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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    POIPOI 192

    職場でのイチャイチャ。
    800文字チャレンジ89日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    触れた指先(それはあなた) ギノの身体はどこもかしこも美しい。頭のてっぺんからつま先まで、どこまでも美しい。それは誰もが知るところだろうが、それに触れられるのは俺だけだということは、この強い独占欲を満足させた。彼のうなじ、唇、人が望むところ全てに俺は触れることが出来る。ギノは俺の欲望を満たしてくれる。決して拒否なんてしない。俺はそれに満足していて、そしてこれからもそうであってくれと願っている。
     
    「狡噛、その……」
     コーヒーを片手にサーバー近くでのんびりしていると、ギノが言いづらそうに俺に切り出した。一体何なんだろう。俺は何かしでかしたか? そんなことを思いながら自分の手を見ると、彼の髪をくすぐっていることに気づく。もしかしてこれだろうか? いつもの癖でやってしまったが、さすがに職場ではまずかっただろうか。
    「こういうのは、部屋で……」
     やっぱり、そう思って俺はうなだれる。またバカをやってしまったって、そんなふうに思う。心配しないでも触れられるのは俺だけなのだから、こんな場所で確認しなくてもいいっていうのに、俺はどうしても彼に触れたくなってしまうのだった。
    「あぁ、すまない」
     俺はギノから距離を取って、またコーヒーに口をつける。甘ったるいそれは頭を覚醒させるが、虫歯になりそうだった。早く煙草を吸いたい。さすがにここは換気扇がないから吸わないが。
    「いや、気にしすぎなのは俺なんだ。狡噛に触られてると意識してしまって……」
     顔を赤くしたギノがうつむく。今、何て言った? 俺を意識してしまうって? 触れられただけで? 俺はガッツポーズを取りそうになる。子どものように。美しい恋人が俺を意識してしまうだなんて、そんなの嬉しい以外ないじゃないか。
    「俺はずっと意識してるよ、ギノ」
     耳元でささやく。部屋にいる時も、仕事をしている時も、ずっと。そう言うと、彼は調子に乗るなと俺の手の甲をひねった。さすがに怒ったのだろうか?
    「そういうのは部屋でしてくれ」
     ギノはそう言って一度だけ微笑んで去ってゆく。俺はその破壊力に頭を抱えながら、早く触れたいと、そればかり思っていた。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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