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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    お酒を飲んだら思わぬ人の乱入があって、なお話。
    800文字チャレンジ64日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    stay with me(タクシーの中で) ずっと側にいて。どこにも行かないで。でもあなたは私の前から消えてしまう。
     そんな歌詞を哀愁漂うメロディにのせて歌うゴージャスな巻き髪の歌手を横目に、狡噛はスパイシーな飴色の酒を飲んでいた。ここは出島にあるジャズバーだ。オーナーが百年以上前のレコードを持っているという噂の、ある種のコミュニティの中では有名な店。俺たちは今日、ここに仕事を終えてやって来ていた。仕事が忙しく疲れてしまったら、こういう店に来るに限る。周りもそんな男と女であふれている。
     俺は上手にステアするバーテンダーを眺めながら、チャイナブルーを飲む。というのも、今日挙げたのがチャイニーズマフィアだったからでもあるのだが(我ながら単純だ)、あまり度数の高いものを飲んで、前後不覚になりたくなかったのもある。明日も仕事だし、いっそ言ってしまうなら、明日の方が仕事量が多い。デスクワークだが。
     歌が終わり拍手が巻き起こって、口笛がそこかしこから上がる。俺はそれに拍手をして倣ったが、狡噛は何も言わず酒を飲み干すだけだった。それからしばらく経って、思いもしなかった客が来た。俺は驚きながらも、彼女の豪奢なドレスや髪に見惚れてしまう。
    「あら、コーガミじゃない。来てたのね」
     小さなステージから降りてきた歌姫は、狡噛と同じ酒を頼み、俺に向かって可愛いお酒を飲むのねと笑った。俺は少し恥ずかしくなったが、理由を説明する義理もない。
    「誰かさんがくれた情報が役に立ったからチップを渡しに」
    「チップなんて面倒なことしないで口座に入れて」
    「そういう金は持ってないんだ。すまないな。でも外務省の綺麗な金だぜ」
     狡噛は高額紙幣を胸が大きく開いたドレスを着た歌手の、胸元にそっと入れた。豊満な胸に出島で流通する紙幣は隠れて、俺は思わず目を逸らす。
    「ねぇ、お兄さんコーガミの友達なんでしょ? どうにか言ってちょうだいよ。それとも、私と楽しむ?」
     品の良い香水が鼻をくすぐって、俺はぐらつきそうになりながら、隣の席に座る彼女から逃げようとする。と、狡噛がそんな彼女を追いやってこう言った。
    「駄目だ、俺の男に手を出すなよ」
    「何、そういう関係なの? いい男ってみんなゲイなのって本当ね」
     歌手はそう言って、微笑みながら酒を一気に飲み干した。そして俺たちから離れてゆく。狡噛には勝手にカムアウトされたのには少しむかついたが、けれど俺の男と言われたのは嬉しかった。俺の男、俺の男ねぇ……。
    「嬉しかったか、そんなににやにやして」
    「さぁね。……でも早々に引き上げて部屋に戻りたくなるくらいには良かったかな」
     目配せをして言うと、狡噛は笑ってチェックをと言い、煙草に火をつけた。俺はそれを目印にするように、ほの灯りを追って店を出る。そうして長くキスをする。官舎に戻るためのタクシーの中で、まだ何も始まっていないタクシーの中で。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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