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    Hakuaisan(GWT)

    @Hakuaisan

    二次創作てんこ盛り野郎

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    Hakuaisan(GWT)

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    あんな綺麗な傘を見れば惚れてしまうだろ

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    「・・・ん」
    目を開けると知らない天井が見えた。ここはどこだろう?辺りを見回すとどうやらどこかの部屋の中らしい。身体には毛布がかけられて温かい。
    「目が覚めたか」
    顔を向けるとさっきの男が心配そうな様子で僕を見ていた。身体を起こそうとすると、止められる。
    「触ったとき身体か冷えてたんだ。まだ寝てた方が良い」
    「・・・僕を助けてくれたの?」
    「まあな、俺はKKって言うんだ」
    KKと名乗った男はニッと笑った。その笑みを見て、何故か僕はホッとした気がした。
    「・・・ありがとうございます」
    僕が素直に礼を言うとKKは一瞬キョトンとした顔を見せるも、すぐに笑顔に戻った。
    「気にすんなって、それより腹減ってないか?」
    そう言われるとお腹が空いている気がする。
    「ちょっと待ってろ」
    そう言ってKKは部屋の奥へと消える。しばらくしてから戻ってくると、なにかを持ってきた。
    「こんなものしか用意できねぇけどな」
    手渡されたのは、カップラーメンだった。陸に上がったときに何度か食べたことはある。
    「・・・いただきます」
    KKから受け取ると、箸を使って食べる。食べ方なんてどうでも良かったけど、何故かこう食べなければいけない気がした。
    「よく噛んで食えよ」
    KKがそう言うも、僕は気にせず麺をすする。空腹とカップラーメンの味が身体に染みるようだった。
    「ごちそうさまでした」
    食後の挨拶を言い、KKに向き直ると不思議そうな顔をしていた。変なことを言ったのだろうか?
    「いや、律儀だなって」
    「人間社会に溶け込むためには必要だから」
    僕たちは人間に擬態する訓練も積み重ねた。人に見られず、自然に。だから人間らしく振る舞うことが僕たちの最大の武器なのだ。
    「そうか・・・でもな、俺には無理に人間のフリなんてしなくて良いぜ。この世の中にはお前以外の人ならざるものもいる。そんな奴らだって人間社会にとけ込んで暮らしてるんだ、お前だけが人間のフリをする必要なんてねぇよ」
    その言葉は僕の心を揺さぶった。人ならざるものが人間のフリをしている。けれどKKみたいなことを言う人は初めてだった。
    「どうして僕にそんなことを言うんですか?」
    僕は無意識のうちに口にしていた。そう訊ねるとKKは少し考え込んだ後に口を開く。
    「なぁ、お前名前なんていうんだ?」
    「・・・暁人。暁に人って書いて」
    「暁人か・・・。いい名前だな」
    「ありがとう、ございます・・・」
    名前を褒められるのは初めての事だった。人間とここまで話したのも初めて。だからお礼を言うのも少し戸惑ってしまった。
    「なぁ、暁人」
    「なに?」
    KKが僕の肩に手を置く。いつの間にか身体が近づいていた。
    「暁人の話、聞かせてくれねぇか?陸に上がった時の話とか、お前みたいな人ならざるものの話が聞きてぇんだ」
    僕は目をパチパチさせる。どうやらこの人は本当に人間のフリをしなくても良いらしい。僕が頷くと、KKは嬉しそうに笑った。そして僕らは様々な話をした。僕が海にいたこと、陸に上がってみたいと思ったこと、魚以外のものを食べたいと思ったこと。KKは僕の話を興味深そうに聞いていた。
    ****
    暁人と名乗った青年は、数十分前の弱々しい姿からは想像できないほど雄弁に語った。それは、この短い時間で彼がいかに陸に憧れているのかを実感するには充分だった。だが、それと同時に暁人は自分のコンプレックスを打ち明けた。暁人は人魚の一族から突然変異でクラゲの傘を持って生まれて、同族と違うことに違和感を持っていた。
    「自分は早く泳げないし、皆みたいに綺麗な鱗だって持ってない」
    そう言って毛布を退かすとコートの裾をたくし上げる。そこには半透明の傘と青い口腕が見えた。
    「なるほどな」
    暁人のコンプレックスの根源を垣間見た気がした。ただ、それと同時に俺は疑問を覚える。暁人がとても辛そうに話を進めていくことだ。まるで自分自身を否定しているかのように。
    「麻里も僕の傘をプニプニして気持ち良さそうって言って」
    「それは褒め言葉だと思うが・・・」
    暁人には麻里という妹がいるがそっちは人魚だそう。兄妹でもここまで違ってくると周りからどう見られるか不安に思うのも仕方がない。
    「別に悪くないんだ。ただ、どうしても違和感があって・・・」
    「俺は綺麗だと思うけどな」
    「え?」
    「前に絵梨佳が水族館に行きたいからって半ば強制的につれてかれて、そこでクラゲの展示コーナー見たんだよ。いろんな種類のクラゲの傘が光に反射してて、それが綺麗だなって」
    暁人が目を丸くさせた。そして、クスッと笑う。
    「クラゲを綺麗って・・・KKさんは変わってますね」
    「そうか?」
    「そうだよ」
    暁人が再び笑った。今にして思えば、俺はこの笑顔を見たくて暁人に話しかけたのかもしれない。それは一目惚れに近かった。ただ、それを口にしてはいけないことは理解していた。
    「だから変に隠したりしないで、堂々としていれば良いんじゃねーか?少なくとも俺は暁人のこと綺麗だって思うし」
    「ありがとうございます。そう言ってくれるのはKKさんだけですよ」
    「なら、俺が第一号だな」
    俺の返答に暁人がまた笑った。それは最初のぎこちない笑みとは違うものだった。それを見て、少しだけ安心する自分がいた。
    「あと、さん付けはやめろ、KKだけでいい。それに敬語もあまり好きじゃない」
    「KKがそう言うなら」
    「まあ元気そうになってこっちは安心した。あの時は完全に冷えてたからどうなるかと」
    「説明すると基本的に人魚は人間と同じくらいの体温だけど僕の場合はクラゲと同じように外気温と同じくらいの体温になるけど、寒すぎると逆に動けなくなって。KKが毛布をかけてくれたおかげで助かった」
    「なるほどな」













































































































