ティータイム(欲求不満な昼休み) 紅茶のペットボトルを投げつけると、狡噛は曲線を描いたそれをきれいに受け止めた。アールグレイのホット、茶葉に文句をつけなきゃ結構美味い安価なもの。
「それで、捜査は進展したのか?」
昼食休憩で官舎の俺の部屋に戻って来た狡噛に尋ねると(俺は今日は休日だった)、首を振ってペットボトルの蓋を開けた。そんなに簡単に仕事は進まないということだろう。だったら慰めてやるか、そう思って俺は彼のそばに行き、ソファに座り、わざとらしくしなだれかかかった。狡噛はそれに眉をあげて、そして紅茶のペットボトルに口をつける。このままキスをしてもいいかもなとは思うけれど、彼は休憩中とはいえ仕事中で、休日なのは俺だけで、つまり彼を邪魔してはいけなかった。
「犯人はだんまりを決め込んでる。急ぐ事件でもないからじっくり聞き取りをさせてもらうさ」
狡噛はそう言ったが、それは少し珍しいことだった。俺たちにやって来るのは急を要する事件や、ややこしく入り組んだ事件ばかりだったから。他の課の人員が足りないのだろうか?
「昼食休憩なんだろう? 何か作ろうか? とはいえレトルトかフードプリンターくらいしかうちにはないが」
俺はデバイスに浮かぶ資料を操作する狡噛の手をくすぐって尋ねた。別にこのまま急いでセックスしてもいいと俺は思うのだが、さっきから誘っても反応がない。狡噛は結局は変わったと見せて根は真面目なのだろう。
「カレーうどん。フードプリンターで」
「了解」
俺はソファから立って狡噛の言った通りにカレーうどんを作らせる。とはいえボタンを押すだけなのだが。低音が鳴って、チン、と調理完了の音が鳴る。俺はその熱くなったカレーうどんを盆に載せ、狡噛に差し出す。すると彼はデバイスを見つめたまま添えた箸を掴む。
「仕事が終わったら、お前が期待してることもしてやるからさ、我慢してくれよギノ。俺も辛いんだ」
カレーうどんを食べながら、カレーの汁を飛ばしながら狡噛が言う。俺は何だかむしゃくしゃして、けれどクッションを汚す訳にもいかず、愛しい恋人の手の甲をつねったのだった。