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    冷や酒🍶

    @hiyazakeumai

    カヲシンとか書いてる

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    冷や酒🍶

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    1528カヲシン。そろそろえっちな雰囲気がしてきます。

    #1528

    1528カヲシン②-1渚君と一緒に暮らすようになって一週間。二人の同居生活はとても平和だった。僕は会社の業務量を調整して前よりもきっちり定時に帰れるようになった。渚君のお世話をするのも一応仕事ではあるんだけど、現状は一緒に暮らしているだけで特に大変なこともない。
    家事は二人分に増えたけど、やる手間は変わらないし。渚君は僕が家事をしていると積極的に手伝ってくれた。本当は僕の仕事なんだけど家事を覚えてもらうためには手伝ってもらった方がいいだろう。渚君には必要のないことかもしれない。でも人生何があるかわからないし、そうなっても困らないように。
    渚君は手つきは不慣れだけれど、けして不器用ではなかった。だから少し教えただけである程度の家事は出来るようになったし、慣れない家事も楽しんでやっているようだ。学校の方も特に問題なく過ごせているらしいけど、彼は自身の学校生活についてはあまり話してくれなかった。
    学業成績は全く問題ない、むしろ頭が良すぎるくらいなんだけど。やっぱり海外から来たばかりで、クラスに馴染めてないのかな。そうだったら学校の話とかしたくないかもしれない。だけど渚君はすごく格好良いし、絶対に人気者になれると思うんだけど。きっと本当に困っていたら相談してくれるよね。僕は相談相手としては頼りないかもしれないけれど。せっかくの学生生活なんだし、渚君には友達と遊んだり、恋人を作ったりみたいないわゆる青春というものを楽しんで欲しいと思うんだ。




