不思議な男の子 桜が散る。ひらひらと、踊るように、舞うように散っていく。
桜が見頃だからと友達と一緒にお弁当を作って、精一杯のおしゃれをして桜の名所である公園へと行って、そして見事な桜にスマホを掲げ写真を撮っていた。パシャリパシャリと音を立てて。けれど何枚目だっただろうか、桜だけではない見知らぬ男の子が写った。そう、知らない…知らない人の…はずなのだ。
「上手く撮れた?」
「え、」
いつの間にか近づいていた男の子はそうやって私に笑いかける。…怒った様子はどこにもなかった。
「あ、はい…それはもうくっきりと…」
「僕にも見せてほしいな」
名乗ることもせず私のスマホを覗き込んでくる男の子。けれど不思議と嫌な気持ちはせず、むしろどこかで会ったことがあるような…不思議な感覚に襲われていた。
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