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    sakuji_2

    @sakuji_2

    たまに落書きを投げる。ジャンル雑多。

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    sakuji_2

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    途中までぽちぽちしたドラロナのやつ

    #ドラロナ
    drarona

    愛を叫べよ、その名の下に いつもの出来事だった。人に仇なす吸血鬼が現れ、ギルドや吸対の面々が揃って街を守る。
     ある意味日常茶飯事とも言える状況の中、唯一違った事と言えば、逃げ遅れた子供を庇ってロナルドが大怪我をした事だった。数多の血の刃がロナルドの頬を掠め、その体躯を貫いていく。そんな状態でも一撃で吸血鬼を討ち取ったのだから、やはりロナルドは凄腕の退治人であった。
    「お前が身を挺して守ってくれたおかげで、この子はかすり傷ひとつもない。親御さんへの連絡は私たちが行うから、お前は今すぐに病院へ行くんだ」
    「おぉ、サンキューなヒナイチ!でも俺は大丈夫だから他の奴らを手当てしてやってくれよ。ドラ公達も家で待ってるだろうし、このまま家に帰るからさ」
    「いや、しかし…」
     ヒナイチはちらりとロナルドの腹部へ視線を向けた。黒いインナーのせいで分かりにくいが、かなり深い傷であることが窺える。なんとか応急処置だけでも受けて欲しいとヒナイチは訴えるが、なかなか首を縦に振ってもらえない。手のかかる弟のようだと称してしまうくらいにはそれなりの時間近くにいたつもりだが、こういう時はいつだって自分の言葉は届かない。
     ただただ心配で。もっと自分を大切にして欲しいというささやかな願いすら届かないことがもどかしい。息を吸い、声を張り上げて「大馬鹿者!」と言ってやろうとしたヒナイチの前に割って入ってきたのは。
    「手当が一番必要なのは貴様だと言っているのが分からんか大馬鹿者め」
    「半田!?事後処理するからって戻ったんじゃ、」
     問題ないと笑うロナルドを黙殺し、半田は逃げ帰ろうとするロナルドの腕を掴む。そんな覚束ない足取りで帰らせるものか。半田の目がそう訴えているように見え、ロナルドは思わず黙り込む。
     すっかり大人しくなった姿に、やはり図星か、と半田は小さくため息をついた。大方路地裏にでも入って休みつつ、人がいなくなった頃合いにゆっくりこっそり帰ろうとしたのだろう。つくづく馬鹿だ。大馬鹿だ。
    「事後処理などすぐに終わる。目下の面倒事は貴様だロナルド、ほらさっさと立て」
    「あ、ちょっと待っ…」
     半田に腕を引かれて慌てて立ち上がろうと、ロナルドが脚に力を込めた直後の事だった。ぐらり、と視界が揺らぎ、身体の力が抜けていく。崩れ落ちた身体を受け止めてくれたのは半田だろう。では、悲痛な声で救急隊員を呼んでいるのはヒナイチだろうか。
     霞む意識の中で最後に浮かんだのは「今日は唐揚げだよ、頑張っておいで」と見送ってくれた吸血鬼の笑顔だった。



     ロナルドを救急車へ放り込み入院の手配等々済ませ、ロナルドの付き添いをヒナイチに任せた後。半田はその足で、同居人であるドラルクに事情を説明するべくロナルドの事務所を訪れていた。
    「ドラルク、いるか?」
     事務所のドアを開ける音と同時に、ソファーに座っていた黒い影が弾かれたように立ち上がる。「ロナルド君?!」と呼ぶ声は反作用で耳の端が砂になる程で、一瞬だけ見えた落胆の表情に、半田は若干の申し訳なさを抱いた。
    「半田君…。あっ、ごめんね!今お茶を淹れてくるから…紅茶でいいかい?」
    「あぁ、気遣い感謝する」
     ぱたぱたとキッチンへ向かったドラルクは、トレーに紅茶のポットと焼き菓子を乗せて戻ってきた。ふわりと漂うアールグレイの香りに、ふっ、と肩の力が抜ける。やはり心のどこかでは逸る気持ちがあったのだろう。ふう、と一息吐いて、努めて冷静に半田は話し始める。