    ◇◇◇




    玄関のドアを開くと、部屋の奥から良い匂いがした。ふわっと香るスパイシーな匂いはカレーに違いなかった。再度匂いを確認して首を傾げる。僕、作った記憶はないんだけど。渚君がカレーが食べたくなって買ってきたのかな。あるよね、急に食べたくなる時。連絡してくれたら作ってあげれたんだけど、と思いながらリビングのドアを開けようとすると、僕がドアノブを掴む前にドアが開いた。びっくりして固まる僕を出迎えたのは、エプロン姿の渚君だ。
    「おかえり、シンジ君。夕飯出来ているよ」
    「た、ただいま。……夕飯って、渚君が作ったの?」
    「そうだよ。前にシンジ君に教えてもらったから作ってみたんだ。上手に出来ていたらいいんだけれど」
    あの野菜を普通に切れなかった渚君が夕飯を作った。ちょっとばかり信じられなくて早足でキッチンに向かう。コンロの上の鍋でグツグツ煮込まれているのは紛れもないカレーだ。見た目も、匂いもカレーで間違いない。
    「すごい。すごいよ、渚君! もう料理が出来るようになったなんて」
    「シンジ君が教えてくれたからだよ。それに、まだカレーしか作れないんだ」
    「そんなの、レパートリーはこれから増やしていけばいいんだよ」
    やっぱり渚君は要領がよくて器用だった。ちょっと教えただけなのに出来ちゃうなんて。着替えてきなよ、と渚君に促されて僕は部屋着に着替えることにした。誰かに手料理を食べるなんて久しぶりだ。実家で母さんのご飯を食べてた以来かなぁ。着替えを終えてキッチンに戻ると渚君が振り向いた。テーブルの上には小さなサラダとカレーライスが並べられていて、とても食欲を唆る匂いがする。
    「シンジ君、準備は出来ているよ」
    「ありがとう。何か、こういうの久しぶりで嬉しいな」
    「喜んでくれたのなら良かったよ。シンジ君にはいつも世話になっているからね。お返しがしたかったんだ。初めてだから味の保証は出来ないけれど」
    「大丈夫、きっと美味しいよ」
    渚君が一生懸命作ってくれたんだから。少しくらい味が変でも気にならないと思う。市販のルーを使っているんだから、余程のことがない限り失敗しないだろうしね。いつも座っている席に腰を下ろして向かい合い手を合わせた。
    「いただきます」
    外国から来たばかりの渚君にはこの習慣がなくて、初めてご飯を一緒に食べた時不思議な顔をされたっけ。今は当たり前のようにしているけど。渚君が自分の作ったカレーを口に運んでいる姿を見つめていると視線がぶつかった。
    「……どうかしたのかい? やはり美味しくなかったかな」
    「そんなことないよ! すごく美味しい」
    文句の付けようがないくらいに立派なカレーだった。そう伝えると渚君が目を細めて笑う。笑顔が眩しいけれど、嬉しそうな表情を見て僕も嬉しくなった。
    「渚君はやっぱり器用だね。これなら他の料理もすぐに作れるようになるよ」
    「そうだね。シンジ君が教えてくれたら出来るような気がするよ。僕の手料理をシンジ君に食べてもらいたいから、これからも頑張ってみようかな」
    「え、僕に?」
    「シンジ君に食べてもらいたいんだ。……ダメかな?」
    「ううん……そんなことないけど。あの、作りたい料理があったら教えてね。レシピ探しておくから」
    「ああ、分かったよ」
    渚君が家事に意欲的になってくれて嬉しい。その理由が僕に食べてもらいたいから、っていうのはよく分からないけど。一緒に料理出来るのは楽しいから、断る理由なんてなかった。渚君と少しずつ仲良くなれているような気がして胸が温かくなる。彼と暮らす穏やかな日々はゆっくりと過ぎて、僕にとってそれが当たり前の日常となるのに、それほど時間はかからなかった。
    そう、ずっと続くと思っていたんだ。本物の家族にはなれなくても、年の離れた兄弟みたいな関係を築けると思っていた。僕は渚君のことが好きだし、彼も僕のことを好きだと言ってくれていたから。ただ、それは一般的な『好意』の範疇だと思っていた。だって渚君は年下で僕と同じ男性で、僕みたいなおじさんのことを好きになるはずがない。
    だけど。そんなことあるはずがない、と言いきれなくなったのには理由があった。初めて会った時から気になっていたことがある。それは渚君のスキンシップについてだ。彼は良く僕に触れてくる。頬を撫でられたり、手を握られたり、背中や腰に手を回されたりと様々なパターンで。気のせいかと思った。彼は海外で暮らしていたし、これくらいのスキンシップは当然で過剰に反応する僕の方がおかしいんだと。でも、どう考えても近過ぎるんだよね。
    「あの、渚君……ちゃんとテレビ観てる?」
    「観ているよ」
    「……そう」
    二人でソファに座って、習慣になっている夕食後の映画鑑賞をしていた時だ。ふと、視線を感じて隣を見ると渚君と視線が合った。普通なら、たまたまそんなこともあるだろう。でも、それが何回も続くとさすがの僕も気になり始めるわけで。確かめようとして、限りなく動作を抑え視線だけ隣に向けてみるとやっぱり渚君が僕を見ていた。
    何? なんで? 何か言いたいことでもあるの? 僕をじっと見つめる彼の視線。何かあるなら話しかけてくれればいいのにと思う。だけど。何となく。確証はないけれど。その瞳の中に熱っぽいものを感じたような気がしたのだ。その事実に気づいた時、僕はどう反応すればいいのか分からなくて困ってしまった。
