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    ・中夜

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    ・中夜

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    ジュン茨ワンライ【学校】

    アイドルしてないふたりと山本くんとお昼のお弁当の話。モブ視点。茨出てこない。

    #ジュン茨
    junThorn

    君は春を纏う 午前11時50分。号令を終えて教科書を抱えた先生が立ち去ると、僕はいつも後ろの席の保冷バッグを真っ先に確認する。机のフックに引っ掛けられているのは、四角い黒と青のストライプ柄。うん、今日は大丈夫そうだ。
    「漣くん、今日お弁当? 良かったらご一緒してもいいかな」
    「ああ、はい。大丈夫っすよぉ〜。むしろいつも声かけてくれて嬉しいです」
    「ほんと? 良かった。お互いぼっちは回避したいもんね」
     くるっと椅子だけ反転させて、漣くんの机に失礼する。男子高校生ふたり分のお弁当箱を広げるには少し狭いけど、蓋だの水筒だのと邪魔になりそうなものを僕の机へ避難させれば問題ない。
    「「いただきます」」
     向かいのお弁当は普段よく目にするシンプルな1段の長方形で、中身も変わり映えしない茶色一色の肉弁当だった。申し訳程度に添えられたプチトマトを口に投げ入れた彼は、窓枠に頬杖をついてさりげなく階下を眺める。つられて視線の先を追ってみても、想像していた人影はなかった。僕はまた、向かいのイケメンに目線を戻す。
     ひやりと冷めた金色の瞳。眠たげに伏せられた瞼にかかる、濃紺のふわふわとした長めの猫っ毛。短く刈られた襟足から続く首筋と肩のラインは筋肉質で、帰宅部らしいのにがっしりしてて羨ましいなぁと思う。目つきの鋭さと寡黙な性格からあまり他人を寄せ付けない人だけど、話してみると案外気がよくて優しくて、こういうギャップも女子たちが彼に熱をあげる理由なんだろう。……もっとも。そんな彼自身が熱を送っているのは、また別の、たったひとりだけなんだけれども。
    「山本くんのお弁当って、誰が作ってるんすか? いつもカラフルで美味そうですよね〜」
    「ははは、ありがとう。うちはお母さんが作ってくれてるから、帰ったら伝えておくよ。……けど、そういう漣くんは自分で作ってるんだろう? 毎朝えらいね」
     ふたり分も…という余計な一言は辛うじて飲み込んだ。照れたような、けれど曖昧に微笑む漣くんは、相変わらず隠し事が苦手らしい。もしも僕が、知ってるよ、なんて意味深にでも告げてみたら、きっと冷や汗を流してあたふたするんだろう。
     保冷バッグが赤と青のチェック柄の日は、お昼に先約があること。普段より少し大きめのそのバッグには、いつもと違う2段積みのお弁当箱が入っていること。中身も彩と栄養バランスが取れた、野菜中心のメニューだってこと。そして、それを半分こして食べる相手。君が唯一、微温いような熱いような、いまだ春に浮かされたような色で見つめる、あの赤髪の彼のことも。
    「…………」
     食べかけのプラ箱の上に浮く、虚空を掴んだままの箸。ほのかに色づき緩む口元から零れる、ふ……と柔らかな吐息に、なんだか僕まで幸せな心地になってくる。いまはまだ、何見てるのなんて野暮なツッコミは入れないけれど。いつかはきっと、君の口から、その花の名前を聞いてみたいなと思ってるんだ。
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