    「――という訳で、あの馬鹿は一週間程入院してもらうことになった。ちなみに、命に別状はないのでそこは安心するといい」
    「死ぬ訳ではないんだね?そっか…良かった」
     経緯を説明している間にドラルクは何度か死にかけていたが、命に別状はないと分かって安堵したようだ。
     一通り話し終えた半田はすっかり冷めてしまった紅茶を一口含み、普段ロナルド達の生活スペースへ続く扉に視線を向ける。「全く、あの若造ときたら…」とぼやくドラルクへ適当に相槌を打ちつつ、随分変わったものだな、と半田はロナルドがまだ一人だった頃を思い出していた。

     ドラルク達が転がり込んでくる以前、ロナルドの生活はそれはもう見ていられないものだった。食事はコンビニ弁当や外食ばかりで、何度やめろと訴えても紫煙を燻らせている姿が消えることはなく。そんな生活ぶりに耐えかね、そっとセロリを添えつつ差し入れを持って行ったことも記憶に新しい。それが今や食生活も改善され、明らかに煙草の本数も減って。
     運命の出会いというものは存在すると、つくづく半田は思うのだ。高校生活が始まったあの日、ロナルドと出会って世界が一転した時のように。きっとロナルドにとってのドラルクも運命だ。だって、荒んだあの頃のロナルドよりずっと良い。今日だってドラルクの作る夕飯を楽しみにしていたはずだ。確か戦闘中にも関わらず、飯だの肉だの騒いでいたロナルドを黙らせたくてセロリを投げつけた気もするし、と記憶を辿っている最中にはたと気づく。そうだ、たくさん好物を作ってロナルドの帰りを待っていたドラルクへの謝罪がまだだった。
     普段より明らかに帰りが遅いのに連絡の一つもなく、やっと連絡がきたかと思えば待ち人は大怪我したので入院しますときたものだ。事後処理に追われていたとはいえ、もう少し早く連絡を入れるべきだったと半田はドラルクに向き直る。

    「連絡が遅くなってすまない…その、夕飯を準備してずっと待っていたんだろう?ロナルドが意識を飛ばす前、『唐揚げ…』と言っていた」
    「え、あの子気絶間際に考えていたのが唐揚げなの…?」
    「あいつはいつも貴様の作る食事を楽しみにしているからな。居酒屋メニューと同居人の手料理を比べるなと今度言っておいてくれ」
    「エッ?!??!?ち、ちなみに若造はなんて…?」
     なんて?も何も。いつだってロナルドの一言目は「うまい!」に始まり、二言目には「でもやっぱドラ公の飯の方がうめーな!」である。いちいち比較するなと何度小突いてもドラ公の飯が最高だとにこにこ笑っているのだから、そんな恐る恐る探りを入れる必要なんてどこにもないのだ。
     もし信じられないと宣うようなら、今度三人で遊ぶ時に動画でも撮ってドラルクに送ってやろうと半田は心に決めている。こんなことで死なれても困るので、簡潔に、ありのままを伝えてやることにした。
    「今のところ貴様の全戦全勝だ」
    「ふふふ、そうだろうともそうだろうとも…!」
     至極嬉しそうにくふくふと笑うドラルクを見つめつつ、ここを訪ねたもう一つの理由を思い出す。
    「それとドラルク、少し頼みたい事がある」
    「頼みたい事?」
    「入院中のロナルド用に、着替えを用意して欲しいのだ。適当に数日分、頼めるか?」
    「勿論だとも」
     少し待っててね、と席を立つドラルクの背にもう一声かけようとして、逡巡する。半田にはもう一つドラルクに言いたい事があった。そもそも入院の連絡役をかって出たのは、誰にも邪魔されないこのタイミングなら相談出来るのではという思惑もあったからで。一人で悩んでいても仕方がない。ええいままよと、玄関の扉を開けようとドアノブに手をかけたドラルクへ声をかけた。
    「ドラルク」
    「何だね?」
    「クローゼットの中に、手紙があったろう」
    「…あぁ!ファンレターの入った箱があったね」
    「…折り入って相談したい事がある。着替えを準備するついでに、その箱の下を見て欲しい」
    「?よく分からんが任せたまえ」
     ぱたん、と扉が閉じる音と同時に、ほう、と息を吐く。緊張からぎこちなく固まった身体を解すように軽く背を伸ばしながら、ドラルクへの相談事について考えていた。
     先日忍び込んだ時にたまたま見つけてしまった自分宛の手紙。揶揄うネタにでもしてやろうと封を切ったあの日、どうしようもなく叫び出したくなった事をよく覚えている。「あとの事は宜しく頼む」だとか、「誰よりも俺の事を知っているからこそ頼みたい」だの、好き勝手書かれていた。
     所謂”遺書”と呼ばれるもの。ライバルで、共に戦う仲間でもあって。何より運命と称してもいいとさえ思える程大切にしてきた友の遺書なぞ誰が見たいものか。ふざけるなふざけるな。手紙を見つけたあの日から半田の脳裏に木霊する声は、いつだって悲痛な声をしている。

