2人だけの秘密と俺だけの秘密.「茨好きです」
耳元で囁かれるその言葉のせいで思わず同じ気持ちを伝えてしまいたくなる。俺だってジュンが好き。大好き。言われるたびに胸が苦しくて抑えている気持ちが溢れてきてしまう。ジュンには幸せになってほしい。自分には釣り合わない。突き放そうとしているのに日に日に締め付けられるこの心を満たしたい。そう思っているせいでずっと突き放せないままだ。俺を抱きしめて何度も囁く言葉に耐えようとジュンの服を強く握りしめた。
「オレ茨が好きです」
「…はい?」
撮影の休憩中。控え室でタブレットを操作していると隣に座るジュンに突然そう言われた。端末を操作していた手を止めてジュンを見ると、俺を真っ直ぐ見つめて真剣な表情をしている。ここには俺とジュンしかいないから暇を持て余した何かの冗談なのだろうか。冗談だとしても普通に嬉しい。頬が緩みそうになるのを我慢して端末に目線を戻した。
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