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    spring10152

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    spring10152

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    博士とマリアナを見て愛について考える千智さん

    #彼女の箱庭
    #檻の箱庭

    愛とは智彰の誕生日が近く迫っていた。私は奴を愛してこそいないが、日頃世話になっていること自体には深く感謝しており、出来る限りの礼はしたいと考えている。故に祝い事は忘れずまめに贈り物をしているつもりだ。
    けれど付き合いが長くなってくれば贈る品のバリエーションも尽きてくる。そもそも私は男に興味がないのだから、男性はなにを貰えば嬉しいのか分からないのだ。
    そこで今年は人嫌いの私が不思議と嫌悪感を抱かず、自然に懐に入ってきて会話を引き出してくれる、比較的好ましく接しやすい上司に相談する事にした。すると休日に一緒に選びに行ってくれるという。
    上司は妻と思しき女性を伴ってやってきた。美しいブロンドに長い睫毛、深い海のような色の瞳。一目で日本人ではないと分かる容姿だった。

    「ごめんね、彼女日本に慣れてないから家に一人で置いておくのは心配で」

    上司の腕に腕を絡め、頰を摺り寄せる彼女の頬を指の背で撫で、暖かい視線を向けながら彼はばつが悪そうに謝罪した。これが世間一般に言う惚気というものだろうか、とぼんやり考えつつも興味がなかったので構いません、と一言返して上司御用達のお店を紹介してもらい、それらを回りながら智彰への贈り物を吟味していた。
    上司とその妻は似た者夫婦なのか、妻の方も初対面だというのに馴れ馴れしく、けれど不快感は無くするりと懐に入り込んでくる。おまけになんとも言えないいい香りまでして、その香りを嗅いでいると心が安らぐようだった。

    「ねぇ、あなたの恋人はどんな見た目をしているの?写真とかないの?」

    と上司の妻に問われ、自分のスマートフォンを取り出しカメラロールを漁っていると奇跡的に1枚だけ奴の映った写真があった。それを見せると

    「まぁ、素敵な人ね!あなたを愛しているのが目だけで分かるわ!」

    と愛らしい歓声を上げ、「瞳が金色だから紺色のネクタイなんかどうかしら。夜の海の水面に映る月みたいできっと綺麗よ」ね、と上司に同意を求めつつ彼女に勧められたネクタイを手に取る。確かにネクタイなら沢山あっても困らないし、紺色なら使い勝手も悪くないだろう、とそれを購入した。

    ついでに折角だから、とお茶にも誘ってもらい、コーヒーを飲みながら上司夫婦を眺めていたが、愛し合う者達とはこういうものなのかと密かにカルチャーショックを受けていた。世間一般に言うような馬鹿ップルではないが、細やかな仕草が、触れ合いが、視線が、声のトーンが、相手を思いやっていて、はたから見ていても愛し合っているのがよく分かった。
    私も智彰とこうであるべきだったのだろうか。
    家に帰ればいつものように智彰が夕飯を作りながら「お帰り」と私を出迎える。その屈託のない笑みは、上司とその妻がお互いに向けあっていたもので、私が彼に向けないもので。

    「お前は哀れだな」

    ぽつり、言葉が溢れた。
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    spring10152

    DONE烏丸さんが芽衣ちゃんを育てて食べようと決意する話
    捕食者と被食者の出会い「おじさんあたしを隠して!」
    彼女との出会いはこの一言だった。私は彼女の通う小学校の学校医で、職務を終えて自分の病院へと帰ろうと丁度車のドアを開けたところに彼女が飛び込んできたのだ。何事かと事情を問おうにも彼女はしっかりと車に入り込んでしまい後部座席の足元に姿を隠して早く発車しろと怒鳴るばかりで取り付く島もないので、仕方なく私は彼女を車に乗せたまま出発した。
     到着するとひとまず彼女を病院に上げて事情を聴くことにした。何でも担任が気に食わなくて鋏で刺してきて追われていたところを私は保護してしまったらしい。そういえば健康診断の時に問題児が居るから怪我を負わされないよう注意しろと言われていたが、もしやこの子の事だったか、と面倒事を抱え込んでしまった事にため息を吐いた。食べて隠蔽しようかとも思ったが、事前準備もなく連れてきたのでは警察に捕まってしまうかもしれないし、聞いてみれば4年生だという彼女は食べるにはやや大きい。どうしたものか、とりあえず学校に帰そうかとすると「どうせ明日には処分が決まるんだから今日はここに居させてよ」とふてぶてしい態度の彼女は病院内の備品に張り付いて離れない。しぶしぶ私は彼女を病院に置いたままその日の診察を終わらせた。
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    spring10152

    DONEひなたに彼氏の肉を食わせる静さんの話
    幸福な食卓私はルームシェアをしているひなたの為に毎日食事の用意をする。それが私達の役割分担だったから。私は正直料理の腕には自信がある。毎日一汁三菜、ほかほかと湯気を立てる温かい食事を、愛を込めて用意していた。そう私は彼女の愛していた。
    私が彼女の愛していたというのは、友愛や親愛ではない。恋愛感情だ。私は彼女が欲しいと思っているし、彼女が他人と話していれば嫉妬する。正真正銘欲を持って愛していた。
    けれど彼女が同性愛者でない事は分かっていたし、私はこのルームシェア生活が続きさえすればそれで良かった。想いを伝えるつもりなどなかった。あの日までは。
    彼女が男の恋人を作ってきたのだ。今まで恋愛にはあまり興味が無い、彼氏はいらないと言っていた彼女が。私の見知らぬ男の隣で幸せそうに笑っていたのだ。許し難かった。そんな男の何がいいのだ。背なら私だってひなたよりも高いし、性格だって女の子に好かれやすい。顔だって悪くないはずだ。私の方がひなたの事を何でも知っていて気遣いができて最高の恋人になれる筈なのに。それなのに、あいつは男というだけで私からその座を奪い取ったのだ。
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