     そもそも本人の断りもなく所在を明かしていい物か、見つけた当初は迷ったりもしたのだが、「半田なら見つけられるだろう?」とでも言わんばかりの場所に隠したあいつが悪いと思う事にした。ドラルクに伝えたところでと思う反面、ドラルクならと願う自分もいる。
     それ以上は何も言うまいと黙ってしまった半田に首を傾げながら、ドラルクは着替えを取りにクローゼットへと向かう。数日分の下着と着替え、食べられる状態かは分からないが、おやつに作っておいた焼き菓子も一緒に包んでおく。食べきれない分の唐揚げは半田にお裾分けするためにタッパーへ詰め込んで、最後にもう一度クローゼットへと向かう。
    「ええと…箱の下、だったかな?」
     ファンレターの詰まった箱を少し持ち上げると、箱の下に一通の手紙が置いてあった。ファンレターにしては質素で、ラブレターにしては飾り気のないそれ。よくよく見てみると少し崩れた文字で小さく「ドラルクへ」と書いてあった。自分宛ての手紙に息を呑む。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    拝啓

     親愛なるクソ雑魚吸血鬼様。
     最近はいかがお過ごしでしょうか。
     木枯らしに死に、春一番に死に。
     クソ雑魚な貴方の事ですから、
     季節が巡る度、景気良く砂になっている事かと存じます。
     ご自愛くださいなんて無理難題は申しませんので、
     せいぜい雨に降られて排水溝に…なんてヘマだけはしませんよう
     お祈り申し上げます。

     何故急に手紙?と思われたかもしれません。
     ですが、この手紙が貴方の手元にあるという事は、
     恐らく私の身に何かが起きたのでしょう。
     仕事柄、元々準備はしていたもので。

     私がいなくなった後、もしまだこの街で暮らしたいと思われたなら、
     事務所や備品は今まで通り使っていただいて結構です。
     皆で変わらぬ毎日を過ごしてもらえるのなら
     それほど嬉しい事はありません。
     詳細は半田に訊いていただければ大丈夫でしょう。
     私以上に、彼は私の事を知っていますからね。

     真面目な話はさておき。
     ずっと貴方に言いたかった事、言えなかった事が
     とてもたくさんあるのですが、貴方はほら、飽き性ですから。
     あまり長々と書いたが故に、途中でほっぽりだされては堪りません。
     ですので一番伝えたかった事を除いて割愛させていただきます。
     
     貴方がうちに転がり込んできてから、毎日が本当に楽しかった。
     文句を言いながらも世話を焼いてくれる貴方が本当に大好きだった。
     ご飯はいつも美味しくて、どんなに眠くても
     「おかえり」と出迎えてくれる。
     いつの間にか当たり前になっていた生活が
     何よりも愛おしく大切な宝物でした。
     貴方の送る長い人生の中、ひと匙でも「ロナルド」という存在が
     残ればいいなと思っています。
     

