした。
    《ハイアングルキック!決まったぁー!!》
    アナウンサーの声とゴングが響き渡り、試合はKKのKO勝ちとなった。
    「すごっ・・・」
    あまりプロレスの試合を見ないのでよく分からないが、女狐がかなり健闘したのだけは分かった。実況アナウンサーは《今日こそは女狐の勝利かと思われましたが、最後はKKのハイアングルキックが決まりました》と伝えていて、それに対して会場も盛り上がっている。そして女狐が負けたことで、約束通り素顔を晒すことになる。狐を模したマスクに手を掛け、それを剥がす。そしてその下に隠れていたのはいつも見ている顔だった。
    「・・・えっ!?」
    私は驚きを隠せなかった。なぜなら、その人の顔には見覚えがあったからだ。
    「お兄ちゃん・・・」
    私はテレビの前でずっと唖然としていた。
    ****
    「素顔晒しちゃったな・・・」
    「結構いい顔してるじゃねぇか」
    「麻里に何て言われるか」
    試合が終わり、KKとともにバックグラウンドへと移動しながら会話する。試合が終わり、女狐のマスクを外した瞬間観客が大盛り上がりだった。
    「同級生にも何て言われるか」
    「お前大学生だったな、卒業したらどうするんだ?」
    「・・・このまま続けてみようと思います」
    「・・・」
    「イタッ」
    すると頭を指で小突かれる。
    「ずっと前から言いたかったが敬語はやめろ、あまり好きじゃない」
    「えぇ・・・いや、でも年上だから」
    「なら敬語なしで話せ」
    「・・・分かったよKK」
    僕はKKと握手を交わす。それはただ試合の後に握手を交わすだけではない。僕とKKのプロレスには意味があるのだ。それは卒業後もずっと続くだろう。
    ****
    私は女狐の正体が兄であることを知った瞬間、頭の中が真っ白になってしまった。衝撃的すぎてどんな会話をしていたかなんて覚えていないし、兄に対して何か思うこととかたくさんあったはずなのに何も考えられなくなった。
    《いや~、ついに正体がバレてしまいましたね!》
    テレビから聞こえてくるアナウンサーの声など耳に入らず、スマホを手放して呆然とする。兄が無茶をしていたことにも驚いたが、それ以上にプロレスをしていたなんて。
    私はしばらくその場から動けなかった。そして頭の中である一つの決心をした。スマホを拾い上げると急いで兄に電話をかける。
    「もしもし、お兄ちゃん? 今どこにいる?」
    《えっ麻里?今は友達と飲んでて・・・》
    「テレビ見たよ」
    《え?》
    「お兄ちゃん、何で隠してたの?プロレスのこと」
    《それは・・・》
    「私心配してたんだよ!!帰りが遅くなって、何かあったんじゃないかって。でもお兄ちゃんがプロレスをやってるなら言ってくれれば良かったじゃん!!」
    《えっと・・・》
    「連絡取れないことも多いし、私不安になってたんだから」
    《ごめん、麻里・・・》
    涙が溢れ、感情がとめどなく溢れてくる。
    「私、お兄ちゃんがプロレスやってたなんて知らなかったよ」
    《麻里・・・》
    「だから!今度から帰りが遅くなるときはちゃんと連絡して!!」
    《えっと・・・麻里は俺がプロレスやってるのどう思った?》
    兄が恐る恐る聞いてくる。私は少しの間、黙っていた。
    「あんなのずるいじゃん!!」
    《えっ!?》
    「だって!!お兄ちゃん凄くかっこいいし!!相手と息も合ってたし!!KKって凄い選手の1人なんでしょ!?そんなお兄ちゃんがプロレスやってたらかっこいいに決まってるじゃん!!」
    《えっと・・・》
    「だから今度から帰りが遅くなるときはちゃんと連絡してよ!!隠すのもなしだからね!?」
    《分かった!分かったから!》
    「絶対だよ!!」
    私は強引に電話を切った。すると今度はすぐに兄から折り返しの電話がかかってきたので、とりあえず着信拒否をした。そしてスマホをソファに投げ捨てると枕に顔を埋めながら叫ぶ。
    「私のお兄ちゃんなんだからかっこよくて当たり前だし!!でももっと相談して欲しかった!!私を置いてどっか行かないでよバァカァァァァ!!」
    私はしばらく枕に向かって叫ぶと、泣き疲れて眠ってしまった。
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