    「そう言えば絵梨佳って名前麻里から聞いたんだよね」
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    リキュール

    DONE日本ゲーム大賞優秀賞おめでとうございます!(遅刻)
    おめでたいと祝われるK暁です。本編後KK生存if、『黒猫』より少し前。
    愛したくて仕方がないが我慢していたKK×子供扱いされたくない暁人のお話。
    吉事あれば腹の内を晒せ「(おや、ちょうどいいところに)」

    ふわりと浮かぶ猫又が調査帰りの僕たちの元にやってきて尻尾を揺らした。暗い路地裏、夜も遅いこともあって人通りはないため、周囲を気にせずに堂々と触れる。耳元を撫でると、顔を擦り寄せうっとりとした表情でにゃぁんと鳴いた。これを人がいるところでやると虚無を撫でるヤバい人になってしまうので注意しなくてはならない。あれは結構恥ずかしい。

    あの夜が明け、消えていた人たちが帰ってきた。街の活気が戻り再び多くの人が行き交う渋谷になってからというもの、気がついた時には既に猫又たちはコンビニや屋台から姿を消していた。まあ人間がいなくなりこれ幸いと店を乗っ取っていただけなので、人が帰ってきてしまえば返さざるを得ず仕方がないと言えばそれまでで。だからもう会うことは無いのかと寂しく思っていたら、人気のない夜道や路地裏でひょこっと顔を出すようになったのだ。驚いたが、またあの可愛らしい鼻歌が聞けると思うと自然と顔が緩んでしまう。彼らはいつも見つけられるわけではない。気紛れに現れて、たまに撫でさせてくれて、掘り出し物を売買する。この気分屋な感じ、猫はいつだって可愛いのだ。
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