     さようなら、どうかお元気で。

                               敬具


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    「――敬具、ねぇ」
     真っ白な封筒に真っ白な便箋。白無地というチョイスがいかにもあの若造らしいと、ドラルクは忌々しそうに舌打ちをした。
     怒りと悲しさと寂しさと。行き場のない感情を何とか抑えようと、自然と手に力がこもる。それに、手書きならまだしも、こんなパソコンで打ち込んだ文字列だなんて気に食わないにも程がある。退治人ロナルドの一世一代の大告白がこんな無機質な形であっていいものか。ふざけるのも大概にして欲しい。
     ぐしゃりと便箋を握り潰した手に、そっと小さな手が重なった。
    「ヌン…?」
    「うん?あぁ、ごめんよジョン。私は大丈夫さ」
     不安げに見上げる使い魔を安心させるようにドラルクはゆるりと微笑んだ。強張っていた身体から余計な力が抜け、幾分か冷静になってきたようにも思う。そう、今はまず冷静になることが最優先だ。
    「ロナルド君が退院した時に、どういうつもりでこれを書いたのか訊いてやろうじゃないか。しっかり朗読会を開いてやるとも!」
    「ヌヌイ!」
     元気よく手を挙げるジョンをひと撫でしつつ、手紙を見つけた時、半田はどんな気持ちだったのだろかと思いを馳せる。
     恐らく家探しをしたときに見つけたのだろうが、文中に「詳細は半田に」とあるのを見るに、同じところに半田宛ての手紙もあったのではないかとドラルクは考えた。同時に、半田の意図を知る。
     いわばこれは自分を顧みないどこぞの馬鹿に対する荒療治だ。自分だけでは止められないロナルドの愚行を何とかするために、半田はドラルクを巻き込もうとしている。

    「そういう魂胆なら乗っかってやろうじゃないか」
    「ドラルク、」
     事務所への扉を開け、開口一番ドラルクは半田へ言い放つ。半田に着替えと差し入れを手渡したドラルクはにこりと笑った後、静かに告げた。
    「あの若造に絶対分からせてやるとも。『愛』ってやつをね」
    「あ、愛…?」
     これは君に。良かったらお食べ、と渡された唐揚げを受け取りながら、困惑した顔で問う半田に対してドラルクは悪戯が成功した子供の用に笑った。次いで一言。
    「『愛』には様々な形があるからね。半田君の抱えるそれも、ひとつの『愛』って事さ」
    「…貴様の言っている事はたまに訳が分からんな」
    「今に分かるとも。あぁ、半田君、ロナルド君が退院する日が分かったらすぐに教えてくれ給えよ」
    「勿論だ。ではそろそろ俺は戻る。副隊長にずっと番をさせるわけにはいかないからな」
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    DONEritk版深夜の60分一発勝負
    第二十九回 お題:「雨宿り」「兄弟」
    司視点 両想い
    20分オーバーしました
    「うわ、凄い雨だな…」


    薄暗い空から降り注ぐ大粒の雨に辟易しながら、傘を広げた。

    朝からずっと雨予報となっていた今日は練習も中止になってしまい、休日だったことも相まって突如暇となってしまったので、気晴らしにと外に出かけることにした。

    雨が降るとはいえ四六時中大雨が降るというわけではなく、強くなったり弱くなったりを繰り返しているから、合間に移動をすれば、と考えていたけれど、そう都合よく弱まるわけがなかったなと思いながら雨の中をゆったりと歩く。






    その時。視界に、不安そうな顔が写った。


    思わず足を止めて、そちらを見る。
    しまっている店の前で雨宿りをしながら不安そうな顔で空を見上げている、小学校低学年くらいの男の子の姿があった。
    そして、彼のその手には、折れてボロボロになった傘が鎮座していた。





    「…なあ、君。傘、壊れちゃったのか?」


    いてもたってもいられず、声をかける。
    ずっと不安だったのか、見上げるその目には、涙が浮かんでいた。


    「…うん」
    「お母さんや、お父さんは?」
    「いない。僕、お使いとお迎えに行ってるの」



    「お使いと…迎え?」
    「うん。 3388