    渚君から何か言ってくる訳じゃない。だけどもし、僕の方から尋ねてしまったら何かが変わってしまうだろう。きっと渚君の気持ちは一過性のもので、気づいてないフリを続けていればなかったことになるかもしれない。子供の頃って大人に憧れを抱きやすいと言うし、渚君は日本に来たばかりで身近にいる大人は僕だけだったから。渚君のそばにいたから、たまたま僕が対象になっただけなんだ。そんなの分かってるし、冷静に対応しなきゃ。些細なことでドキドキしたり緊張したりしないように。
    「シンジ君」
    「あ、なっ、何?」
    「何か考えごとかい?」
    「別に、何でもないよ……」
    視線をゆっくり逸らして、笑いながら曖昧な返事を返す。意識しないようにしようと決めても見つめられると落ち着かなくなるのはどうにもならない。渚君のことは好きだけど、それは恋愛感情のはずがなくて。このドキドキも距離が近過ぎたり肌が触れているせいだと思った。そうだとしか思えない。
    一緒に映画を観ていたはずの渚君の手が僕の手を撫でていた。絡んでくる指は冷たく、それが僕の体温が上昇している事実を突きつけてくるようで居た堪れない気持ちになる。理想とは真逆の反応をしてしまう身体をどうにかする術を僕は持っていなかった。
    「……な、渚、くん……あの、手が……」
    「ああ、シンジ君の手はとても温かいね」
    触れた場所から体温が溶けていく。低い体温と高い体温が一つに混ざり合って、渚君と僕の体温が同じになる。心地良い、不思議な感覚だと思う。柔らかく絡め取るような指と重なった掌に神経が集中した。手を繋いでいるだけなのに、心臓が口から飛び出しそう……。
    「……渚君の手は……相変わらず冷たいね」
    「昔から冷たかったからね」
    彼がやってきたのは秋の中頃で初めて握手をした時もその手は冷たかった。極度に体温が低い体質らしく、通りで肌が透き通るように白い訳だと思った。昔から寒くなるとホッカイロや湯たんぽを使用していたらしいけどあまり効果は得られなかったといて言う。夜中にトイレで起きた時、寒さで眠れない渚君がリビングで座っているのを度々見かけた。
    眠れないの? と声をかけると暗がりでテレビを見つめていた彼が振り向く。その時、渚君は手足が冷えて眠れないと答えて手を差し出したんだ。僕は深く考えずにその手を掴んでしまった。ひんやりと肌の奥に染みてくるような冷たさに鳥肌が立つ。確かにこんなに冷たかったら眠れないだろうなと思った。
    「何か温かい飲み物でも作ろうか?」
    「ありがとう。でもさっき飲んだから大丈夫だよ。それにあまり効果はないみたいなんだ。それよりもこうやってシンジ君と手を繋いでいる方が温かい」
    彼の言葉の通り、繋いでいる手は同じくらいの体温になっていた。まだ秋で体感的な気温は少し涼しくなってきたくらいなのに、寒くて眠れないなんて可哀想だ。この家には暖房器具が全然なくて、冷え性の彼が自力で温まるのは難しい。明日も学校があるのに、学生が十分な睡眠を取れないのは良くない。保護者の僕がしっかり面倒みてあげないと。
    少し考えて、一つだけ現状を打破する案を思いついた。はっきり言って、馬鹿じゃないのかと言われそうな案が。恥ずかしいけど、でも言うだけ言ってみようかな。渚君も困ってるみたいだし。
    「あの、渚君。一つ提案があるんだけど……君が良ければ、だけどね。……僕と一緒に寝てみるのはどうかな」
    「え?」
    「その、僕は体温高い方だし、家には暖房がなくて温められないでしょ? えっと、だから、なんだけど……」
    変なこと言ってしまった。渚君固まってるし。やめとけば良かったのにと激しく後悔する。年頃の子に添い寝してあげるよだなんて、絶対に変な人だと思われた。馬鹿だ。僕は、一体何を考えてるんだ……。
    「ご、ごめ……忘れて……」
    重なっている手を離して逃げようと思った。そうでもしないと羞恥で死にそうだったから。だけど。僕が必死に離そうとしても、握られた手が解放されることはなかった。極度の緊張で手が震えているせいなのか、それとも渚君の力が強いからなのか。逃げ出すことも出来なくなって、ますます顔が赤く染まる。僕はせめて視線から逃れようと瞼を伏せた。
    「ぼ、僕……」
    「本当にいいのかい?」
    「…………え?」
    「君と一緒に眠るという案だよ」
    「う、うん……渚君が、良いなら……僕は全然……」
    「……そう。なら、シンジ君の優しさに甘えさせてもらおうかな」
    まさかオッケーが出るとは思わなくて耳を疑った。いざ提案を受け入れられると尻込みしてしまうのはどうしてだろうか。自分から言い出したことなのに。渚君は寒くて本気で困っているから背に腹はかえられないのだと思うことにしよう。
    僕は親切心で提案しただけであって、疚しい気持ちがある訳じゃないんだ。渚君だってそう。眠れなくて困っているから試してみようと考えただけに過ぎない。何もおかしなことはないんだ。だから、深く考えないようにしなきゃ。脳内で色々と言い訳してみるけれど自分の行動がよく分からなくなる。でももう、やっぱりやめようなんて言える雰囲気じゃなくて。繋がった手をグイッと引かれるようにして僕は渚君に近づいた。
    「シンジ君の部屋のベッドはシングルだったね。僕のベッドはセミだから、僕の部屋で寝ようか」
    「そう、だね」
    話は纏まった、と部屋に向かって歩き始めた渚君の後をついて歩く。





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