第一話:おまじない第一話:おまじない
類「何事にもおまじないってあるけれど、学校という枠組みで絞れば一番有名なのはやっぱり消しゴムのおまじないかな?」
司「………消しゴムのおまじない?」
類「おや、知らないかい?新品の消しゴムに好きな人の名前を書いて、誰にも気付かれずに使い切るとその恋が実るっていうおまじないなんだけど…………」
司「あー………昔咲希や一歌たちがなにやら話していたな………。それがどうかしたのか?」
類「小学生の頃さ、そのおまじないが本当に有効なのか気になって、実際に試してみたんだよね」
司「何をやっているんだ、お前は」
類「具体的には、新品の消しゴムそれぞれにクラスメイトの名前を書いて、同時に使い切ったらどうなるのかなって試してみたんだけど」
司「………何をやってるんだ、お前は」
類「その結果、恋人になるならない以前に、僕には友人すらいないことに気が付いただけだった」
司「………何でそんな悲しいことをしようと思ったんだ、お前は。おまじないとかなら他にも色々あっただろう。何故、自ら心を傷付けに行くんだ」
類「…………あの頃の僕は若かった」
司「……………………」
類「………?どうかしたのかい、司くん」
司「いや、類の実験の成功失敗はどうでもいいのだが」
類「さらりと酷いことを言うね」
司「大抵の場合、新品の消しゴムに書くのは自分の名前だろ?」
類「まあ、そうだね」
司「そうなると、ほとんどの学生は自分のことが好きになってしまうのではないのか、オレみたいに」
類「いや、このおまじないを聞いてそんな反応するのは多分キミくらいだと思うよ。なにそのナルシスト製造機。怖すぎるでしょ」
司「自分を好きになることは大事なことだぞ‼……それに、名前を書いただけで恋人に出来てしまうのも十分怖いと思うが………」
類「そういう話じゃないんだけどなー………。一応補足しておくと、これは想いを込めなければ無効らしいから、自分大好きな人が増えることはないんじゃないかな?」
司「………そうかー」
類「なんでそんな残念そうなんだよ。本当に自分大好きだね、キミは」
司「嫌いよりはいいんじゃないか。ちなみにオレは今でもちゃんと消しゴムには名前を書いているぞ!」
類「…………おまじないが効くと良いね」