怖くないハロウィンを 「はぁぁぁぁ~~ああ……」
重たいため息を吐くカムイが気になってユウキはつい声をかけた。
「どうしたんですか?悩み事ですか、カムイ先輩」
「ユウキちゃん!…うーん、悩みっていえば悩みなんだけど…」
「話してみてください!話せば楽になるかもしれませんし…」
そう言われてしまえば渋々カムイは話し出す。
「えっと、オレが…ホラーってかお化けってか怖いものってか苦手なの知ってるよね?」
「…はい」
ゆっくりユウキが頷くとカムイは苦笑いを浮かべる。
「で、そのー…さ。ハロウィンが近いとさテレビのCMとか……番組とか、その…さ」
そう言って段々青くなっていくカムイの顔にユウキは察する。
「遊園地のCMとか、映画もこの時期ですから怖いの多いですもんね…」
「そう、そうなんだよ!だから、その本当体力が持たないっていうか…ハロウィンの仮装とかも怖いしさ~~!」
「…カムイ先輩は、ハロウィンが苦手ですか?」
「苦手っていうか…楽しい雰囲気は嫌いじゃないんだけど…どうも、オバケというか怖いのが…その、リアルな奴は特にさ」
かわいいのは嫌いじゃないんだよ、とカムイは言いその言葉にユウキは考え込む。
「カムイ先輩!」
突然、ユウキはぎゅっとカムイの両手を包み込むように握った。
「ゆ、ユウキちゃん…!?」
「あの、カムイ先輩…」
「は、はいっ!?」
「…ハロウィン当日、一緒に楽しいハロウィンパーティーしませんか?」
「………えっ」
***
ハロウィン当日、ゼンジの許可を得てゼンジの家でパーティーをすることになった時。テーブルにかぼちゃを作った料理やスイーツ、ハロウィンぽいものを並べそしてリビングで今か今かとカムイはユウキの準備が終わるのを待っていた。鶴の恩返しの鶴を待つ男の気持ちはこういうことなのだと思ってしまうほどで。
「カムイ先輩っ!」
「わっ…!?」
考え事をしていた時に正面から抱き着かれカムイは驚きの声を上げた。
「布おばけです」
そうは言うが布と言ってもコートのような形をしていて布も頭全体を覆っているわけではなくパーカーのような形をしていた。
「ふふ、どうですか。怖いですか?」
「…ううん、全然。むしろ、可愛すぎっていうか」
ゼンジが席を気を使って二人きりにしてくれたことを言いことにカムイはそんなことを口走り、そっとユウキを抱きしめ返した。
「ふふ、よかったです。せっかくのハロウィン、楽しめないのは勿体ないと思って。だからそう言ってくれてよかったです」
自分のためにそう言って、そして行動に移してくれたことが嬉しくてカムイは笑う。
「ハロウィンってさ、ずっと怖いものだって思ってたけど…案外、悪くないのかもしれないな」
「そうです!これからは毎年、一緒にハロウィンパーティーしましょう!」
「…毎年?」
「はい。…外は怖いかも知れないけれど、家の中なら。傷つけるものも、怖いものも何もありませんから」
その言葉に泣きたくなりながらも力強くカムイは頷いた。
「!これ甘いし美味しい!はじめて食べたけどりんご飴みたいな見た目だけど…キャラメルなんだね?」
「【キャラメル・アップル】です。海外ではハロウィンの定番メニューなんだそうです」
「へえ、美味しい…」
「気に入りました?」
「とっても!」
可愛い路線のメニューに瞳を輝かせるカムイ。そんなカムイに嬉しさを感じながらユウキも【キャラメル・アップル】を口にする。
「…うん、甘い」
甘く、甘く、幸せな味は怖いハロウィンを幸せなハロウィンへと変えていった。
-Fin-